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男性の消費エネルギー量の個人差は、女性に比べてはるかに大きい 30カ国4,600人の調査

消費エネルギー量の個人差は女性より男性のほうが大きく、分散比は2倍以上に及ぶとする研究結果が、進化研究領域のジャーナル「Journal of Human Evolution」に掲載された。著者らはこの結果を基に、ヒトの進化における性淘汰(性選択)と関連づけた考察を試みている。

男性の消費エネルギー量の個人差は、女性に比べてはるかに大きい 多国籍4,600人の調査

形質的な個体差の性差に比べて、消費エネルギーの性差は研究されていなかった

哺乳類は一般に、メスよりもオスのほうが形質的な多様性が大きいことが知られている。例えばチンパンジーの脳構造、アシカの体格などは、メスよりもオスのほうが個体差が大きい。このようなオスの形質的個体差は、身体能力の差につながり、認知特性にも関連する可能性があって、進化研究の領域では性淘汰(性選択)に結び付けた検討が行われている。

一方、著者によると、形質的な個体差の性差については長く研究されてきているが、消費エネルギー量の個体差の性差はほとんど研究されてこなかったとのことだ。そこで著者らは、国際原子力機関(international atomic energy agency;IAEA)の二重標識水(doubly-labeled water;DKW)データベースを用いて、消費エネルギー量の個体差の性差を検討した。

体格と消費エネルギー量の個体差の程度を男女で比較

この研究の解析対象は、18歳以上の成人4,602人(女性3,108人、男性1,494人)。プロレベルの激しいトレーニングを行っている人、妊娠中・授乳中の女性、なんらかの疾患のある人は除外されている。平均年齢は女性が52.6歳、男性は47.5歳。30カ国の成人が含まれているが、欧米が多くを占めており、なかでも米国人が最多で65%を占めている。

身長や除脂肪体重の個体差は男性で大きく、体脂肪量の個体差は女性で大きい

結果について、まず体格の個体差を性別で比較した結果をみると、身長の分散比は1.12(95%CI;1.04~1.24)であり、男性のほうがやや個体差が大きいことがわかる。除脂肪体重の分散比は1.59(同1.48~1.75)であり、個体差の性差は身長よりも大きいことが示された。

一方、体脂肪量に関しては分散比が0.75(0.69~0.83)であり、男性より女性の個体差のほうが大きいことが示された。

消費エネルギー量の分散比は2.4倍で、男性の個体差が大きい

次に、この研究の主題である消費エネルギー量の個体差を性別で比較した結果をみてみる。なお、この研究では、計測された総消費エネルギー量の10%を食事誘発性熱産生とし、その差を基礎エネルギー消費量としている。また、解析に際して、共変量を考慮しない「粗モデル」と、身長と除脂肪体重を調整する「モデル1」、モデル1に加え体脂肪量と年齢を調整する「モデル2」、モデル2に加え性別固有の非線形の年齢と体組成の影響を調整する「モデル3」という、計4通りの解析を行っている。

粗解析および各モデルで解析した、総消費エネルギー量(total energy expenditure;TEE)と基礎エネルギー消費量(basal energy expenditure;BEE)の分散比は以下のとおり。

総消費エネルギー量(TEE)は粗モデルの分散が2.18、モデル1では2.35、モデル2で2.43、モデル3では2.38(2.24~2.68)。基礎エネルギー消費量(BEE)は同順に、1.26、1.56、1.54で、モデル3では1.50(1.31~1.72)。

年齢層別、および欧米人と非欧米人での層別化解析

年齢層別の解析からは、高齢になると男女ともに消費エネルギー量の個体差は縮小することが示された。また、女性より男性のほうが、加齢による個体差の減少が若干大きかった。ただし女性も加齢とともに個体差が減るため、分散の男女比は基本的に年齢による明確な差異がみられなかった。

また、研究参加者の出身国を西側諸国(欧米人)とその他の国(非欧米人)とで層別化すると、男性の消費エネルギー量の個体差は、欧米人に比べて非欧米人では少なかった。一方で女性の消費エネルギー量の個体差は、欧米人と非欧米人で顕著な差はみられなかった。結果として個体差の分散の男女比は、欧米人よりも非欧米人のほうが低かった。

消費エネルギー量の多い男性のほうが女性にとって魅力的?

著者によると、この研究は消費エネルギー量のばらつきの大きさを男女で比較した初の研究という。明らかになった主なポイントとして、年齢、身長、体組成(除脂肪量、体脂肪量)の影響を調整してもなお、男性の消費エネルギー量のばらつきは女性よりもはるかに大きいこと、加齢にともないばらつきは減るものの、性別で比較すると依然として差が顕著であることを挙げている。これらの性差の原因について、部分的にはエネルギーを消費する器官のサイズの個体差が、女性より男性で大きいことで説明できる可能性があるとしている。

また、考察として、男性の消費エネルギー量が高いことは女性にとって魅力的なさまざまな特性に関連しているため、女性にアクセスしやすいという利点につながる可能性があるという。一方で、男性に比べて女性はなぜ、消費エネルギー量の個体差が少ないのかという点についても、文献的な考察を加えている。さらに、このような関係は、人々のライフスタイルの変化や文化的差異によって異なってくる可能性も想定されるとのことだ。

文献情報

原題のタイトルは、「Variability in energy expenditure is much greater in males than females」。〔J Hum Evol. 2022 Oct;171:103229〕
原文はこちら(Elsevier)

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