「朝食を多く、夕食は少なく」の減量効果に疑問符 ただし1日の食欲は抑制される可能性
体重管理のためには夕食を控えめにして、その分、朝食は多めに食べて良いとする考え方が既に広く浸透している。ところがこのような方法の有効性に疑問符を投げかける研究結果が「Cell Metabolism」に掲載された。クロスオーバー法による検討で減量効果に有意差は認められなかったという。ただし、食欲や空腹感は、朝食を多く食べる条件のほうが低かったとのことだ。
あくまで「カロリーはカロリー」なのか、食べる時間によって異なるのか?
体重管理のための摂取エネルギー量の考え方について、基本的には長年「カロリーはカロリーである」とされてきた。しかし近年、食事の摂取時間帯によって体重を含めた健康関連指標への影響が異なることが、時間栄養学の研究の深まりとともに多く指摘されるようになっている。ただし、そのメカニズムは依然、十分に明らかになっていない。
これを背景としてこの論文の著者らは、二重標識水法による消費エネルギー量の計測や安静時代謝量、連続血糖測定による糖代謝、睡眠、食欲や空腹感などへの影響も含めて、二つの食事パターンの差異をクロスオーバー法により検討した。
30人の肥満者を対象にクロスオーバー法で減量効果を比較
研究対象は、BMI27~40と過体重から肥満で(国内ではすべて肥満に該当)、慢性疾患のない18~75歳の成人30人(年齢50.9±2.1歳、男性が16人)。大量飲酒者、ヘビースモーカー、二次性肥満、内分泌代謝疾患患者、消化器手術後3カ月以内、摂食障害の既往者などは除外されている。
研究参加者を2群に分け、
- 1群には最初に朝食をたくさん食べる食事スタイル(morning loaded;ML)先行条件、
- 他の1群はたくさん夕食を食べる食事スタイル(evening loaded;EL)先行条件
とした。4週間後に1週間のウォッシュアウト期間をおいて、前半とは異なる条件の食事スタイルを4週間続けてもらった。
ML先行条件とEL先行条件の摂取エネルギー量は、研究参加者個々の安静時代謝量(resting metabolic rate;RMR)の1.5倍に統一し、前者は朝食に45%、昼食に35%、夕食に20%をあて、後者は同順に、20%、35%、45%をあてた。食事はすべて、炭水化物35%、タンパク質30%、脂質35%で統一し、栄養士によって準備され、7日間の回転メニューとして提供した。
体重・体組成、糖・脂質代謝などの変化に有意差なし
体重や体組成の変化は両条件ですべて同等
結果は冒頭に記したとおり、減量効果に条件間の有意差は認められなかった。また、腹囲長の変化にも有意差はなかった。詳細は以下のとおり。
- 体重(kg):ベースライン95.4、ML先行条件90.4、EL先行条件90.3。両条件ともに有意に減少し(p<0.001)、条件間の有意差なし。
- 体重変化幅(kg):ML先行条件-3.33、EL先行条件-3.38。条件間の有意差なし(p=0.848)。
- BMI:ベースライン32.5、ML先行条件30.8、EL先行条件30.8。両条件ともに有意に低下し(p<0.001)、条件間の有意差なし。以下、条件間の差については、すべて同様につき省略。
- 体脂肪率(%):ベースライン41.54、ML先行条件38.49、EL先行条件38.60。
- 腹囲長(cm):ベースライン107.5、ML先行条件101.4、EL先行条件100.8。
- ウエスト/ヒップ比:ベースライン0.95、ML先行条件0.92、EL先行条件0.91。
血圧・糖代謝の変化もすべて同等
体重や体組成に加えて、血圧や糖代謝などへの影響もすべて同等だった。評価された項目のうち、収縮期/拡張期血圧、脈拍、空腹時血糖値、HbA1c、空腹時インスリン値、HOMA-IR、総コレステロール、HDL-C、LDL-C、トリグリセライドはすべてベースライン時より有意に低下し(いずれもp<0.001)、条件間の有意差はなかった。遊離脂肪酸に関しては、ベースライン値から両群ともに上昇し、介入前後の差は境界域で(p=0.05)、条件間の差はなかった。
安静時代謝量の変化や消費エネルギー量も同等
安静時代謝量(RMR)はベースライン時が1,821kcalで、介入後はML先行条件が1,675kcal、EL先行条件が1,690kcalであり、両条件ともに有意に低下し(p<0.001)、条件間の有意差はなかった。
二重標識水(doubly-labeled water;DKW)法による消費エネルギー量の計測は介入後に実施されており、その結果はML先行条件が2,871kcal、EL先行条件が2,846kcalであり、条件間の有意差はなかった(p=0.184)。
なお、加速度計により把握した1日あたりの歩数、身体活動によるエネルギー消費、睡眠時間については、介入前後で有意差がなく、条件間の差もなかった。
介入期間が長期であれば、食欲低下の効果が現れる?
上記のほかに、ビジュアルアナログスケール(VAS)を用いて、介入期間のうちの計3日と最終評価日に、1時間ごとに空腹感や食欲を6項目のアンケートで把握した。
その結果、ML先行条件ではEL先行条件よりも、食欲と空腹感のVASスコアが低値で推移しており、条件間に有意差が認められた。
以上より論文の結論は、「夕食を減らして朝食を多めに設定したとしても、1日の摂取エネルギー量が同じ条件でのダイエットでは、減量効果は変わらない。ただし食欲や空腹感は有意に異なるため、長期間継続した場合にその差が現れる可能性はある。しかし、まだその実証はされていない」とまとめられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Timing of daily calorie loading affects appetite and hunger responses without changes in energy metabolism in healthy subjects with obesity」。〔Cell Metab. 2022 Oct 4;34(10):1472-1485.e6〕
原文はこちら(Elsevier)