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脱水による持久力パフォーマンスへの影響に関するメタ解析 自覚的運動強度に影響する脱水率を調査

脱水による持久力パフォーマンスへの影響を調査した研究報告を対象とする、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。脱水による体重減少幅が1%あたり、自覚的運動強度(RPE)は0.21ポイント上昇するという。つまり、RPEが1ポイント上昇するには、体重が5%程度減少した場合であり、著者は「少なくとも体重が3%程度減少するまでは、脱水によってRPEへ実質的に意味のある影響は生じない」と結論づけている。

脱水による持久力パフォーマンスへの影響に関するメタ解析 3%までの脱水は実質的な影響はない?

スポーツによる脱水(EID)は、自覚的運動強度(RPE)に影響するか?

身体活動によって発汗が生じ脱水傾向が進むため補水が必要とされる。しかし、アスリートがトレーニングや試合中に、発汗で失った水分量のすべてを補うわけではない。脱水レベルが高くなると、スポーツパフォーマンスが低下する可能性が多くの研究から指摘されている。例えば、スポーツ誘発性の脱水(exercise-induced dehydration;EID)が自覚的運動強度(Rate of Perceived Exertion;RPE)を有意に増加させるとする複数の報告がある。

自覚的運動強度(RPE)は、スポーツアスリートのトレーニングや疾患管理のための運動療法において、運動強度の設定やモニタリングに広く用いられており、ボルグスケールで評価することが多い。ただし、本論文の著者によると、「これまでのところ、EIDとRPEの関連をメタ解析で検討した報告はない」という。これを背景として、著者らは、以下の4つの疑問の答を探るため、システマティックレビューとメタ解析を実施した。

4つの疑問

  1. 運動中のRPEの変化はEIDに関連しているか?
  2. EIDのレベルによってRPEへの影響は異なるか?
  3. EIDによるRPEに対する影響は実質的に重要なレベルなのか?
  4. 周囲温度や湿度、運動強度・時間などは、それらの関係に影響を及ぼしているか?

システマティックレビューの手法

文献検索には、PubMed、MEDLINE、SPORT Discusなどのデータベースを用い、検索キーワードとして、脱水、持久力、水分補給、運動、自覚的運動強度(RPE)、パフォーマンス、ランニング、サイクリングなどが設定された。システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に則した検索が、2022年2月16日まで行われた。

適格条件は以下の7つ。

  1. 健康な成人(18歳以上)を対象とした無作為化クロスオーバー比較試験であること
  2. 30分以上のランニングまたはサイクリングによる持久力運動を行っていること(30分未満の運動では脱水が誘発される可能性が低く、さらにはパフォーマンスへ影響が生じるとは考えられないため)
  3. 脱水誘発条件では運動前から体重の1%以上の脱水が誘発されており、補水条件より0.5%以上の差があること
  4. 脱水は運動によって誘発されており、運動前から存在していたものではないこと
  5. 補水条件では体重変動が運動前から-1~+0.5%の範囲内であること
  6. 補水は経口により行われていること
  7. 炭水化物やカフェイン摂取が行われた場合、その摂取量が条件間で差がないこと

一方、脱水を亢進させるために利尿薬またはスウェットスーツを使用した研究、実験試行時の環境やタイミングが制御されていない研究などは除外した。

16件の研究を抽出しメタ解析を実施

検索後の重複削除、スクリーニングを経て、138報が全文精査の対象とされ、最終的に16件の研究報告がメタ解析の対象として抽出された。それらは1994~2019年に報告されており、4件は米国からの報告で、英国、オーストラリア、南アフリカから各3件、カナダ、フランス、ニュージーランドから各1件だった。

被験者の特徴

被験者は合計147人で、大半が男性であり女性は全体の1%にすぎなかった。平均サンプル数は9±3(範囲6~15)人であり、平均年齢27±4歳、身長179±2cm、体重73±3kg、BMI23±1、VO2max62±6mL/kg/分、ピークパワー389±39Wだった。人種/民族に関する情報は、いずれの報告にも記されていなかった。

試行条件

平均気温は28±6℃、湿度は48±10%、風速は10±11km/時であり、16件中13件(81%)はサイクリング、他の3件はランニングによる負荷をかけていた。平均運動時間は79±27(範囲51~127)分で、平均運動強度はVO2maxの65±13%だった。

水分摂取量と運動による脱水レベル

水分摂取量は、補水条件では平均18.9±7.5mL/分、脱水条件では1.0±2.0mL/分であり、体重換算では同順に0.26±0.1mL/kg/分、0.01±0.03mL/kg/分。摂取された水分の温度は17±13℃だった。

補水条件での体重の変動の減少幅は0.5±0.4(範囲1~-0.31)%であり、脱水条件では2.3±0.5(同1.7~3.1)%で、条件間の差は1.7±0.7(0.9~2.8)%だった。

体重3%減少までの脱水は、RPEに実質的な影響を及ぼさない?

16件の研究全体を対象に行った解析の結果、脱水条件では補水条件に比較し、自覚的運動強度(RPE)が0.46(95%CI;0.31~0.59)有意に高かった。脱水レベル別にみると以下のとおり、スポーツ誘発性の脱水(EID)が1%以上の場合には、RPEの有意な上昇が認められた。

EIDが0.5%の研究は、RPEの差0.22(95%CI;-0.05~0.48)で非有意。EIDが1%の研究はRPEの差0.28(同0.05~0.53)、EIDが1.5%の研究はRPEの差0.60(0.29~0.92)、EIDが2%の研究はRPEの差0.55(0.21~0.88)、EIDが2.5%の研究はRPEの差0.78(0.50~1.06)、EIDが3%の研究はRPEの差0.81(0.36~1.27)で、いずれも有意。

また、すべての研究を対象として、EIDとRPEの相関を検討した結果、EIDが1%あたりRPEが0.21(0.12~0.31)上昇するという有意な関連が認められた。

なお、研究試行時の気温や湿度、被験者のVO2maxは、上記のEIDとRPEとの関係に影響を与えておらず、結果は一貫していた。

これらの結果は、たとえ1%程度の脱水であってもパフォーマンスが有意に低下することを支持する結果と言える。ただ、その一方で、RPEが1上昇するにはEIDが5%近くなければならない、つまり5%近い脱水が生じない限り、自覚的運動強度の上昇幅は1ポイント以内であることを意味している。

以上より論文の結論には、「統計的な解析から、体重の1%を超えるEIDはRPEを増加させることが明らかになったが、少なくとも体重が3%減少するまでは、その影響が実際的に意味をなさないことを示唆している」と述べられている。また、「脱水の補正のための水分摂取量が過大の場合、それによって、アスリートではスポーツパフォーマンスの低下、レクリエーションレベルの運動ではアドヒアランスの低下が生じるのではないか」との見解も述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Impact of dehydration on perceived exertion during endurance exercise: A systematic review with meta-analysis」。〔J Exerc Sci Fit. 2022 Jul;20(3):224-235〕
原文はこちら(Elsevier)

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