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特集「女性アスリートの三主徴(トライアド)2025年コンセンサスステートメント」
特集「女性アスリートの三主徴(トライアド)2025年コンセンサスステートメント」

1.女性アスリートの三主徴(トライアド)ステートメント更新の必要性

女性アスリートの三主徴(トライアド)の国際コンセンサスステートメントが更新され、昨年末(12月31日)、「Sports Medicine」に2報の論文として掲載された。前回(2014年)にコンセンサスステートメントが改訂された以降に蓄積されたエビデンスを反映して、アップデートされたもの。2023年に「スポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)」の定義が変更され、トライアドを包含する概念となったが、そのRED-Sにおいてもトライアドは病態の中心的な意味をもち、またRED-Sモデルの妥当性に対する懸念も指摘されている。こうした中、独立した専門家パネルにより改めてトライアドについて科学的エビデンスが総括され、スクリーニング、診断、治療、競技復帰のための実践的ガイドラインが示された。2報の論文のエッセンスを数回に分けて紹介する。

イントロダクション:ステートメント更新の必要性

女性アスリートの三主徴(female athlete triad〈以下ではトライアドと表記〉)は、摂食障害の有無にかかわらず、エネルギー状態の不良(より具体的にはエネルギーの不足)、生殖機能の低下(月経異常)、骨の健康状態の悪化(骨粗鬆症)の三つの因子が相互に関連する病的な状態として、1997年に最初のポジションスタンド(立場表明)が発表され、その後、専門家連合(female athlete triad coalition)により2007年と2014年にコンセンサスステートメントが発表・改訂されてきている。

2014年以降にも、当然ながらトライアドに関する新たなエビデンスが蓄積されてきており、さらにこの間に成年・未成年を問わず女性アスリートが着実に増加して、トライアドへの関心が高まっている。加えて、「スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;RED-S)」の定義づけが2023年に改められてトライアドを含む病態概念とされたことで、両者の関連性がやや不明瞭となっている。

RED-Sの現在の定義には、問題のある利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)が引き起こすとされるさまざまな自覚症状や他覚所見が広く該当するが、実際のところはトライアドが中心的な存在であることが多いと考えられる。また、LEAが病態の基盤にあるとするRED-Sモデルの妥当性を疑問視する考え方があり、睡眠やストレス、またはオーバートレーニングの影響がそれぞれ独立して、RED-Sのさまざまなアウトカムに関与している可能性も示されている。

要約すると、RED-Sという病態に関するエビデンスがいまだ明確とは言い切れない現状において、スポーツ医学においては引き続きトライアドという枠組みを外すことなく、科学的な進歩を取り込み実践に役立てていく必要がある。

以上を背景として、今回、改めてトライアドのコンセンサスステートメントが更新された。

論文の「キーポイント」

冒頭で述べたように、このコンセンサスステートメントは、2報の論文として公開されている。

1報目はトライアドモデルに関する現時点の科学的エビデンスと、思春期のトライアドについてであり、2報目はトライアドのスクリーニング、診断、治療、競技復帰のためのガイドラインである。どちらもかなりのボリュームであり、論文ではアブストラクトに引き続き「キーポイント」が掲げられていて、先にこれに目を通しておくことで全体像を把握しやすくなるため、本稿でもキーポイントを先に紹介する。

1報目の論文のキーポイント

  • 今回改訂されたコンセンサスステートメントでは、負のエネルギー状態を表す用語として「利用可能エネルギー不足(LEA)」ではなく、「エネルギー欠乏(energy deficiency)」という言葉を使用している。LEA(エネルギーの摂取量と消費量の差を除脂肪量で補正した値)は、低体重、低BMI、体重減少、代謝代償(metabolic compensation)の徴候と同列に、エネルギー欠乏の複数の指標の一つとして扱う。
  • 「代謝補償(metabolic compensation)」という用語を、エネルギーの節約を目的として身体のエネルギー資源を再配分する適応プロセスを言い表すために用いる。
  • 女性アスリートのトライアドが、骨ストレス傷害のリスク増大と一貫して関連しており、そのことがストレス骨折を増加させやすいことを示す確立されたデータを反映して、骨の健康の関連病態として骨ストレス傷害を位置づける。
  • エネルギー摂取量の増加を促す栄養介入により、月経の回復だけでなく、卵巣ステロイド濃度と排卵の回復ももたらされることを示すエビデンスを踏まえ、卵巣ステロイドホルモンを生殖機能として考慮すべき要素として位置づける。
  • エネルギー摂取量を増やす栄養介入によって、骨密度の回復が可能か否かは疑問が残されている。

2報目の論文のキーポイント

  • 骨ストレス傷害は、運動に伴う月経異常と併存する慢性的なエネルギー欠乏(energy deficiency)や低エストロゲン血症から生じる可能性があり、この女性アスリートのトライアドモデルに含まれている。
  • 無作為化比較試験(RCT)によって、トライアド状態の進展とその状態からの回復は、その速度や生理学的メカニズムが異なることが示されており、よってモニタリングおよび治療アプローチは、トライアドの進展または回復に応じて特異的である必要があり、かつトライアドのスペクトルに対して特異的である必要がある。
  • トライアドのリスクの評価のためにエネルギー欠乏を把握することが重要であり、またエネルギー欠乏の重症度/リスクを分類するために、エネルギー利用可能性の閾値(energy availability threshold)という概念に縛られない、改訂された用語を用いることが推奨される。
  • トライアド徴候のある思春期のアスリートに対する診断、治療、および競技への復帰のアプローチは、成人に対するものとは異なり、年齢に応じた臨床ガイドラインが必要。
  • スポーツ医学チームによるトライアドの予防および管理のアプローチとしては、事前の身体評価、検証済みの食行動質問票の使用、トライアドからの回復および競技復帰に向けたアルゴリズム、さらにリソースがあるのであればエネルギー欠乏の評価などに関して、トランスレーショナルツールを組み込む必要がある。

コンセンサスステートメントの策定プロセスとエビデンスレベル

コンセンサスステートメントの策定にあたり、摂食障害・心理学、運動生理学、栄養学、内分泌学、理学療法、生殖医学、臨床スポーツ医学の研究者、および女性や小児、骨の健康に関する専門家など多領域から、計16名が招集され専門家パネルが設けられた。資金提供は受けておらず、利益相反(COI)はないとされている。

策定のプロセスとして、2014年の専門家連合(female athlete triad coalition)によるステートメント策定で用いられた手法と同じ手法が採用された。会議で議題に挙がったトピックについて執筆チームが設けられ、各セクションのリーダーを選出。セクションリーダーはチーム内の研究者と協力して各セクションの草稿を作成し、それらが全体会議でディスカッションされた。

その後、ステートメントのすべての素案について匿名でのオンライン投票が行われた。回答は、「同意」、「中立」、「非同意」の三者択一であり、85%超が同意し非同意がない場合、そのステートメントに関してはそれ以上の議論を行わずに採択した。同意が85%以下の場合は再度ディスカッションされ、記述内容の修正・削除を加えたうえで、85%超が同意し非同意がなくなるまで、この作業を繰り返した。

エビデンスレベル

エビデンスの強さのランク付けは、米国スポーツ医学会等が用いている分類法に準拠し、以下のように定義した。

  • レベルA:無作為化試験(RCT)および/または観察研究により、一貫した結果が示されているもの。
  • レベルB:RCTおよび/または観察研究の強力なエビデンスがあるが、一部に矛盾した報告があるもの。
  • レベルC:限られた観察研究および/または無作為化されていない研究、対照群のない研究のエビデンスがあり、全体として妥当な結論が示唆されるもの。
  • レベルD:レベルCに相当するエビデンスが十分でないながら、専門家パネルの合意に基づくもの。

では、次回以降、2本の論文を順番に、もう少し詳しく紹介していく。

2.トライアドモデルに関する現時点の科学的エビデンスと思春期のトライアド

文献情報

〈論文1〉

原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 1: State of the Science and Introduction of a New Adolescent Model」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)

〈論文2〉

原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 2: Clinical Guidelines for Screening, Diagnosis, Treatment, and Return to Play for Adolescents and Adults」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)

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SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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