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特集「女性アスリートの三主徴(トライアド)2025年コンセンサスステートメント」
特集「女性アスリートの三主徴(トライアド)2025年コンセンサスステートメント」

3.利用可能エネルギーと乱れた食行動/摂食障害に関する科学的アップデート

女性アスリートの三主徴(トライアド)の国際コンセンサスステートメントが改訂され、昨年末に「Sports Medicine」に2報の論文として掲載された。その内容を数回に分けて紹介しているが、初回のイントロダクション、第2回目の改訂のポイントに続き、今回はいよいよ1報目の論文の中核部分に触れる。

1報目の論文はトライアドモデルに関する現時点の科学的エビデンスと、思春期のトライアドについて総括されている。主な内容は、エネルギー状態の連続体に関する科学的アップデート、乱れた食行動(disordered eating;DE)と摂食障害(eating Disorders;ED)に関する科学的アップデート、生殖機能に関する連続体の科学的アップデート、骨の健康に関する科学的アップデート、思春期のトライアドモデル、新たな課題、今後の方向性など。これらのうち、食事・栄養に関連の深いパートを中心に一部を紹介していく。

エネルギー状態の連続体に関する科学的アップデート

用語の定義

エネルギーの充足(energy replete)

エネルギーの充足とは、体内のエネルギー貯蔵量が十分であり、循環中のエネルギー基質およびグリコーゲン貯蔵量が適切に保たれ、体重が安定している、または増加していて、かつ「代謝補償」(連載2参照)の所見が認められない状態を指す。

エネルギー充足状態では、安静時および運動時の双方に必要なエネルギー需要が満たされており、成長や生殖を含むすべての身体機能に対して、十分なエネルギーが配分されている。

論文の図3に、次の「エネルギー欠乏」とともに図解されている。

論文中の図3:図3を表示する

エネルギー欠乏(energy deficiency)

エネルギー欠乏とは、運動を含む身体機能を維持するために必要なエネルギー状態が不十分な状態を指し、以下のうち一つ以上の所見が認められることで定義される。すなわち、体重減少、BMI低値または低下傾向、後述の利用可能エネルギー(energy availability:EA)が低値または低下、および/または後述の代謝補償の徴候。

エネルギー欠乏による行動面への影響として、臨床的な摂食障害(ED)、乱れた食行動(DE)、DEを伴わない意図的な体重減少、無自覚な摂取不足、不適応な運動行動(例えば強迫的な運動)などがある。慢性的なエネルギー欠乏(数週間から数カ月に及ぶもの)により、トライアド関連病態における一連の生理学的カスケードが進行し得る。

論文の図4に、これらの流れが図示されている。

論文中の図4:図4を表示する

利用可能エネルギー(energy availability;EA)

利用可能エネルギー(EA)とは、運動によって消費されるエネルギーを差し引いた後、生理機能を維持するために利用可能な食事由来のエネルギー。24時間の食事摂取エネルギー量から、運動によって消費されたエネルギー量(安静時代謝量〈resting metabolic rate:RMR〉は含まない)を差し引き、その差を除脂肪量(fat-free mass;FFM)で補正することで算出される。

EAが約45kcal/kg FFM/日であることは、トライアドの連続体において健常、すなわちエネルギー充足状態であり、排卵を伴う正常な月経周期を有し、かつ骨密度が正常である状態と関連しているとされる。一方でEAが30kcal/kg FFM/日未満であることが、トライアド関連の生理学的変化が生じ始める閾値を示すかどうかについては議論が続いている。このコンセンサスステートメントでは、EAの閾値の概念の有用性について、過去のポジションステートメントやコンセンサスに比べると、支持をしていない(後述)。

代謝補償(metabolic compensation)

代謝補償とは、エネルギーを節約する目的で身体のエネルギー資源の配分を再調整する適応過程を反映した状態を指す。

代謝補償の定量的指標としては、安静時代謝量(RMR)の低下、または予測RMRに対する実測値の比の低下があてはまる。また、除脂肪量(FFM)あたりのRMRの低下や、甲状腺刺激ホルモンおよびサイロキシン濃度が正常またはほぼ正常であるにもかかわらず、総トリヨードサイロニン(total triiodothyronine;TT3)濃度が低値であることも代謝補償の指標に含まれる。

そのほかに、成長へのエネルギー配分を抑制する変化(インスリン様成長因子1〈insulin-like growth-factor-1;IGF-1〉低値または低下)、満腹感や空腹感を変化させるようなホルモン(レプチンやグレリン)分泌の変動なども、代償的な適応として挙げられる。

月経異常を来す利用可能エネルギー(EA)の閾値は存在するか?

2007年に発表された女性アスリートのトライアドに関するポジションステートメントで、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)がトライアドの病態の主な要因であることが強調されて以降、月経異常が生じるEAの閾値が存在するかどうかが検討されてきた。とくに、EA 30kcal/kg FFM/日未満を閾値とし得るかという研究の報告が増加した。しかし、排卵周期が維持されている女性の中にもこの閾値未満の女性が存在し、月経異常を有する女性の中にもこの閾値を上回る女性が存在する。

EAを約45kcal/kg FFM/日に保つことを目標とする推奨は支持されるが、月経周期が障害されるEAの閾値については、さらなる研究が必要である。

乱れた食行動(DE)と摂食障害(ED)に関する科学的アップデート

アスリートは乱れた食行動(DE)や摂食障害(ED)を発症するリスクが高い。通常、競技レベルが高くなるにつれて、また、パフォーマンス発揮のために体組成や体型、体重を最適化しなければならないというプレッシャーに直面するにつれて、より脆弱性が高まる。

不安や抑うつなど、他の心理的要因もEDおよびDEに関連する行動につながる可能性がある。トライアドに該当するアスリート全員が病的な摂食態度や行動を示すわけではないものの、エネルギー欠乏はDEまたはEDに起因したものである可能性がある。

アスリートのDEやEDのリスク因子

全般的なリスク因子

  • 個人要因;完璧主義、過剰な順応性、高達成志向、または強迫性障害の傾向、オルトレキシアまたは健康的な食事への強迫観念、衝動的または強迫的な運動、メンタルヘルス関連(不安、抑うつ、物質使用障害、心的外傷後ストレス障害、虐待など)。
  • 心理社会的要因;学校/学業、人間関係(家族、友人、チームメイト/コーチ)、社会的プレッシャー(痩せることへのプレッシャー)、経済(食料不安)、ストレス、ソーシャルメディアの関与。
  • COVID-19;新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより摂食障害の顕著な増加が、アスリートと非アスリートの双方で観察されている。

アスリートに特異的なリスク因子

  • 早期特化;とくに理想的な体型を目指すことの多い競技(審美系競技)への早期特化。
  • 競技の種類;体重別階級競技、審美系競技、持久力競技、露出度の高いウエアで行う競技、およびポジション(例えばチアリーディングのベース、フライヤー)。
  • アイデンティティー;アスリートとしての役割をどのように自覚しているか。
  • コーチ/チームメイト要因;体重や体組成を批判するコーチングスタイル、コーチやチームメイトの影響による評価や選抜されないことへの恐れ、頻繁な体重や体組成の評価。
  • トラウマ;怪我などのトラウマ的な経験、スポーツからの引退。

アスリートのDEやEDの健康への影響

EDの健康への影響は多岐にわたり、精神的および身体的健康の両方に悪影響を及ぼす。エネルギー欠乏(DE/EDの有無にかかわらず)、月経異常、低骨密度/骨ストレス傷害というトライアドは、体内のほぼすべてのシステムに影響を及ぼし、健康、生活の質、そしてスポーツパフォーマンスを低下させる。とくに、思春期前から激しい運動を始めてDE/EDを有する女性アスリートでは、発育が抑制される可能性がある。

一方、興味深いことに、女性の軍人ではED/DEが骨ストレス傷害や筋骨格系の障害と関連しているものの、そのメカニズムはエネルギー不足ではなく、睡眠不足に関連している可能性が指摘されている。

医師やサポートスタッフがこれら、ED/DEの精神的・身体的悪影響を認識することは、早期発見と適切な介入のために極めて重要である。

4.成人モデル、思春期モデルのステートメント

文献情報

〈論文1〉

原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 1: State of the Science and Introduction of a New Adolescent Model」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)

〈論文2〉

原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 2: Clinical Guidelines for Screening, Diagnosis, Treatment, and Return to Play for Adolescents and Adults」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)

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SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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