

6.トライアドのスクリーニング・診断・治療・競技復帰に関するガイドラインの推奨
昨年末に改訂され「Sports Medicine」に2報の論文として掲載された、女性アスリートの三主徴(トライアド)の国際コンセンサスステートメントについて連載で紹介してきた。
目次
最終回の今回は、2報目の論文に掲載されているステートメントと、ステートメント全体の総括としての推奨事項を取り上げる。なお、ステートメントは1報目にも掲げられており、それについては本連載の4回目で紹介済み。
※以下は食事・栄養に関連のある項目を抜粋し意訳したものです。原典論文で確認のうえお使いください。
※ステートメントの策定プロセス、およびエビデンスレベルの定義については、本連載の1回目を参照してください。
トライアドのスクリーニング・診断・治療・競技復帰に関するガイドラインの推奨
エネルギー欠乏のスクリーニングと診断に関する推奨事項
- エネルギー欠乏の評価は、同じ時間帯で連続的に測定した場合に最も有用である。【エビデンスレベル;B】
- 対象者がエネルギー欠乏状態か否かは、以下の生理学的または行動学的指標の少なくとも一つ以上が連続的に変化していることで、最も良好に判定できる。体重、BMI、利用可能エネルギー(energy availability:EA)、または食事制限を反映する食生活上の態度および行動の指標、可能であれば安静時代謝量(resting metabolic rate:RMR)などの代謝補償の指標、および/または内分泌検査値(トリヨードサイロニン、IGF-1、レプチン、グレリンなど)。【エビデンスレベル;B】
- 一時点の体重またはBMIしか利用できない場合、体重が予測体重の85%未満、BMIが17.5未満(思春期では同年齢の5パーセンタイル未満)、EAが45kcal/kg FFM/日より大幅に低い、RMRまたは総トリヨードサイロニン(total triiodothyronine;TT3)低値は、栄養不良または慢性的エネルギー欠乏のリスクが高いことを示している可能性がある。【エビデンスレベル;B】
エネルギー状態の代理マーカーとしての食態度と行動の評価
- 食生活の態度や行動、例えば痩せ願望や食事制限などの心理的な評価は、エネルギー欠乏の有用な代理マーカーとして役立つ可能性がある【エビデンスレベル;B】
- 強迫的な運動、意図的でない食事摂取量の不足、時間制限食などの行動は、エネルギー欠乏に関連している【エビデンスレベル;C】
トライアドのリスク因子と摂食障害(ED)/乱れた食行動(DE)のスクリーニング
- すべての女性アスリートは、トライアドのリスク因子に関するスクリーニングを受けるべきである。医療従事者による競技参加前身体評価(preparticipation physical evaluation;PPE)は、骨の健康、月経異常、摂食障害(eating Disorders;ED)や乱れた食行動(disordered eating;DE)のリスクを効果的に評価することができる。ED/DEに対する態度や行動を評価するために、エネルギー状態の代理マーカーとして、他の心理測定ツールも検討すべきである【エビデンスレベル;B】
- 摂食障害(ED)または乱れた食行動(DE)が疑われる場合のベストプラクティスとしては、医師、管理栄養士(可能であればスポーツ栄養士)、および精神保健専門家(可能であればEDの専門知識を持つスタッフ)という3領域の専門分野の医療従事者の評価を含める必要がある【エビデンスレベル;B】
- アスリートは、あらゆるタイプのEDと診断される可能性があり、体重はさまざまであって、各種のEDで認められるさまざまな行動特性を示すことがある【エビデンスレベル;A】
摂食障害(ED)/乱れた食行動(DE)の治療
- アスリートの摂食障害(ED)や乱れた食行動(DE)に対する心理療法は、現時点では未だほとんど検証されていないが、標準的なED治療がアスリートにも適切であることを示唆するエビデンスがある【エビデンスレベル;B】
生殖機能の連続体に関する診断と治療
- 臨床医は、栄養介入に対する生殖機能回復のエンドポイントを定義するために、36日未満の月経周期の継続と卵巣ステロイド濃度の上昇という目標を含む、より包括的なアプローチを検討する必要がある【エビデンスレベル;A】
- エネルギー摂取量を1日300~600kcal増やすように設計された栄養介入は、生殖機能の回復を促す可能性が高い。しかしながら、月経歴、月経周期(無月経または稀発月経)、ベースライン体重、心理社会的ストレスなどのライフスタイル要因などが、このような介入の有効性を予測する因子となる【エビデンスレベル;B】
骨の健康に関する診断と治療の最新情報
- エネルギー欠乏、月経異常、およびトライアドに関連する低骨密度を認める女性アスリートに対しては、エネルギー欠乏を逆転させること(エネルギー摂取量の増加、栄養状態の改善、および/または運動によるエネルギー消費量の減少)により、体重増加と月経再開を目指すことを推奨する【エビデンスレベル;B】
- アスリートを支え栄養目標の達成をサポートするために、多分野にわたるアプローチを推奨する。これには、少なくともプライマリケア医、および/またはスポーツ医学専門家、そして管理栄養士(できればスポーツ栄養士)が必要である。メンタルヘルス専門家、内分泌専門医、整形外科医、精神科医、運動生理学者、認定アスレチックトレーナー、家族、チームコーチからの助言も有用【エビデンスレベルA】
- カルシウムとビタミンDの状態を最適化することを推奨する【エビデンスレベル;B】
回復と競技復帰のための累積リスク評価
- 女性アスリートのトライアドと骨の健康との間には用量反応関係があり、累積リスク因子の数が多いほど、低骨密度および/または骨ストレス傷害(bone stress injurie;BSI)のリスクが高くなる【エビデンスレベル;B】
- 栄養介入プログラムは、とくに海綿骨が豊富な骨部位において、BSIを減少させる可能性がある【エビデンスレベル;B】
ステートメントの要約(抜粋)
- 成人および思春期の女性アスリートは、総エネルギー消費量を満たすために身体に十分な栄養を摂取しないことで生じる可能性のある健康上の問題について、教育を受ける必要がある。
- エネルギー欠乏の評価はトライアドリスクを特定するうえで重要であり、エネルギー欠乏の重症度/リスクを分類するために、このコンセンサスステートメントで改訂された用語を用いることが推奨される。
- スポーツ医学の臨床医は、単に月経が再開しただけでは、排卵が規則的に再開した、あるいは卵巣ステロイド濃度が正常化したとは限らないことを認識すべきである。規則的な長さの月経周期が数回継続していることが、月経の完全な回復を示唆する。
- 成人および思春期の女性アスリートは、トライアドリスク因子のスクリーニングとモニタリングを受ける必要があり、リスクの検出されたアスリートは、スポーツ栄養士、医師、および/または食行動の専門家、さらにはメンタルヘルスの専門家に紹介され、リスク行動の悪化を防ぐ必要がある。
- スポーツ医学の臨床医と実践者は、最新のトライアドのサイエンスについてトレーニングと教育を受け、トライアドの予防と治療にエビデンスに基づいたアプローチを採用する必要がある。
- 中程度から重度のトライアドリスクをもつ女性アスリートは、医師、管理栄養士、メンタルヘルス専門家(とくにDEやEDの疑いがあるアスリートの場合)で構成される経験豊富な多領域ケアチームによる、協調的なケアを受ける必要がある。
目次
文献情報
〈論文1〉
原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 1: State of the Science and Introduction of a New Adolescent Model」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)
〈論文2〉
原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 2: Clinical Guidelines for Screening, Diagnosis, Treatment, and Return to Play for Adolescents and Adults」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)








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