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特集「女性アスリートの三主徴(トライアド)2025年コンセンサスステートメント」
特集「女性アスリートの三主徴(トライアド)2025年コンセンサスステートメント」

2.トライアドモデルに関する現時点の科学的エビデンスと思春期のトライアド

昨年末に「Sports Medicine」に2報の論文として掲載された、女性アスリートの三主徴(トライアド)の国際コンセンサスステートメントの内容を、数回に分けて取り上げている。初回はイントロダクションとして、コンセンサスステートメント改訂の背景や策定のプロセス、キーポイントなどを紹介した。第2回目の今回からは、1報目の論文の内容を抜粋していく。1報目の論文では主に、トライアドモデルに関する現時点の科学的エビデンスと思春期のトライアドについて総括されている。

成人女性アスリートのトライアドモデルのおもな改訂ポイント

専門家パネルは、2025年時点の科学的な現状を検討した結果として、女性アスリートの三主徴(female athlete triad〈以下ではトライアドと表記〉)モデルを以下のように更新した。なお、論文中の図1に、以下の内容に関する全体像が図示されている。

論文中の図1:図1を表示する

「エネルギー欠乏」と「代謝補償」という用語を定義

身体全体のエネルギー状態、または成長や生殖・運動・体温調節といったさまざまな生理機能に対して酸化基質(エネルギー源)がどのように分配されているかを定量化する方法について、妥当性が検証され広く受け入れられている手法は存在しない。これを背景にこのコンセンサスステートメントでは、これまでのトライアドに関する科学的文献に基づき、トライアドの進展と回復に密接に関連する代謝状態を理解することに焦点をあて、エネルギー状態の連続性に関する用語を定義する。

近年の研究の進展も、用語の変更を支持している。とくに、「利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)」に代えて、「エネルギー欠乏(energy deficiency)」という用語が、エネルギー状態のスペクトルと関連づけて用いられるようになった点は重要である。LEA(エネルギーの摂取量と消費量の差を除脂肪量で補正した値)は、このコンセンサスステートメントでは、低体重や体重減少、低BMI、および/または、代謝補償を示す所見と並んで、エネルギー欠乏を示す複数の指標の中の一つとして位置づけられている。

この変更の理由として、信頼性の高い利用可能エネルギー(energy availability:EA)の測定が困難であり、日差変動も大きいことが挙げられる。さらに、EAの算出だけでは身体のエネルギー貯蔵量や、生理学的なエネルギー節約反応を反映する所見を捉えることができず、エネルギー状態を正確に表現するには不十分であることも指摘できる。よって、この改訂版コンセンサスステートメントでは、「代謝補償(metabolic compensation)」という新たな概念を導入した。

「代謝補償」とは、エネルギーを節約する目的で、身体のエネルギー資源の配分を再調整する適応過程を指す。代謝補償は体重減少に反応して観察され、慢性的な低体重のセットポイントを形成している場合もあれば、そうでない場合もある。

代謝補償には、除脂肪量で補正後の安静時代謝量(resting metabolic rate;RMR)の低下、実測RMRと予測RMRの比の低下、代謝関連ホルモン分泌の低下などが当てはまり、より具体的には、総トリヨードサイロニン(total triiodothyronine;TT3)、インスリン様成長因子1(insulin-like growth-factor-1;IGF-1)、レプチンの低下、グレリンの上昇などが挙げられる。

重要なこととして、体重が安定していることをもって、エネルギー出納が維持されていると解釈すべきでない。なぜなら、トレーニングに伴う血漿量の増加やグリコーゲン貯蔵量の増加とそれに伴う体内水分の増加が、体重減少をマスクする可能性があるためである。

なお、エネルギー欠乏状態では前記のような代謝補償は、数日から数週間のうちに生じ得ることが示されていて、可逆的であると考えられている。ただし、回復に要する期間は明らかでない。

骨ストレス傷害(BSI)を骨の健康の連続体として位置づける

骨ストレス傷害(bone stress injurie;BSI)を、このトライアドモデルに追加した。これは、月経異常、低体重、乱れた食行動(disordered eating;DE)という3要素が、いずれもBSIのリスクの増大と関連していることを示す、確立したデータに基づいている。

骨の健康の連続体において、初期(サブクリニカル)には、骨密度低値またはBSI低リスク状態が該当する。一方、病的なものとしては、骨粗鬆症またはBSI高リスク状態、あるいはリスク状態の反復が該当する。

卵巣ステロイドホルモンやFHOAを生殖機能の連続体として位置づける

生殖機能の連続体に、卵巣ステロイドホルモンを追加することは、月経の回復だけでなく、卵巣ステロイドホルモン濃度や排卵の回復にも、エネルギー摂取量を増やす栄養介入が重要であることを示した無作為化比較試験(RCT)を含むエビデンスに照らして妥当である。こうした回復が、骨の健康にも影響を及ぼす可能性があることも示されている。

また、この連続体の病的な状態として、機能性視床下部性乏月経・無月経(functional hypothalamic oligo-amenorrhea;FHOA)を位置づけた。

成人モデルにおける臨床アウトカムの進展および回復の変化の可視化

前回のコンセンサスステートメントが公表されて以降、臨床アウトカムの進展および回復の変化・速度に関する多くのエビデンスが蓄積された。健康な状態から病的な状態へ移行する「進展」と、病的な状態から健康な状態へ移行する「回復」とでは、その過程が異なる可能性があることが、次第に明らかになってきている。

今回の新たなモデルを表す図では、こうした変化の速度を「進展速度(induction rate)」、「回復速度(recovery rate)」の線として示している。

骨密度の回復の不確実性と、より強固なエビデンスの必要性

エネルギー摂取量を増やすことによって骨密度(bone mineral density;BMD)が回復するかどうかについては、現時点では明確でない。機能性視床下部性乏月経・無月経(FHOA)を有する女性アスリートを対象に、1日のエネルギー摂取量を約350kcal増やす12カ月間の介入研究(REFUEL試験)では、対照群と比較して体重と体脂肪量の増加が認められたにもかかわらず、いずれの部位のBMDの改善は認められなかったと報告されている。その一方、エネルギー摂取量を360kcal増やしトレーニング量を週1日減らすという20週間の介入で、無月経アスリートの腰椎や大腿骨頸部のBMDが有意に改善したと報告されている。

BMDの改善には、介入の強度・方法・期間、さらにはベースライン特性などが影響する可能性があり、今後の検討が必要である。

思春期をクローズアップした新たなモデルの提示

思春期の女性アスリートにおいて骨代謝を阻害する因子が存在する場合、骨量の蓄積が妨げられて最大骨量が低くなるリスクがあるため、成人後にトライアドの影響をより強く受ける可能性がある。つまり、早期発見・治療、ならびに予防介入の重要性がより強い。

また、思春期の女性アスリートにおけるエネルギー欠乏は、初経遅延や原発性無月経、続発性無月経、骨密度低下、最大骨量の低下を引き起こす可能性がある。

これら、思春期女性アスリートのトライアドモデルについては、論文中の図2に全体像が図示されている。

論文中の図2:図2を表示する

3.利用可能エネルギーと乱れた食行動/摂食障害に関する科学的アップデート

文献情報

〈論文1〉

原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 1: State of the Science and Introduction of a New Adolescent Model」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)

〈論文2〉

原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 2: Clinical Guidelines for Screening, Diagnosis, Treatment, and Return to Play for Adolescents and Adults」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)

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