

4.成人モデル、思春期モデルのステートメント
昨年末に改訂され「Sports Medicine」に2報の論文として掲載された、女性アスリートの三主徴(トライアド)の国際コンセンサスステートメントについて、連載で紹介している。これまで、イントロダクション、改訂のポイント、食事・栄養関連のトピックという順番に概説してきた。
目次
今回は2報の論文の1報目に掲載されているステートメントを抜粋して取り上げる。1報目はトライアドモデルに関する現時点の科学的エビデンスと思春期のトライアドについて総括されており、それらについてエビデンスに基づくステートメントとエビデンスレベルが示されている。なお、2報目はトライアドのスクリーニング、診断、治療、競技復帰のためのガイドラインであって、それらについてもステートメントが掲げられており、本連載の後半で紹介する。
※以下は食事・栄養に関連のある項目を抜粋し意訳したものです。原典論文で確認のうえお使いください。
※ステートメントの策定プロセス、およびエビデンスレベルの定義については、本連載の1回目を参照してください。
女性アスリートのトライアド 成人モデルのステートメント
エネルギー状態に関する連続体の科学的アップデート
- カロリー制限を含む3カ月間の運動介入を受けた未訓練の女性を対象とした研究では、月経異常を予防するための戦略として利用可能エネルギー(energy availability:EA)の絶対的な閾値を用いることは支持されていない。一方、月経異常が誘発されるEAレベルには個人差があり、エネルギー状態と月経機能の間には用量反応の連続体が存在する可能性が高いと考えられる。【エビデンスレベル;A
- 実験室以外の環境でのEAの測定は信頼性が低く、日々の変動が大きいため課題がある。【エビデンスレベル;B】
摂食障害と摂食障害に関する科学的アップデート
- スポーツへの参加には、メンタルヘルスへの悪影響を防ぐ側面もあるが、女性アスリートは、とくに特定の体型を推奨するスポーツに参加している場合、摂食障害の発症リスクがより高い可能性がある。【エビデンスレベル;B】
- 女性アスリートの摂食障害のリスク要因には、スポーツ特有の要因(早期の競技特化やコーチ/チームメイトの影響など)と、一般的な要因(完璧主義的な気質やストレスなど)が含まれる。【エビデンスレベル;C】
生殖機能に関する連続体の科学的アップデート
- 体重が正常範囲にあり、排卵を伴う月経周期を有する若年女性では、2~3カ月間に3~4kgの中等度の体重減少と、1日あたり500~800kcalの中等度のエネルギー欠乏により、卵巣ステロイドホルモン曝露の低下または抑制を伴う月経異常が誘発される。【エビデンスレベル;A】
- 総トリヨードサイロニン(total triiodothyronine;TT3)または遊離トリヨードサイロニン(free triiodothyronine;FT3)は、エネルギー欠乏とそれに伴う生殖機能後遺症のある女性アスリートのエネルギー状態の代替マーカーとして使用でき、エネルギー状態の改善とともにそれらの値が正常化することが多い。【エビデンスレベル;B】
- エネルギー欠乏に関連する月経異常のリスクは、初経後の経過年数が長くなるに伴い低下する。【エビデンスレベル;B】
- 心理社会的要因は、エネルギー欠乏に関連する月経異常の発症に影響を与えると考えられる。【エビデンスレベル;B】
- 単なる月経の再開や月経頻度の増加は、回復過程における重要なステップではあるが、必ずしも完全な生殖機能の回復を意味するものではない。【エビデンスレベル;A】
- 機能性視床下部性乏月経・無月経(functional hypothalamic oligo-amenorrhea;FHOA)から回復中の女性アスリートにとって、健康的な目標とは、月経が始まり、その後複数の周期が続くことである(36日未満の周期で2回以上)。【エビデンスレベル;A】
- FHOAから回復中の女性アスリートにおけるエストロゲン曝露の増加は、36日未満の周期が3回連続して達成されるまでは起こりにくい。【エビデンスレベル;A】
- FHOAを有する女性アスリートでは、1日あたり300~600kcalのエネルギー摂取量の増加によって、生殖機能の回復(すなわち月経頻度の増加)が開始されることが多い。【エビデンスレベル;A】
- 月経異常の期間が長い女性では、生殖機能の回復までの期間が長くなる可能性がある。【エビデンスレベル;A】
- ベースラインの脂肪量が多いFHOAを有する女性アスリートでは、エネルギー摂取量の増加による生殖能力の回復の可能性が高い。【エビデンスレベル;A】
骨の健康に関する科学的アップデート
- 機能性視床下部性乏月経・無月経(FHOA)を有する女性アスリートは、月経異常のアスリートや非アスリートと比較して、とくに体重負荷部位以外で骨密度が低く、骨の形状、構造、および強度に障害があることが示されている。なお、エネルギー欠乏は、体重負荷部位でこれらの指標に大きな影響を与える。【エビデンスレベル;A】
- FHOAを有する女性アスリートは、エストロゲンやエネルギーの状態と一致する骨代謝マーカーの変化を示す。【エビデンスレベル;A】
- エネルギー欠乏とFHOAの存在は、アスリートの骨ストレス傷害(bone stress injurie;BSI)の重要な決定要因である。【エビデンスレベル;A】
新たな課題
- エネルギー欠乏(乱れた食行動や摂食障害によって証明される)は、筋骨格系の損傷リスク増大と関連している。【エビデンスレベル;C】
- 無月経のアスリートは、内皮依存性/非依存性の拡張障害を示す可能性があり、血行動態、自律神経、脂質プロファイルの変化を伴う可能性がある。【エビデンスレベル;B】
女性アスリートのトライアド 思春期モデルのステートメント
- 思春期は骨量の増大と全般的な健康を最適化するため、人生における重要な時期である。【エビデンスレベル;A】
- 思春期の女性アスリートにおけるエネルギー欠乏と栄養素摂取不足は、初経遅延、原発性/続発性無月経、骨密度低下、最大骨量の低下につながる可能性がある。【エビデンスレベル;A】
- 思春期の女性アスリートにおけるエネルギー欠乏の有病率は、スポーツ活動の性質によって異なる。【エビデンスレベル;B】
- 審美系、体重別階級競技、持久系競技、体重負荷のかからない競技を行っている10代のアスリートは、初経年齢の上昇、原発性/続発性無月経、および低骨密度のリスクが高くなる。【エビデンスレベル;A】
- 審美系、体重別階級競技、持久系競技、および/または痩せることが目標に含まれる競技への参加は、乱れた食行動のリスクを高める可能性がある。【エビデンスレベル;B】
- 思春期のアスリートは非アスリートに比べて月経異常のリスクが高い。【エビデンスレベル;B】
- 機能性視床下部性乏月経・無月経(FHOA)を有する思春期のアスリートは、とくにエストロゲン感受性部位において骨密度が低下し、骨の形状、構造、および強度に障害が生じるリスクがある。【エビデンスレベル;A】
- BMIが低い、および/または臨床的に有意な体重減少、および/または標準的な成長曲線の体重軌道を下回っていることは、エネルギー欠乏とFHOAのリスクを示している可能性があり、これらはともに思春期女性アスリートの骨密度低下の主要なリスク因子である。【エビデンスレベル;A】
- 思春期女性アスリートの骨密度低値は、短期的には不可逆的である可能性があるが、一部のアスリートでは体重の正常化と十分な期間の月経機能により、骨のミネラル化と骨量の正常化がキャッチアップする可能性がある。【エビデンスレベル;C】
次回からは、2報目の論文の内容を紹介していく。
目次
文献情報
〈論文1〉
原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 1: State of the Science and Introduction of a New Adolescent Model」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)
〈論文2〉
原題のタイトルは、「2025 Update to the Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement Part 2: Clinical Guidelines for Screening, Diagnosis, Treatment, and Return to Play for Adolescents and Adults」。〔Sports Med. 2025 Dec 31〕
原文はこちら(Springer Nature)








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