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体重あたりの非運動性熱産生は、アスリートと非アスリートで差がない 国内男子大学生での調査

アスリートの非運動性熱産生(NEAT)に焦点を当てた研究結果が報告された。国内の男子大学生アスリートのNEATは非アスリート学生よりも高いものの、体重で調整すると有意差はなくなるという。ただし、時間・体重あたりのNEATはアスリートのほうが高いことから、大学生アスリートは日常生活を活発に過ごしていると推測されるとのことだ。早稲田大学スポーツ科学学術院の御所園氏、田口氏らの研究によるもので、「Frontiers in Sports and Active Living」に論文が掲載された。

アスリートの日常生活行動下でのエネルギー消費の実態は?

アスリートのエネルギー消費量に関しては、これまでに多くの研究が行われてきている。しかし、それらの研究の大半は、運動時エネルギー消費量(exercise energy expenditure;EEE)や安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure;REE)に焦点を当てている。

総エネルギー消費量(total energy expenditure;TEE)にはEEEやREE以外に、食事誘発性熱産生(diet-induced thermogenesis;DIT)や非運動性熱産生(non-exercise activity thermogenesis;NEAT)によるエネルギー消費も含まれる。このうち後者のNEATは、移動や会話、座位行動などの日常生活行動で消費するエネルギー量であり、主として肥満や過体重のリスク因子、または高齢者のエネルギー出納といった点で研究されており、アスリートのNEATが注目されることは少ない。

しかし海外からは、アスリートはトレーニングによるエネルギー消費量が大きいために、トレーニング時以外は座位行動を増やし、NEATを減らす傾向があるとする研究結果が報告されている。仮にそうだとすれば、アスリートのNEATは非アスリートよりも低い可能性が想定される。

いずれにしても、アスリートのNEATに関する知見は限られており、この現状を背景として田口氏らは、国内の大学生アスリートのNEATを、非アスリート学生と対比するという検討を行った。

学生アスリートと非アスリート学生を対象とする横断研究

研究は、男子学生アスリート21人(19±1歳)と、スポーツを行っていない非アスリート男子学生12人(21±2歳)を対象とする、横断研究として行われた。研究参加の適格条件は、年齢が18~25歳の範囲で非喫煙者であり、疾患や怪我を有しておらず、代謝に影響を及ぼす薬剤を使用していないこととされていた。アスリート群は全国または地域の競技会に参加しているTier 3レベルであり、行っている競技はアメリカンフットボールが16人、ラクロスが5人だった。非アスリート群は全員がTier 0レベルだった。

研究期間はアスリートのトレーニングシーズン中だった。研究参加者は連続7日間、摂取したものを写真とともに記録し、それを基に総エネルギー摂取量(total energy intake;TEI)が算出され、TEIの10%を食事誘発性熱産生(DIT)とした。安静時エネルギー消費量(REE)は呼気ガス分析により算出。運動時エネルギー消費量(EEE)と非運動性熱産生(NEAT)については、連続7日間、三軸加速度計を身に着けて生活してもらい、その記録を基に算出した。また、睡眠や入浴などの加速度計を装着できない時間帯の身体活動量の把握のため、1日24時間の活動日誌を記録してもらった。

NEATはアスリート群のほうが高値

参加者の体格は、身長は群間に有意差がなく、体重とBMI、除脂肪体重はアスリート群のほうが有意に高値だった。また、総エネルギー摂取量(TEI)・消費量(TEE)ともにアスリート群のほうが有意に高値だった。

1日の中で運動時エネルギー消費量(EEE)が計測された時間は、アスリート群が179±42分、非アスリート群が0±0分で前者が有意に多く、非運動性熱産生(NEAT)が計測された時間は同順に790±79分、949±67分であり後者が有意に多かった(ともにp<0.001)。睡眠時間は有意差がなかった。

体重で補正したNEATは有意差なし

NEATは、アスリート群821±185kcal、非アスリート群643±164kcalで前者が有意に多かった(p=0.009)。体重で補正すると、10.5±1.7kcal/kg、10.4±2.2kcal/kgとなり、有意差は消失した(p=0.939)が、アスリート群はNEATに費やす時間が有意に少ないことから、時間で補正すると、0.81±0.16 kcal/kg BW/h、0.66±0.12 kcal/kg BW/hとなり、アスリート群のNEATが有意に多い結果となった(p=0.013)。

そのほかに、安静時エネルギー消費量(REE)はNEATと同様、実数ではアスリート群が高値だが体重補正すると有意差がなくなった。ただし食事誘発性熱産生(DIT)は実数および体重補正後もアスリート群のほうが有意に高値であり、またEEEは非アスリート群は0kcalであって、アスリート群のほうが有意に高値だった(いずれもP<0.001)。

アスリート群は中~高強度身体活動に伴うNEATの割合が高い

NEATが計測された時点の身体活動強度の分布をみると、アスリート群は非アスリート群に比べて軽強度身体活動の割合が低く(31.4 vs 39.8%、p<0.01)、中強度身体活動(44.7 vs 39.4%、p<0.05)や高強度身体活動(7.1 vs 3.6%、p<0.01)の割合が高いという有意差が認められた。座位行動の割合は有意差がなかった(16.8 vs 17.6%)。

アスリートのNEATを考慮に入れた栄養管理が必要

著者らは本研究が比較的少数の男子学生のみを対象とし、アスリート群の参加競技が球技のみであることなどの限界点を挙げたうえで、「アスリートのNEATは体重換算すると非アスリートより多いわけではないが、NEATが発生する時間はアスリートのほうが短いことから、より活動的な日常生活を送っていると考えられる」と総括。また、アスリートの総エネルギー消費量(TEE)が3,491±423kcalであり、その約4分の1(821±185kcal)をNEATが占めているという事実を強調し、「NEATに留意しなければアスリートのエネルギー出納を正確に判断できない可能性がある」と付言している。

なお、前述のように、アスリートはトレーニング以外でのエネルギー消費を避けるため、日常生活下での座位行動が多いという研究結果が海外から報告されているが、本研究はそれとは反対の結果だった。この点について論文の考察では、「本研究の対象アスリートは大学生であり、通学やアルバイトなどのため、トレーニング以外でのエネルギー消費の抑制が困難なことが、先行研究との違いとして現れたのではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Characteristics of non-exercise activity thermogenesis in male collegiate athletes under real-life conditions」。〔Front Sports Act Living. 2024 Feb 13:6:1326890〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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