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サッカーパフォーマンスを向上するサプリは? ネットワークメタ解析で31種類を比較調査

サッカーのパフォーマンスに対する31種類のサプリメントの効果を、ネットワークメタ解析によって比較検討した結果が報告された。走行距離、筋力、ジャンプ力、スプリントタイム、敏捷性などについて、それぞれの最大化に資するサプリが示されている。中国とマレーシアの研究者らの報告。

サッカーパフォーマンスを向上するサプリは? ネットワークメタ解析で31種類を比較調査

ネットワークメタ解析で、多数のサプリの効果を比較

2億7,000万人以上が世界各地でサッカーをしていて、13万人はプロ選手であると報告されている。サッカーは世界中で最も人気の高いスポーツと言える。

サッカーは90分の試合中、有酸素性エネルギー代謝が約90%を占め、残りの約10%は無酸素性エネルギー代謝とされ、スプリント、急速な加速/減速、方向転換、ジャンプ、キックなどの多くの動作が混在し、持久力と筋力、敏捷性、集中力、認知機能が必要とされる。エネルギーの供給や筋力強化、集中力向上、回復の促進などを意図して、多くのサッカー選手がサプリメントを摂取しており、その割合は報告により47.8~93.7%の範囲に分布している。

サプリ摂取がサッカーパフォーマンスに及ぼす影響についても、既に多くの研究報告があり、またそれらの報告を用いて行ったメタ解析の報告も存在する。しかし、異なる介入を行っている多数の研究報告を統合し、どの介入が優れているかを比較する統計学的手法であるネットワークメタ解析により、多くのサプリの影響を同時に比べるという研究はまだ行われていなかった。

1,425選手、80件の研究データを基に、31種類のサプリの効果を比較検討

文献検索には、PubMed、Web of Science、Cochrane、Embase、SPORTDiscusというデータベースを用いて、2024年2月5日までに収載された論文を対象とした。包括条件は、サッカー選手を対象にサプリ介入を行い効果を検討した無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)であり、除外条件は世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)禁止物質を使用している研究、査読を経ずに掲載された学会発表、同一の試験の結果に基づいて執筆されている異なる報告、および英語以外の言語による論文。

一次検索で5,937報がヒットし、重複削除後の3,345報をタイトルと要約に基づくスクリーニングにより139報に絞り込み、全文を入手し得た128報を全文精査の対象とした。最終的に、80件の研究報告を適格と判断した。

抽出された研究の特徴

抽出した80件の研究の参加者数は合計1,425人で、性別については63件の研究で男性が1,111人、8件の研究で女性が128人参加し、1件は男性と女性の両方を対象としていて、8件は性別の記載がなかった。競技レベルはエリートレベルが50件、877人、非エリートレベルが30件、548人だった。

これらの研究で、合計31種類のサプリの効果が検討されていた。最も多く検討されていた成分はカフェインで、カフェインのみを評価した研究が21件存在していた。次いでクレアチンと炭水化物が多く、各12件だった。なお、複数のサプリを併用した介入の報告は、個々のサプリの効果と相互作用の双方を評価した。

評価指標ごとの解析結果

解析は、走行距離、筋力、ジャンプ力、スプリントタイム、敏捷性などのパフォーマンス指標ごとに行われている。要旨のみを紹介する。

走行距離

走行距離に対するサプリ摂取の影響は25件の研究報告が存在し、カフェイン、炭水化物、プロテイン、ビート根エキスなど16種類のサプリが介入に用いられていた。解析の結果、炭水化物とプロテインの併用の累積順位曲線下面積(surface under the cumulative ranking curve;SUCRA)が96.2%と最も高く、炭水化物と電解質の併用(SUCRA=85.8%)、ウシ初乳(SUCRA=81.5%)と続いた。なお、SUCRAの値が高いほど、その介入が最も効果的である可能性が高いと判断される。

これらの影響を、対プラセボの標準化平均差(standardized mean difference;SMD)としてみると、炭水化物とプロテインの併用はSMD=2.2と非常に大きな影響が観察された。次いで、炭水化物と電解質の併用がSMD=1.3と大きく、ウシ初乳は中程度の有意な影響、カフェインは小さい有意な影響が観察された。

筋力

筋力については9件の研究でカフェイやプロテインなど8種類のサプリが検討されていた。SUCRAは、ビート根エキスが83.1%、黒ショウガ(Kaempferia parviflora)が80.9%、カフェインが66.2%だった。黒ショウガの対プラセボのSMDは0.46であり、小さい有意な影響が観察された。

ジャンプ力

34件の研究でジャンプの高さに対する14種類のサプリの影響が検討されていた。SUCRAは、β-アラニンが90.9%、メラトニンが89.6%、カフェインが74.6%だった。SMDは、β-アラニンが0.83、メラトニンが0.75でそれぞれ中程度、カフェインは0.37、クレアチンは0.33であり、それぞれ小さい有意な影響が観察された。

スプリントタイム

36件の研究でスプリントタイムに対する18種類のサプリの影響が検討されていた。SUCRAは、マグネシウムクレアチンキレートが99.6%、メラトニンが93.3%、クレアチンと重炭酸ナトリウムの併用が86.8%だった。SMDは、マグネシウムクレアチンキレートが-3.0と非常に大きく、メラトニンは-1.9、クレアチンと重炭酸ナトリウムの併用は-1.4でそれぞれ大きい有意な影響、アルギニンは-1.2と中程度の有意な影響が観察された。

敏捷性

14件の研究で敏捷性に対する11種類のサプリの影響が検討されていた。SUCRAは、クレアチンと重炭酸ナトリウムの併用が99.8%、メラトニンが79.4%、黒ショウガが71.6%だった。SMDは、クレアチンと重炭酸ナトリウムの併用が-2.3と非常に大きく、カフェインは-0.38の小さい有意な影響が観察された。

ピークパワーおよび平均パワー

12件の研究でピークパワーに対する10種類のサプリの影響が検討されていた。SUCRAは、マグネシウムクレアチンキレートが87.3%、分岐鎖アミノ酸(BCAA)が74.4%だった。一方、平均パワーに対してマグネシウムクレアチンキレートはSMD=1.3と、大きい有意な影響が観察された。

自覚的運動強度

29件の研究で自覚的運動強度に対する13種類のサプリの影響が検討されていた。SUCRAは、炭水化物とプロテインの併用が93.7%、炭水化物と電解質の併用が80.2%、メラトニンが77.4%だった。自覚的運動強度に対して炭水化物と電解質の併用はSMD=-0.56の小さい有意な影響が観察された。

競技レベルで層別化したサブグループ解析の結果

エリートレベルと非エリートで層別化した解析では、サプリ摂取による異なる影響が観察された。有意な影響が認められたサプリは以下のとおり。

エリートレベル

エリートレベルを対象とする研究の解析では、走行距離に対するカフェイン(SMD=0.28)が有意。ジャンプの高さに対しては、メラトニン(SMD=0.74)とカフェイン(SMD=0.39)が有意。スプリントタイムに対しては、マグネシウムクレアチンキレート(SMD=-3.0)、メラトニン(SMD=-1.9)、クレアチンと重炭酸ナトリウムの併用(SMD=-1.4)、アルギニン(SMD=-1.2)が有意。敏捷性に対しては、クレアチンと重炭酸ナトリウムの併用(SMD=-2.3)、カフェイン(SMD=-0.38)が有意。自覚的運動強度に対しては、炭水化物と電解質(SMD=-0.75)が有意。

非エリートレベル

非エリートレベルを対象とする研究の解析では、走行距離に対する炭水化物とプロテインの併用(SMD=2.3)が有意。筋力に対しては、黒コショウ(SMD=0.46)が有意。ジャンプの高さに対しては、β-アラニン(SMD=0.83)とカフェイン(SMD=0.34)が有意。平均パワーに対しては、カフェイン(SMD=0.35)が有意。自覚的運動強度に対しては、炭水化物と電解質(SMD=-1.4)が有意。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of different dietary supplements on athletic performance in soccer players: a systematic review and network meta-analysis」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2025 Dec;22(1):2467890〕
原文はこちら(Informa UK)

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