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マラソンランナーの炭水化物摂取量が完走タイムに影響か? サブスリーは“走りながらの補給”が有意に多い

マラソンランナーの競技前・競技中・競技後の栄養素摂取量と、完走タイムとの関連を検討したところ、記録が3時間未満のランナーと3時間超のランナーでは、競技中の炭水化物摂取量に有意差が認められたという結果が報告された。

マラソンランナーの炭水化物摂取量が完走タイムに影響か? サブスリーは“走りながらの補給”が有意に多い

セビージャマラソン参加者の栄養素摂取量と完走タイムとの関連を検討

この研究は、2022年のセビージャマラソン参加者を対象に行われた。セビージャはスペイン南部の都市で、ここで開催されるマラソンンには多くの市民ランナーが参加する。コースが平坦なこと、気象条件が良いことなどから好記録が出やすい大会として知られている。

研究参加者は、過去2年以内にマラソン大会への出場経験があり、大会主催者からメール送信されたインフォームドコンセントに書名した18歳以上の成人160人。主な特徴は、年齢42.2±7.3歳、男性87.5%、BMI22.9±2.1、競技歴9.2±6.2年。競技レベルは、地域大会レベルが99人(61.9%)、国内大会または国際大会レベルが57人(35.6%)と、広い範囲に分布していた。この大会における走行記録は、121~180分が37人(23.1%)、181~240分が99人(61.9%)、241分以上が24人(15.0%)だった。

競技前・競技中・競技後の栄養素摂取量は、精度検証済みの自記式質問票「持久系競技のための栄養摂取質問票(Nutritional Intake Questionnaire for Endurance Competitions;NIQEC)で把握した。

競技前・競技中・競技後の栄養素摂取量と、走行タイムおよび競技レベルの関連

栄養素摂取量は、前記三つの走行タイムカテゴリー別および競技レベル別に、競技前・競技中・競技後の3時点で比較された。

競技前:走行タイムや競技レベルで栄養素摂取量に有意差なし

競技開始1時間前の摂取量の平均は、水分7.2±4.1mL/kg、エネルギー量4.6±7.0kcal/kg、炭水化物0.8±0.6g/kg、タンパク質および脂質は各0.1±0.1g/kg、ナトリウム4.6±4.7mg/kgであり、カフェインは1.3±0.9mg/kgだった。

走行タイムカテゴリーの3群で比較したところ、すべて有意差はみられなかった。また、競技レベルの2群で比較した場合も、摂取量に有意差のある栄養素はなかった。

競技中:サブスリーランナーは炭水化物摂取量が有意に多い

競技中の摂取量の平均は、水分466.1±279.2mL/時、エネルギー量148.2±69.4kcal/時、炭水化物35.4±16.9g/時、タンパク質0.9±1.3/時、脂質1.4±5.1g/時、ナトリウム192.3±150.3mg/時、カフェイン56.6±49.4mg/時だった。

走行タイムカテゴリーの3群で比較したところ、すべて有意差はみられなかった。ただし、走行タイムが3時間未満(いわゆるサブスリー〈sub-three-hours〉)か否かで二分した比較では、炭水化物についてはサブスリー群の摂取量のほうが多く、有意差が認められた(p=0.011)。また、米国スポーツ医学会の長時間運動での炭水化物摂取量の推奨(30~60g/時)を満たしていた割合は、全体で49.0%と半数以下だったが、サブスリー群では69.4%であり、他群より有意に多かった(p=0.035)。

競技レベルの2群で比較した場合、国内・国際大会レベルは地域大会レベルより、脂質摂取量が有意に多かった(0.09±8.0 vs 0.07±2.1g/時)。エネルギー量(161.8±11.1 vs 141.6±6.2kcal/時、p=0.08)や炭水化物摂取量(38.6±2.7 vs 33.9±1.5g/時、p=0.107)、およびその他の栄養素の摂取量は有意差がなかった。

競技後:競技レベルの高いランナーは競技後のエネルギー摂取量が有意に多い

競技終了1時間での摂取量の平均は、水分14.7±7.9mL/kg、エネルギー量4.2±3.2kcal/kg、炭水化物0.80±0.5g/kg、タンパク質0.12±0.2g/kg、脂質0.06±0.1g/kg、ナトリウム2.4±3.9mg/kg、カフェイン0.52±0.2mg/kgだった。

走行タイムカテゴリーの3群で比較したところ、すべて有意差はみられなかった。

競技レベルの2群で比較した場合、国内・国際大会レベルは地域大会レベルより、エネルギー量(4.4±3.4 vs 3.4±3.1kcal/kg、p=0.031)、脂質(0.03±0.2 vs 0.01±0.1g/kg)、ナトリウム(2.0±3.9 vs 1.1±4.0、p=0.005)の摂取量が有意に多かった。炭水化物(0.80±0.6 vs 0.66±0.5g/kg、p=0.244)やタンパク質(0.06±0.1 vs 0.04±0.2、p=0.073)、およびその他の栄養素は有意差がなかった。

走行タイムと有意な相関のある因子の検討

次に、走行タイムを従属変数、年齢や性別、BMI、栄養素摂取量を独立変数とする解析を施行。その結果、高齢(r=0.244、p=0.002)、BMI高値(r=0.287、p=0.000)、性別が女性であること(p=0.000)は走行タイムの長さと正相関し、トレーニングの頻度や時間は逆相関していた(いずれもp=0.000)。

競技前の栄養素摂取量は走行タイムと有意な関連がなかった。競技中の栄養素摂取量に関しては、水分(r=0.241、p=0.002)が正相関した一方、エネルギー量(r=-0.150、p=0.061)や炭水化物摂取量(r=-0.155、p=0.054)は、有意水準には至らないが逆相関の傾向(摂取量が多いほどタイムが短い傾向)が認められた。

栄養カウンセリングを受けているランナーは約半数

このほかに、栄養カウンセリングを受けているか否かも調査され、コーチから受けているランナーが19.3%、スポーツ栄養士から受けているのが18.7%、その他のスタッフから受けているのが16.1%であり、45.8%はカウンセリングを受けていなかった。

栄養カウンセリングを受けていたランナーの完走タイムカテゴリーをみると、スポーツ栄養士から受けていたランナーでは121~180分という最も良好なカテゴリーに属する割合が高い傾向が見てとれる。詳しく述べると、完走タイム121~180分の37人のうち、スポーツ栄養士から栄養カウンセリングを受けていたランナーが25.0%と「カウンセリングを受けていない」を除いた中で最多を占め、コーチまたはその他のスタッフから受けていた群は各13.9%であった。また、完走タイム241分以上の24人のうち、スポーツ栄養士から栄養カウンセリングを受けていたランナーが占める割合は4.3%と最小だった。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutritional Intake and Timing of Marathon Runners: Influence of Athlete’s Characteristics and Fueling Practices on Finishing Time」。〔Sports Med Open. 2025 Mar 16;11(1):26〕
原文はこちら(Springer Nature)

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