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競泳パフォーマンスに効果があるサプリは? システマティックレビューとメタ解析

競泳のパフォーマンスに対するサプリメント摂取の効果を、最もエビデンスレベルの高い研究手法である、システマティックレビューとメタ解析で検討した結果が報告された。クレアチンは有意な効果が証明され、その他のサプリについては全体としては非有意という結果が示されている。

競泳パフォーマンスに効果があるサプリは? システマティックレビューとメタ解析

競泳に役立つサプリをシステマティックレビューとメタ解析で検討

スポーツでは競技レベルが高いほど選手間のパフォーマンスが拮抗しており、わずかな差が成績を大きく左右する。そのため多くのアスリートが、パフォーマンス上有利な可能性のあるサプリメントを摂取しており、とくに競泳選手はその割合が高いという報告もある。

競泳のパフォーマンスに対するサプリ摂取の効果を検証した研究は少なくない。しかし今回取り上げる論文によると、それらの研究を統合して解析する、システマティックレビューとメタ解析はこれまで実施されておらず、本報告が初めてだという。なお、システマティックレビューとメタ解析は、科学的エビデンスを検証する手法として、最も信頼性の高い手法と位置づけられている。

2023年2月1日までに報告された論文から23件の研究を特定

システマティックレビューとメタ解析のためのガイドライン(PRISMA)に準拠して、Dialnet、Directory of Open Access Journals、PubMed、SciELO、Scopus、SportDiscusという6種類の文献データベースに、2000年から2023年2月1日までに収載された論文を対象とする検索を実施。包括条件は、プールでの競泳アスリートを対象に、パフォーマンスへの影響をプラセボ対照のタイムトライアルで検証して、英語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語のいずれかで執筆されている論文。プール以外の環境での試験、プラセボ対照でないものなどは除外した。

サプリメント、エルゴジェニックエイド、水泳などのキーワードを用いた検索で3,036報がヒットし、重複削除後に2名の研究者が独立してスクリーニングを行い92報に絞り込み、全文精査の結果30件の研究の報告を適格と判断した。ただし7件は解析に必要なデータを入手できなかったため、23件をレビューの対象として抽出した。

抽出した研究の特徴

23件の研究の参加者数は合計422人で、7件は男性のみ、3件は女性のみを対象とし13件は男女双方が含まれていた。全体として61.8%が男性だった。競技レベルは、95人(22.5%)が国際/エリートレベル、84人(19.9%)が地域/国内レベル、20人がディビジョンI、60人がディビジョンIIの学生アスリート、35人がその他の学生アスリート、38人が学生でない競技スイマー、90人がトレーニングスイマー。

介入に用いられていた最も多いサプリはクレアチンであり、6件の研究に使用されていた。次いでビート根ジュースが4件、β-アラニン3件、カフェイン2件、L-アルギニン/L-シトルリンが2件、重炭酸ナトリウム(重曹)2件で、そのほかにプロバイオティクスや米胚芽などが単一の研究で検討されていた。なお、3件の研究では複数のサプリメントの併用効果が検証されていた。

タイムトライアルに使用された距離は25~800mの範囲で、最多は100mであり9件で実施されていた。

メタ解析でクレアチンの有意な効果が示される

介入試験の件数が3件以上あるサプリについてはメタ解析が実施された。

クレアチン

クレアチンは6件の研究で、距離の異なる14の条件が試行されており、それらのうちSelsbyら(米国)が2003年に報告した50ヤード、100ヤードではクレアチン摂取によってプラセボよりも、タイムトライアルの記録を有意に短縮することが報告されていた。メタ解析においても、クレアチンの優位な効果が認められ、研究間の異質性も低かった(効果量〈g〉=-0.46〈95%CI;-0.75~-0.17〉、p=0.002、異質性〈I2〉=11%)。

感度分析として、各研究報告を一つずつ除外した解析を繰り返したところ、Selsbyらの研究を除外した場合のみ、p値が0.06とわずかに非有意となった。

クレアチン以外

一方、ビート根ジュース(g=-0.14〈-0.49〜0.20〉、p=0.42、I2=0%)、β-アラニンと重炭酸ナトリウム(g=-0.15〈-0.45〜0.14〉、p=0.31、I2=0%)、カフェイン(g=-0.08〈-0.47〜0.32〉、p=0.70、I2=0%)は、プラセボと比較してパフォーマンスに有意な影響を示さなかった。また、それらを用いた試験の中で、有意な介入効果を示した研究はなかった。前記と同様の感度分析により、異なる結果(有意)となったケースはなかった。

L-アルギニン/L-シトルリン、プロバイオティクス、米胚芽については、研究件数が3本に満たなかったため、メタ解析は実施されなかった。

競泳におけるサプリの効果の確認には、さらなる研究が必要

バイアスリスクを評価した結果、エビデンスとしての確実性は、クレアチン、ビート根ジュース、β-アラニンと重炭酸ナトリウム、カフェインについては中等度と判定され、その他は非常に低いと判定された。

まとめると、メタ解析からはクレアチンのみ、競泳パフォーマンス上の有意な効果が示された。ただし論文ではメタ解析の結果以外に、各研究報告の定性的分析もなされている。それらの総括として、クレアチン以外のサプリについて以下のように述べられている。

「重炭酸ナトリウムとβ-アラニンは、解糖系への要求が高い距離においてパフォーマンスを向上させる可能性がある。一方、カフェインは運動の60分前に3~6mg/kgの用量で投与すると効果的と言える。ビート根ジュースなど、その他のサプリメントの潜在的なエルゴジェニック効果を確認するには、さらなる研究が必要とされる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Sport supplementation in competitive swimmers: a systematic review with meta-analysis」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2025 Dec;22(1):2486988〕
原文はこちら(Informa UK)

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