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クレアチンの有害事象発生率はプラセボと同等 約700件の臨床試験や有害事象報告のデータ解析

クレアチンサプリメントの安全性を、これまでに報告された700件近くの臨床試験や世界各国の有害事象報告データベースを統合して検討した結果が報告された。また、ソーシャルメディア(SNS)上での発言を分析し、クレアチンサプリに対する懸念を述べる人の存在についての検討も行われている。結論としては、クレアチンサプリ摂取後の有害事象の発生率はプラセボ摂取後と差がないこと、SNS上の発言は概して中立的だが、強い肯定を主張する意見に比較して強い否定的意見の主張の割合が多いことなどが報告されている。

クレアチンの有害事象発生率はプラセボと同等 約700件の臨床試験や有害事象報告のデータ解析

文献レビュー、有害事報告、およびSNS上の発言分析

食事由来のクレアチンの摂取量が少ないことと、健康リスクの高さが関連のあることが報告されている。例えば、未成年では低身長、低体重が多く、成人では体脂肪率の高さ、骨代謝低下、心血管疾患リスク、認知機能低下、抑うつ傾向、産科疾患などとの関連が示されている。また、クレアチンサプリメントとして最もエビデンスの豊富なクレアチン一水和物(creatine monohydrate;CrM)に関しては、それを用いた介入が健康上のメリットにつながるという報告も数多く存在している。

CrMは、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)が安全と認め、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、日本、韓国、中国などで販売が承認されている。それにもかかわらず、CrMの副作用に関する症例報告や、CrMは他の形態のクレアチンより有効性が低いという主張が、主としてインターネット上には存在している。クレアチンとともに摂取された他のサプリメントによる有害事象がクレアチンによるものとして報告され、後に誤りであることが明らかになったケースも複数ある。これらの誤情報のために、CrMサプリによる恩恵が期待される人たちの間で、安全性に関する懸念が未だに認められる。

以上を背景としてこの研究では、(1)過去に実施された臨床研究の包括的レビュー、(2)世界各国の有害事象に関する公的データの分析、という二つの手法によりクレアチンの安全性を再評価するとともに、(3)SNS上のクレアチンに関する記載に基づく感情分析を行った。以下に、それぞれについて要点を紹介する。

臨床研究の包括的レビュー

システマティックレビューとメタ解析のガイドラインであるPRISMAに則して、PubMedを用いて「クレアチン」および「サプリメント」をキーワードとして検索。ヒットした3,445報から、クレアチンを含まない研究、動物モデルでの研究、レビュー論文、メタ解析、特許関連文献、参照文献が示されていない報告を除外し、1,113報からヒトを対象とする研究を抽出。このうち、クレアチン摂取群/条件のデータは685件(研究参加者数の合計1万2,839人)、プラセボ群/条件のデータは652件(同1万3,452人)だった。

ほぼすべての研究(95%)がクレアチン一水和物(CrM)を用いて検討しており、用量は平均0.166g/kg/日(約12.5g/日)、投与期間は64.7日、最も長いものは14年間だった。

有害事象は、プラセボ群では13.2%の研究で、クレアチン群では13.7%の研究で報告されており、両群間に有意差は認められなかった(p=0.776)。合計で35種類の有害事象が報告されていて、それらを個別に比較した場合、消化器症状が報告されている研究において、その発現頻度はプラセボ群4.3%に対してクレアチン群は4.9%(p<0.001)、筋肉痛・痙攣が報告されている研究において同順に0.9%、2.9%、(p=0.008)であり、クレアチン群で有意に多かった。ただし、すべての研究を統合した解析では、消化器症状(p=0.820)、筋肉痛・痙攣(p=0.085)であり、有意差は消失した。

なお、その他、33種類の有害事象の発現率については、両群間に有意差がなかった。また、すべての有害事象を統合した発現率は、プラセボ群4.21%、クレアチン群4.60%であり、有意差がなかった(p=0.828)。

有害事象の公的データの分析

米FDA食品安全応用栄養センター(CFSAN)の有害事象報告システム(CAERS)、カナダ有害反応監視オンラインデータベース、オーストラリア保健高齢者ケア省医薬品管理局、欧州医薬品有害反応報告データベースなどを用いて、クレアチンの有害事象を検索。これらは因果関係の検討には情報が十分ではないが、2,840万件の報告のうちクレアチンに言及している有害事象は203件(0.00072%)にすぎなかった。

また、米国CAERSデータベースにおいて、クレアチンと他のサプリメントまたは医薬品とともに摂取・服用した際の有害事象が多くを占め、CrMだけに関連付ける解釈は困難だった。他のデータベースにおいても同様の傾向が認められた。

ソーシャルメディアの書き込みの感情分析

YouTubeが開発者向けに提供しているプログラミングインターフェースと、Twitter(現:X)アカデミック研究プログラムへのアクセスの許可を得て、それらのデータの機会学習による分析を行った。YouTubeのコメントについては2011年4月~2025年2月まで、Twitterについては2007年2月~2021年7月までの期間を対象とした。

YouTube動画からは、「クレアチン」という単語を含む12万9,782件のコメントが収集された。コメントの大部分は強い感情を示さず、情報提供を目的としているものだった。ただし、推定された感情の強さが「強い」または「非常に強い」と分類されたコメントに限ると、クレアチンに対する否定的な感情が優勢だった。

Twitterについてもやはり大半は中立的なツイートであって、強い肯定的感情(0.69%)と比較して強い否定的感情(2.09%)の出現率が高かった。

クレアチン一水和物(CrM)は、対象を問わず忍容性が高い

以上を基に著者らは、「文献レビューから、CrMサプリメントはプラセボと比較して、評価された35種類の有害事象の発現率を増加させないことが明らかになった。また、世界各国の有害事象報告でクレアチンに言及されることはまれであり、ほとんどは他のサプリメントや医薬品との同時摂取に関連していて、クレアチンの臨床試験では観察されていない、無関係の症状が報告されている。そして感情分析では、一般人口のうちごく少数の人が、クレアチンに対して強い否定的な見方をしている可能性が示唆された」と総括。結論として、「これらの調査結果は、CrMが小児から高齢者、および、医学的に管理されている患者集団において忍容性が高いことを示している」と述べている。

なお、一部の著者が、クレアチン関連企業との利益相反に関する情報を開示している。

文献情報

原題のタイトルは、「Safety of creatine supplementation: analysis of the prevalence of reported side effects in clinical trials and adverse event reports」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2025 Sep;22(sup1):2488937〕
原文はこちら(Informa UK)

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