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1日20分の中~高強度運動が位相角減少を防ぐ? 国内地域在住高齢者の横断研究

国内在住の高齢者を対象に、位相角(phase angle;PhA)と身体活動状況との関連を検討した結果が報告された。中~高強度運動(moderate-to-vigorous intensity physical activity;MVPA)とPhAとの間に有意な関連が認められたという。奈良学園大学保健医療学部リハビリテーション学科の中島大貴氏らの研究によるもので、論文が「Healthcare」に掲載された。良好なPhAを予測するMVPAの最適なカットオフ値は、1日19.7分と示唆されるとのことだ。

1日20分の中~高強度運動が位相角減少を防ぐ? 国内地域在住高齢者の横断研究

地域在住日本人高齢者の身体活動量とPhAの関連を探る横断研究

体組成の評価に用いられている非侵襲的な検査である生体電気インピーダンス分析法では、PhAの評価も可能。PhAは細胞の健康状態を表すとされ、PhAの低さは高齢者のフレイルや死亡リスクの高さと関連することが報告されている。近年、このPhAの維持・改善に身体活動が重要であることが指摘されるようになってきた。しかし、そのエビデンスはまだ少なく、これまでに示されているデータは交絡因子の影響が十分調整されていないことが多い。また、良好なPhAを予測する身体活動量のカットオフ値も明らかになっていない。以上を背景として中島氏らは、地域在住日本人高齢者を対象とする横断研究によって、これらの点を検討した。

研究対象と評価項目

研究対象は、地域包括支援センターの協力で実施した健診受診者から募集された。65歳未満、要介護・要支援認定を受けている人、脳血管疾患や整形外科疾患の既往者などを除外した72人が研究に参加。このうち5人は、後述する身体活動量評価のための三軸加速度計の装着時間が不十分だったため除外し、解析対象は67人となった。

身体活動量の評価

身体活動量は、1週間にわたって三軸加速度計を1日あたり少なくとも10時間身に着けて生活してもらい把握した(入浴時等を除く)。なお、研究期間中、加速度計のモニターには時刻しか表示されない(歩数はわからない)ように設定した。

取得されたデータは1.6~2.9METsを低強度身体活動(light-intensity physical activity;LPA)、3.0METs以上をMVPAと定義し解析に用いた。

位相角(PhA)の評価

PhAは、生体電気インピーダンス分析法により測定。先行研究の報告を基に、男性は4.95°以下、女性は4.35°以下をPhA不良とした。

その他の共変量

PhAに影響を及ぼし得る因子として、年齢、BMI、栄養状態、筋力(握力)、歩行速度、バランス能力、骨格筋量指数(skeletal muscle mass index;SMI)、および筋肉の質を評価した。

これらのうち栄養状態の評価には、低栄養の国際的な診断基準である「Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)」を用いた。筋肉の質は利き足の大腿直筋の筋輝度で評価した。

MVPAはPhAと独立して関連する

解析対象者は年齢78.3±5.5歳、女性83.6%、BMI22.6±3.4、SMI5.9±0.8、握力22.1±6.1kgであり、44.8%が独居者で、11.9%は低栄養と判定された。身体活動量については、低強度身体活動(LPA)が346.3±84.0分/日、中~高強度身体活動(MVPA)が38.0±23.2分/日であり、PhAは4.4±0.6°だった。

PhAを従属変数、身体活動量を含む因子(年齢や性別、BMI、SMI、栄養状態、握力、歩行速度、バランス能力、筋肉の質)を独立変数とする多変量回帰分析を施行。その結果、MVPAのみがPhAと独立して関連する因子として抽出された(β=0.256、p=0.022)。LPAには有意な関連が認められなかった(β=-0.113、p=0.341)。

良好なPhAを予測するMVPAのカットオフ値は19.7分/日

ROC解析により良好なPhAを予測するためのMVPAのカットオフ値を検討したところ、19.7分/日が最適な値であることが示された(AUC0.653、p=0.032、感度0.906、特異度0.429)。

高齢者のPhAの維持・改善にはMVPAを増加させる支援が必要

以上を基に著者らは、「国内の地域在住の高齢者におけるPhAとMVPAとの間に有意な関連のあることが明らかになった。この結果は、高齢者のPhAを維持・改善するために、MVPAを増加させる支援が必要であることを示唆している。その支援に際して、1日19.7分以上のMVPAが一つの目安になるかもしれないが、精度には疑問も残るため今後も検討が必要である」と結論づけている。

なお、多変量回帰分析からは、栄養状態やバランス能力、歩行速度などはPhAの独立した関連因子として抽出されなかった理由について、「本研究の対象者の多くが健康であって、低栄養の該当者がわずかであり、バランス能力や歩行速度も大半が満点に近いスコアであったことが、統計解析の結果に影響を及ぼした可能性がある」との考察が加えられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Relationship between Phase Angle and Physical Activity Intensity among Community-Dwelling Older Adults in Japan: A Cross-Sectional Study」。〔Healthcare (Basel). 2024 Jan 10;12(2):167〕
原文はこちら(MDPI)

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