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運動直後の勉強で効率よく成績が上がる? 勉強と身体活動の効果に関するメタ解析

身体活度の学業成績に対する急性効果を検討した研究報告を対象に行われた、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。1回の身体活動だけで、数学や言語関係テストの成績が有意に上昇するという関連が認められたという。ただし、報告間の不均一性が大きいため、慎重な解釈が求められるとのことだ。

運動直後の勉強で効率よく成績が上がる? 勉強と身体活動の効果に関するメタ解析

運動は学業成績にどのくらい影響するのか?

スポーツなどの身体活動が子どもたちの学業成績に対してプラスに働く可能性は、既に複数の研究報告から示唆されている。ただし、それらの研究の結果が一致しているかというと、そうとは言い切れず十分な一貫性は認められない。また、身体活動を多く行っているという習慣と学業成績との関連を評価した研究が多く、運動そのものの直接的な影響は十分検討されていない。つまり、運動の学業成績に対する慢性効果に比べて、急性効果はあまりよくわかっておらず、これまでのところシステマティックレビューも行われていない。

これを背景として、この論文の著者らは、子どもたちの身体活動の学業成績に対する急性の影響を分析すること、および、そのような急性の効果に影響を及ぼす因子を探ることを目的とした、システマティックレビューとメタ解析を行った。

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文献検索の方法と解析対象研究の特徴

システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に準拠し、PubMed、Web of Science、SPORTDiscus、PsycINFOという文献データベースに2023年1月11日までに収載された論文を対象として、2人の研究者が独立して検索を行った。また、必要に応じて検索された論文の参考文献もハンドサーチにより検索し、採否の検討対象に含めた。採否の意見の不一致は、3人目の研究者との討議により解決した。

包括基準は、5~17歳の小児・未成年を対象に身体活動の学業成績に対する急性効果を対照群・条件を置いて対比で検討し、英語またはスペイン語で執筆され、査読システムのあるジャーナルに掲載された論文。定性的研究や症例報告、ケースシリーズ、灰色文献は除外した。

重複削除後の5,723報をスクリーニングし45報に絞り込み、全文精査により9報を適格と判断した。これにハンドサーチによる2報を追加し、計11件の研究報告をレビューの対象とした。

身体活動の介入時間は20分が最多

それぞれの研究の参加者数は18~244人の範囲で合計803人であり、43%が女子(2報は性別に関する情報がなし)、年齢範囲は6~16歳で、1件の研究は対象の半数が注意欠陥多動障害のある子どもだった。

身体活動の介入としては、時間は4~30分の範囲で、20分という設定が多かった。身体活動の種類は8件が有酸素運動であり、そのほかには筋力トレーニング、および有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせなどが行われていた。身体活動の強度は最大心拍数の50~85%の範囲が多く、複数の強度で介入し比較した研究も存在した。

身体活動の種類や強度、場所にかかわらず、学業テストへの急性効果が確認される

抽出された研究では、おもに数学と言語のパフォーマンスの評価がなされており、2件の研究では行動制御への影響が評価されていた。これらのうち、数学パフォーマンスと言語パフォーマンスについてはメタ解析が行われている。

数学パフォーマンスへ有意なプラスの影響

11件の研究のうち9件で数学テストや算数(四則演算)テストへの影響が検討されていた。単変量メタ解析では、数学テストの成績に対して単回の身体活動介入による有意な急性効果が認められた(効果量〈Hedge's g〉=0.34〈95%CI;0.19~0.48〉、p<0.001)。ただし四則演算テストに対する影響は非有意だった。両者を統合して評価した数学のパフォーマンスへの影響は有意だった(効果量g=0.31〈0.18~0.44〉、p<0.001)。

多変量メタ解析の結果も、数学のパフォーマンスに対して有意なプラスの影響が観察された(効果量g=0.29〈0.18~0.44〉、p<0.001)。研究間の異質性の指標であるI2統計量は28.92%であり、中程度の異質性が認められた。なお、数学テストおよび四則演算テストごとの多変量解析は行われていない。

言語パフォーマンスに対しても有意なプラスの影響

11件の研究のうち3件でスペリングやリーディング、読解力(sentence comprehension)テストへの影響が検討されていた。単変量メタ解析では、リーディングテストの成績に対して単回の身体活動介入による有意な急性効果が認められた(効果量g=0.41〈0.07~0.76〉、p=0.018)。ただしスペリングや読解力のテストに対する影響は非有意だった。両者を統合して評価した言語パフォーマンスへの影響は有意だった(効果量g=0.21〈0.04~0.38〉、p=0.020)。

多変量メタ解析の結果も、言語パフォーマンスに対して有意なプラスの影響が観察された(効果量g=0.28〈0.09~0.47〉、p=0.004)。研究間の異質性の指標であるI2統計量は47.87%であり、やや高い異質性が認められた。なお、スペリング、リーディング、読解力それぞれの多変量解析の結果は、すべて非有意だった。

身体活動介入の時間の長さや種類、強度、介入場所、評価のタイミング(学業テストを身体活動終了後20分以内に行ったか否か)などで層別化したサブグループ解析からは、有意な交互作用は認められず、効果に影響を及ぼす因子は特定されなかった。

以上に基づき論文の結論は、「身体活動を1回行うだけで、子どもたちの学業成績を向上させることができる可能性が示された。教育現場において身体活動が補完的なツールとして機能する可能性がある。ただし、解析対象とした研究の不均一性のため、この結果の解釈には慎重さが求められる」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Acute effect of physical activity on academic outcomes in school-aged youth: A systematic review and multivariate meta-analysis」。〔Scand J Med Sci Sports. 2023 Aug 25〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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