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子どもがスポーツに時間を使っても学業成績に悪影響はなく、むしろ成績アップの可能性も

スポーツに熱中している子どもをもつ親の中には、勉強がおろそかになるのではないかと懸念している人がいるかもしれない。しかし、過去の研究を総合的に検討した結果、そのような悪影響はなく、スポーツがむしろ学業成績に好影響を及ぼす可能性があるとする論文が報告された。

子どもがスポーツに時間を使っても学業成績に悪影響はなく、むしろ成績アップの可能性も

「運動する子は勉強が苦手」は都市伝説?

習慣的な身体活動が多くの健康上のメリットと密接に関係していることは広く知られている。成人ばかりでなく小児期においても身体活動が、適正な体重、運動スキル、自尊心、および社会規範に即した行動にプラスに働くことが報告されている。しかし多くの先進諸国では、子どもの身体活動量の減少が生じていることも報告されている。

この現状に対して、小学校などで体育授業を強化するなどの政策施策の必要性が指摘されているが、現実はむしろ逆で、体育を減らし学術科目の時間を増やすという変化もみられる。このような変化は当然のことながら子どもたちの身体的健康に悪影響を及ぼし、潜在的には心理的健康にも悪影響を及ぼす可能性がある。

子どもたちの身体活動量と学業成績の関係はこれまでにも少なくない研究が行われてきている。しかし、身体活動量を学校の正規授業の時間のみで評価するか、課外授業も含めるのか、さらには学校外で行うスポーツ活動も含めるのかという点が十分考慮されずに検討されていたり、研究対象に含める集団が異なっていたりするために、一貫した結論が得られていない。また、学業成績に影響を及ぼさない、もしくは学業成績に好影響を与える身体活動量とはどの程度なのかも不明。

今回紹介する研究では、これまでに報告されてきた研究の特徴の違いに留意しながら、子どもの身体活動の学業成績への影響の有無や、適当と考えられる身体活動の時間、頻度、種類、強度などの特定が試みられている。

システマティックレビューの手法と解析対象研究の特徴

この研究は、システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項(PRISMA)に準拠して行われた。2012年3月~2022年6月に、Science Direct、PubMed、SPORTDiscusという三つの文献データベースに収載された、査読システムのある雑誌に英語で執筆されたこのトピックに関する論文のうち、研究対象が6~14歳の小児であるものを検索。ヒットした425件の論文から19件を適格と判定し採用した。

国別ではオランダが3件で最多であり、次いで米国とノルウェーが各2件、スペイン、スイス、デンマーク、チリ、オーストラリア、台湾、南アフリカ、イタリア、中国、カナダ、ドイツが各1件だった、日本発の研究は含まれていない。

研究参加者は22~1,181人の範囲で平均357人、合計6,788人、平均年齢が記されているのは16件で8.01~11.35歳の範囲であり、平均は9.26歳だった。性別は男児50.2%、女児49.8%とほぼ等しかった。63.2%の研究は障害や疾患のない小児を対象としており、36.8%の研究は何らかの障害や疾患を有する小児を含んでいた。

身体活動の影響は、学力と認知機能という二つの側面から評価されていた。

身体活動が学力に及ぼす影響

身体活動が学力に及ぼす影響は、9件の研究で検討されていた。そのうち2件は有意な肯定的影響を報告し、2件は非有意、他の5件は条件により異なる結果を示していた。

有意な結果を示していた研究の一つは、体育の授業、休み時間の積極的な身体活動などを通じて多面的に身体活動量を増やすという介入を行ったもので、通常の体育授業のみを受けた児童よりも学力が優れるという結果に結びついたと報告している。また、中~高強度程度の身体活動の増加が学業成績の向上につながったとする研究もある。

運動強度を変えて三つの条件で介入した研究では、興味深いことに、高強度運動群でのみ、有意な結果が得られたと報告されている。別の研究では、中~高強度運動と数学およびスペリングの学力との間に有意な正の相関があるとしている。ほかの研究でも、8~9歳の子どもで数学と読解の成績が、通常の学術授業を受けている子どもより身体活動を積極的に行うプログラムの子どものほうが優れているとしていた。また、ベースラインの計算スコアが最も低かった群で、身体活動介入により有意な成績向上が認められたとする研究も存在する。

身体活動が認知機能に及ぼす影響

身体活動と認知機能の関連を検討した研究は14件で、そのうち6件が有意な肯定的結論を示し、4件は非有意、他の4件は条件により異なる結果を示していた。

有意な結果を示していた研究の一つは、格闘技(空手と総合格闘技)を通して身体活動量を増やすと、対照条件と比較して実行機能のスコアが有意に向上するとしていた。そのほかにも、卓球による身体活動量と実行機能が正相関すること、多目的スポーツへの参加で26種類の認知機能指標のうち8種類が有意に向上することなどが報告されていた。

スポーツは、少なくとも学業成績にマイナスの影響をもたらさない

以上を含む多くの考察の結果として、論文の結論は以下のようにまとめられている。

「子どもたちの身体活動と学業成績との関連は、主として正相関、もしくは有意ではないことが示唆された。重要なことは、身体活動が学業成績に悪影響を及ぼさず、むしろ向上させる可能性がある点である。高強度運動のほうが影響が強く、1回あたりの最適な継続時間は30~60分の可能性があるが、さまざまなスポーツが学業にプラスの効果をもたらし得る」。

文献情報

原題のタイトルは、「The Effects of Physical Activity on Academic Performance in School-Aged Children: A Systematic Review」。〔Children (Basel). 2023 Jun 5;10(6):1019〕
原文はこちら(MDPI)

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