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幼稚園教諭に対する介入で園児の食事・運動習慣が健康的に変化 クラスター比較試験

幼稚園児が健康的な生活習慣を身に付ける手段として、幼稚園教諭に教育を行うという介入の効果が報告された。比較対照群の幼稚園児に比べて、持参する食べ物の内容が健康的になったり、水分摂取量が増えたりといった有意な変化が認められたという。イスラエルからの報告。

幼稚園教諭に対する介入で園児の食事・運動習慣が健康的に変化 クラスター比較試験

幼児の行動を変えるために教育者に対して介入する

多くの先進国で肥満解消が社会的な課題となっている。成人の肥満を招く非健康的な生活パターンが、小児から引き継がれやすいことはよく指摘されることであり、小児肥満を予防・改善する戦略が将来の肥満成人の抑制につながると考えられている。ただし、子どもに対してどのような介入を行えばよいのか、参考となる知見はほとんどない。

一つの考え方として、子どもは1日の大半を幼稚園や学校で過ごすため、家庭での介入のみでなく、それらの施設での介入も必要であるとする主張がある。そこで今回紹介する論文の研究では、幼稚園教諭と幼稚園児に対して介入を行う群と、通常の幼児教育を継続する群という2群を設け、クラスター間の比較対照試験が行われた。

幼稚園75施設を2群にクラスター化して介入効果を比較

研究対象は、イスラエル国内の幼稚園で、介入群は42の幼稚園であり園児数は1,048人(男児55.7%)。それらの幼稚園の幼稚園教諭に対して、1年間にわたり後述の健康教育のための介入が実施された。比較対照群は32の幼稚園であり園児数は842人(男児56.4%)。両群間に、1クラスあたりの園児数、園児の男女比、教師の経験年数(14.3±9.3年)に有意差はなかった。

幼稚園教諭に対して1年間にわたって栄養や身体活動などについて教育

幼稚園教諭に対する介入は、1年間にわたる56時間のコースとして行われた。セッションは、健康教育、栄養、身体活動、論理的スキルという四つに大別されていた。これらの中で栄養については、成長における栄養の重要性、主要栄養素と微量栄養素の役割、食物ピラミッド(地中海食)、食品グループ・分量・バランス、食べ物の選択と自制心、水分と体液のバランスの重要性といった内容で教育が行われた。また身体活動については、健康な成長と慢性非感染性疾患の予防における運動の役割、活動とエネルギーバランス、幼稚園での活動を促進するための新しい方法、「Paalton(後述)」の使い方といった教育が行われた。

介入群では園児に対しても、水分摂取量を記録し、教室内の壁に名前とともにボトルの絵として、毎日どのくらい水分を飲んだかを張り出すなどの方法で教育を行った。身体活動については、本研究のために開発された「Paalton」と名付けられた、9種類の身体活動をイラストで表現したチャートを使い、運動後の感情を尋ねるといった手法によって身体活動を促した。

「Paalton」に含まれている運動は、歩行、階段昇降、幅跳び、ジャンプ、片足立ち、ボールのキック・ドリブル・スローイングなど。なお、「Paalton」はイスラエルで使われているヘブライ語で、「活動」を意味するという。

介入によって園児の食習慣と運動習慣が有意に変化

食事に関する変化

介入群の幼稚園の園児では、以下のように、介入の前後で水分摂取量や野菜・果物の摂取習慣に有意な変化が認められた。一方で対照群の園児では有意な変化は観察されなかった。

  • 幼稚園に果物を持ってくる園児の割合が44.0%から58.5%に増加し、野菜を持ってくる割合は25%から41.3%に増加(ともにp<0.001)。
  • おやつを持ってくる園児は19.1%から7.0%に減少(p<0.001)。
  • 水を持参する子どもの割合が39.0%から74.4%に増加(p<0.001)。対照群は46.9%から有意な変化なし。
  • 持参するサンドイッチの内容が改善。例えば、推奨される食材(チーズ、フムス〈ひよこ豆を使った料理素材〉、卵など)を用いたサンドイッチを持参する割合が65.7%から79.8%に増加(p<0.001)。一方で、チョコレートやジャムなどを使ったサンドイッチを持参する割合は30.2%から15.4%に減少した。

身体活動に関する変化

身体活動に関しては、介入後に以下のように、体調や感情の変化を表現できるようになるという違いが認められた。

  • 子どもたちは、運動によって「心臓の鼓動が激しくなった」、「体が熱くなってきた」、「だるさを感じた」、「何度も上り下りするのが大変だった」、「ジャンプすると足が痛くなる」、「たくさん跳べたので楽しかった」など、身体的側面に言及した。また47%の子どもは、感情的な言葉で自分を表現した。例えば、「もっとできる」などといった言葉により、運動の楽しさや自分の能力を口にした。また、「心臓の鼓動が2倍速くなった」などの数学・論理的な発言も認められた。
  • 71%の子どもが、激しい運動によるエネルギー消費を表す言葉を口にして、20%の子どもはそれに伴う楽しさについても言及した。

保護者に対しても介入効果が波及する

本論文の著者らは、小児肥満の予防のための介入は「早ければ早いほど良い」としている。そして、本研究で示された結果から、「幼稚園教諭への介入は、教育内容に対する直接的な効果があり、かつ子どもにも影響を与え、さらに保護者に対しても間接的に影響を及ぼすという、三つの経路で効果を発揮した」とまとめている。

また、この研究で実施した介入手法を、さらに拡大して適応することを提案。例えば、座位行動を減らすこと、口腔と歯の健康の維持、屋外での日光曝露への対策などにも応用できるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Developing Healthy Lifestyle Behaviors in Early Age—An Intervention Study in Kindergartens」。〔Nutrients. 2023 Jun 2;15(11):2615〕
原文はこちら(MDPI)

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