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サッカー選手のパフォーマンスが「グリコーゲン超回復」で向上 イランのトップリーグで検討

グリコーゲン超回復によって、エリートサッカー選手の試合におけるパフォーマンスが向上するという研究結果が報告された。GPSで計測した試合中の走行距離や走行速度などの多くの指標が、対照群より有意に優れていたという。イランで行われた研究。

サッカー選手のパフォーマンスが「グリコーゲン超回復」で向上 イランのトップリーグで検討

グリコーゲン超回復の効果を試合中のパフォーマンスで評価

1970年代初頭に、サッカー選手の試合中の主要なエネルギー源は糖質であるとの認識が定着した。体内の糖質は血液中にはごくわずかな量のみ存在し、多くは肝臓および筋肉のグリコーゲンとして蓄えられている。高強度運動によりグリコーゲンが枯渇すると、ATP(アデノシン三リン酸)産生が減少しパフォーマンスが低下する。アスリートの栄養に関してはいくつかのガイドラインが発行されており、それらは通常、持久力の維持等のために炭水化物の適切な摂取を推奨している。ただし、サッカー選手に特化した推奨は限られている。

一方、グリコーゲン枯渇を防ぐ栄養戦略の模索によって、グリコーゲン超回復という現象が存在し得ることが明らかにされた。これは、ある期間、高強度運動をしながら炭水化物の摂取量を減らしてグリコーゲンの貯蓄を減らした後に、運動強度を抑えながら高炭水化物食を摂るというフェーズに移行することで、グリコーゲンの貯蓄を一気に回復しようとする戦略であり、これによりベースライン(低炭水化物食開始前)のグリコーゲンレベルを超える貯蓄が得られる。ただ、これまでのところ、グリコーゲン超回復の効果は主にトレーニングや試合後の回復促進という視点で研究が行われてきており、試合のパフォーマンスへの影響を評価した研究は少ない。また、エリートレベルのアスリートでの知見はより限られている。

以上を背景として本論文の著者らは、イランのプロサッカーリーグ(プレミアリーグ)の選手を対象とする無作為化介入試験を行い、グリコーゲン超回復の試合中のパフォーマンスへの影響を検証した。なお、パフォーマンスへの評価は主としてGPSで計測可能な指標を用いた。サッカーの試合中のGPSデータの利用は既に一般的に行われており、欧州のチームの64%が利用しているとのことだ。

イランのプロサッカー選手を無作為に2群に分けて介入

研究対象者の適格条件は、イランプレミアリーグで過去5年以上プロとして活動しており、過去1年以内に筋骨格系の受傷歴がなく、過去半年以内にエルゴジェニック効果のあるスポーツサプリメントを利用していないこととされ、22人が対象となった。無作為に各群11人の2群に分け、1群をグリコーゲン超回復を行う群(carbohydrate-loading group〈以下CL群〉)、他の1群は通常どおりの食事を続ける対照群とした。

CL群は28.4±3.0歳、BMI22.9±2.3、対照群は29.2±4.19歳、BMI23.2±3.2であり、研究期間中、両群は同一のトレーニングを行った。食事に関しては、本研究がトレーニングキャンプ中に実施されたため、すべて支給されたものが摂取された。また、支給するもの以外の摂取は禁止した。CL群では以下に示すように6日間の栄養介入が行われた。

グリコーゲン超回復のためのプロトコル

グリコーゲン超回復を行う群(CL群)では、最初の3日間は低炭水化物食のフェーズとした。初日は1.5g/kg/日、2~3日目は1g/kg/日で、トレーニングは最大心拍数の50~95%を目安に高強度の負荷となるように構成された。続く4~6日は高炭水化物食のフェーズとして、炭水化物摂取量は4.5~6.5g/kg/日、トレーニング強度は最大心拍数の40~70%を目安に調整した。翌7日目の試合日の炭水化物摂取量は7.5g/kg/日とした。

一方、この間、対照群は炭水化物5~6g/kg/日の習慣的な食事が続けられた。

炭水化物の総摂取量はCL群のほうが少ないが、試合パフォーマンスは高い

6日間の炭水化物摂取量は、グリコーゲン超回復群(CL群)のほうが少ない

6日間合計の炭水化物摂取量は、グリコーゲン超回復群(CL群)が1,925g、対照群は2,905gであり、CL群のほうが有意に少なかった。タンパク質と脂質の摂取量は、有意差がなかった。なお、6日間での炭水化物摂取量のエネルギー比は同順に49%、57%であり、CL群のほうがむしろ低値だった。

試合当日は全員が8時に朝食、11時に昼食を摂取。イランのプレミアリーグの慣習に従い、14時に試合がスタートした。

試合パフォーマンスの指標の大半がCL群が優位という結果

GPSで計測された指標の結果は以下の通り。なお、本研究では介入前にも同様の手法で評価がなされ、その時点では評価したすべての指標に有意な群間差がなかった。ここでは介入後のデータのみを紹介する。

走行距離(km)は、CL群12.64±1.39、対照群8.22±1.13であり、CL群のほうが有意に高値だった(p=0.001)。最高走行速度(km/時)は同順に32.9±4.97、29.4±5.77(p=0.032)、4m/秒以上のスプリントの回数は121.45±11.23、62.06±4.69(p=0.001)、90秒以内に4m/秒以上のスプリントが行われた回数は81±19.57、60.81±20.18(p=0.001)であり、いずれもCL群のほうが有意に高値だった。

エネルギーコストやランニングバランスもCL群のほうが良好であることが明らかになった。ランニングバランスは疲労などによって生じるバランスの乱れの指標であり、その値が高いことは疲労をより増大すると考えられている。このほかに、メタボリックパワーと呼ばれる代謝指標は、CL群のほうが有意に低値を示した。著者によるとこの結果は、エネルギーコストを抑えながら高パフォーマンスが発揮されたことを意味するという。

試合前の炭水化物摂取がパフォーマンスに重要

以上をまとめると、評価した大半の指標について、CL群が優れることを意味する有意な群間差が観察された。論文には次のような趣旨の考察および結論が述べられている。

「グリコーゲン超回復を行った選手は対照群の選手に比べて、試合前6日間の合計の炭水化物摂取量は有意に少なかった。しかし驚くべきことに、試合中のパフォーマンスは対照群よりも優れていた。とくに走行距離と最高走行速度の差が顕著だった。我々の研究結果は、エリートレベルのサッカー選手は炭水化物を摂取することで、習慣的な食事を続けるのに比較して、より高い代謝効率とより軽い疲労で、より大きなランニングパワーを発揮できることを示唆している」。

文献情報

原題のタイトルは、「Improved physical performance of elite soccer players based on GPS results after 4 days of carbohydrate loading followed by 3 days of low carbohydrate diet」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2023 Dec;20(1):2258837〕
原文はこちら(Informa UK)

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