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ラグビー選手の引退後には変形性関節症、うつ病、アルコール多飲などが多発する可能性

エリートレベルで活躍した引退後ラガーマンの健康状態を調査した研究のスコーピングレビューが報告された。男子選手では、変形性関節症、うつ病、アルコール多飲などの健康障害が発生している可能性が浮かび上がったという。一方で女子選手についてはこのトピックに関する研究報告が、まだ存在しないとのことだ。

ラグビー選手の引退後には変形性関節症、うつ病、アルコール多飲などが多発する可能性

現役選手に比較して、引退後アスリートの健康問題に関するデータは少ない

高速で互いの全身を衝突させるラグビーは、あらゆるスポーツの中で最も受傷率が高い競技の一つとされ、とくに脳震盪、および靱帯損傷などの筋骨格系の傷害が多発する。また、現役のラグビー選手にはメンタルヘルス上の問題を抱えていることが少なくないことも報告されている。

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近年、頭部外傷の反復と神経変性疾患との関連に関する研究が進んだことで、現役選手でのこれらのリスクについては知見が蓄積されつつある。その一方で引退後の選手に発生する健康障害については、いまだ報告が少ない。これを背景として本論文の著者らは、引退後の元ラグビー選手の健康障害に焦点を当てた既報文献を抽出して総括する、スコーピングレビューを行った。

文献検索の手法

2022年9月22日に、スコーピングレビューのためのガイドラインであるPRISMA拡張版(PRISMA-ScR)に則して、MEDLINE、SPORTDiscus、PsycINFO、EMBASEという四つのデータベースを用い、英語、オランダ語、またはフランス語で執筆された調査報告を検索。検索キーワードには、「ラグビー」、「引退後」、「健康状態」を用いた。

573報がヒットし、重複削除後の444報をタイトルと要約に基づきスクリーニングして、残った53報を全文精査の対象とした。最終的に16報の研究論文を適格と判断しレビューの対象とした。

抽出された研究報告の特徴

16報の研究はすべて、男子選手のみを対象にしており、このトピックに関する女子選手対象の研究は存在していなかった。

研究参加者の出身国は、英国6報、オーストラリア4報、フランス2報、ニュージーランド1報などで、2報の研究には複数の国の元選手が参加していた。調査されていた健康障害のタイプは、メンタルヘルスが10報、筋骨格系と神経系が各6報、心血管系が2報で、多数の領域の健康障害を検討した研究も複数存在していた。婦人科領域の健康障害に関する研究はなかった。

元ラガーマンの健康障害のタイプ別にみた実情

論文では、健康障害を筋骨格系、心血管系、神経系および認知機能、メンタルヘルス、その他に分けて考察を加えている。要旨を以下に抜粋する。

筋骨格系

引退後の元ラガーマンの筋骨格系の健康障害については6報の論文が存在していた。

変形性関節症(osteoarthritis;OA)の有無は自己申告アンケートによって把握されており、その有病率は51~60%の範囲だった。非コンタクトスポーツの引退後のアスリート対象の研究では22%というデータが報告されていることから、引退後の元エリートラグビー選手のOA有病率は有意に高いと考えられた(p<0.05)。

疼痛の有病率に関しては、一般集団対照研究の32%という値に比較し、引退後のラグビー選手は51%であり、有意に高かった(p=0.01)。生活に支障をきたすレベルの疼痛で比較しても、有意差が認められた。

慢性的な整形外科的問題(具体的な定義は示されていない)の有病率は、背景因子の一致する対照群が3%に対して、引退後のラグビー選手は14%だった(群間の有意差に関する情報は示されていない)。

心血管系

引退後の元ラガーマンの心血管系の健康障害については3報が存在していた。元エリート男子ラグビー選手の心疾患の有病率は18%、高血圧は28~32%という数値が認められた。ただし、比較対照群のデータは示されていない。

一方、心血管障害の有病率は2%であり、年齢と社会的剥奪指標が一致する対照群では21%という報告がみられた。

神経系および認知機能

引退後の元ラガーマンの神経系および認知機能については6報が存在していた。

神経系

引退後の元エリートラグビー選手の神経疾患の有病率は3%との報告があり、他のスポーツで報告されている4%より低値だったが、有意差はなかった(p=0.763)。パーキンソン病については、元ラグビー選手で2%という数値がみられた。

認知機能

認知機能については、元ラグビー選手の経度認知機能障害の有病率が57%であり、他のスポーツの40%と比較して有意に高い(p=0.005)との報告があった。

メンタルヘルス

元ラガーマンのメンタルヘルスに関する報告は10報存在していた。うつ病や不安症、ストレス、苦痛、睡眠障害、大量飲酒、栄養行動、気分のいらつき、喫煙行動、薬物使用について報告されていた。一部のみ紹介する。

うつ病や不安症

うつ病または不安症の有病率は28%と報告されていた。ある研究では、元プロラグビー選手でのうつ病の有病率は49%であり、非コンタクトスポーツの引退後の21%に比べて有意に高いとされていた(p=0.001)。一方、他の研究では、エリートラグビー選手11%、アマチュアラグビー選手10%、非コンタクトスポーツ選手9.5%であり、有意差はないとしていた。

大量飲酒

大量飲酒の有病率は、24~59%と報告されていた。年齢と教育歴を一致させた対照群との比較では、元ラグビー選手の有病率のほうが有意に高いと述べられていた(p<0.01)。

論文の結論は、「本報告は、引退後のエリートラグビー選手の健康状態の有病率を示した初めてのスコーピングレビューである。引退後の女性エリートラグビー選手の健康状態に関する研究はみつからなかった。引退後の男子ラグビー選手では、OAなどの筋骨格系の健康状態や、うつ病、大量飲酒などのメンタルヘルス不調の有病率が高いことが判明した。引退したエリートラグビー選手、とくに引退後の女性選手の健康状態に関する、より多くの研究が求められる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Health conditions among retired elite rugby players: a scoping review」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2023 Aug 2;9(3):e001573〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group Ltd & British Association of Sport and Exercise Medicine)

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