新刊紹介「すごい音楽脳」 “頑張る”のではなく“楽しむ”ことでパフォーマンスが上がる!
音楽に気分を変える力があることは、多くの人が気付いているに違いない。ふだん音楽を聞きながらトレーニングしたり、試合前に音楽を聴くことをルーチンとしているアスリートも少なくない。このコーナーでも、既に何度か、スポーツと音楽に関する研究論文を取り上げてきた。
そんな音楽の秘めたパワーを総括した書籍が発行された。著者の宮﨑敦子氏は、東京大学先端科学技術研究センターの研究員であり、かつ、「Dr.DJ.ATSUKO」の名でDJとして活躍している異色の存在だ。同氏はこれまでに、認知症高齢者に対するドラムをたたくという簡単な音楽療法で認知機能が改善する可能性や、ドラム演奏時の腕の上がり具合で認知症の重症度を判定できること、さらに、ダンス・ボーカルユニットのTRFと高齢者向けのダンスを開発し、そのダンスによって認知機能や実行機能が改善することなどを報告してきている。いわば音楽と脳のスペシャリストだ。
本書には、そのようなバックグラウンドをもつ著者により、音楽を仕事や勉強、運動、コミュニケーションなどに生かすワザの数々が解説されている。「頑張るのではなく、楽しむ」ことが、それらのパフォーマンスを効率的に向上させるポイントだという。
本書の盛りだくさんの内容から、運動やスポーツに関係する部分を少し紹介しよう。
例えば、運動に認知機能低下抑制作用があることについては、多くのエビデンスが存在し、一般的にはウォーキングが推奨される。しかし、単に歩くだけよりも認知機能保護効果を高める手段があるそうだ。それは、より確実な有酸素運動になる歩行スタイルで、その一つはノルディックウォーキングであり、もう一つはダンス。歩行トレーニングよりもむしろダンスをしたほうが、歩行速度がアップするというデータもあるとのこと。
また、脳を活性化するには、聞きなれた曲ばかり聞くよりも、新しい曲を聞くほうがよいらしい。ただ、どんな音楽を聞けばよいのかわからないという人も多いだろう。そういう人のために本書は、著者オリジナルの曲をダウンロードできる仕組みになっている。
スポーツパフォーマンスの向上に最も重要なことは、もちろんトレーニングだが、そのトレーニングの質を支える要素として、栄養とともに音楽による脳の活性化にも着目してみてはいかがだろうか。
書誌情報
出版情報
タイトル:すごい音楽脳
著者:宮﨑 敦子(東京大学先端科学技術研究センター身体情報学分野 特任研究員)
出版:株式会社すばる舎
発行日:2023年10月29日
判型・ページ数:四六判・144ページ
価格:1,650円(税込)
本書の目次
CHAPTER1 音楽を使うと、効率的に頭がよくなる!
CHAPTER2 この曲を聴くだけで、作業のパフォーマンスが上がる!
CHAPTER3 前頭葉は、歌本カラオケで鍛えなさい!
CHAPTER4 脳と体を同時に鍛える「デュアルタスクトレーニング」入門
CHAPTER5 ドラム・タイコをたたくと、実行力とコミュニケーション力が高まる!
出版社(すばる舎)のサイトの情報より
本書では、世界的に数少ない「脳のリズム」についての研究をしている異色の脳科学者でありDJでもある著者が、音楽によってさまざまな脳のパフォーマンスが一瞬で上がるメソッドを最新のエビデンスとともにお伝えします。
リズムを感じる習慣が、頭脳と行動の「質」と「スピード」を変える!
本書でダウンロードできる「聴くだけで脳が覚醒する音源」を作業前に聴いたり、カラオケやダンスなどの軽い運動を生活に採り入れたりすることで、集中力・記憶力・読解力・実行力・身体能力・処理速度が向上するなど、仕事、勉強、コミュニケーション、スポーツ、アンチエイジング……さまざまなことにすぐ役立てることができる1冊です。