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eスポーツでも栄養は大事! 認知パフォーマンスと栄養、身体活動、睡眠との関連が明らかに

eスポーツアスリートも、身体スポーツのアスリートと同様に、栄養が重要であることを示す研究結果が報告された。微量栄養素の摂取量や野菜摂取量と認知機能が正相関すること、タンパク質摂取量の多寡で二分すると認知機能に有意差があることなどが明らかにされている。米国からの報告。

eスポーツでも栄養は大事! 認知パフォーマンスと栄養、身体活動、睡眠との関連が明らかに

eスポーツのパフォーマンスに影響し得る因子を網羅的に検討

eスポーツは急速な成長を遂げている新しいスタイルのスポーツで、2024年までに世界のeスポーツコンテンツ視聴者は6億人近くに達すると予想されている。eスポーツのパフォーマンスは高い注意力と認知機能によって支えられており、それらの能力が栄養や睡眠または身体活動習慣と関連したものである可能性が想定される。

実際、身体スポーツのアスリートでカフェインによるパフォーマンス向上作用は広く知られているのと同じように、eスポーツアスリートでもその作用を実証した研究報告もある。また、身体活動に関しては、一般的にeスポーツアスリートは座位行動の時間が長く身体活動量が少ないものの、成績の上位10%に入るeスポーツアスリートは、ゲームトレーニングにより多くの時間を充てていると思われるにもかかわらず、むしろ身体活動量が全体平均よりも多いというデータがある。

このように、eスポーツアスリートのパフォーマンスと関連のある因子を個別に検討した研究は既に多く報告されている。ただし、関連因子を網羅的に検討した研究はない。この研究では、栄養と身体活動、睡眠という三つの因子に焦点をあてて、eスポーツアスリートのパフォーマンスとの関連の有無を検討した。

研究参加者の募集方法と評価項目

Instagram、Twitter(現在はX)、Facebook、Discordなどのソーシャルメディアを介した募集に384人が応募。適格基準は、年齢が16~35歳で矯正視力が0.5以上ある、プロまたはエリートレベルのeスポーツアスリートとし、除外基準は斜視や色覚異常、網膜疾患などの眼科疾患、めまいを来す疾患、ペースメーカーの使用などとした。186人が研究開始前に同意を撤回し、77人が研究期間中に脱落。121人が研究を終了したが2人はデータ不十分のため、解析対象は119人だった。

参加者にはオンライン経由で、人口統計学的因子(年齢や性別など)、eスポーツ歴、睡眠障害の程度(ピッツバーグ睡眠質問票、スタンフォード眠気尺度)などについて回答してもらった。また、10日間にわたり24時間リコール法にて食事記録をつけてもらい、栄養素摂取量を評価。身体活動量と睡眠習慣は、8日間連続でウェアラブルデバイスを腕に着用して生活してもらうことで把握した。

視覚認知機能の評価には、注意力と視野、反応速度を計測する「Neuro Tracker X(NTx)」という3Dソフトを用いた。これは、3D画像空間を動く球体の中から一つだけ異なる色の球体をできるだけ速く視認するというもの。視認が成功すると次のセッションは球体のスピードが速くなり、制限時間内の視認が失敗すると次のセッションは球体のスピードが遅くなる。

多くの栄養素摂取量がパフォーマンスと有意に関連

解析対象の119人は、男性103人、女性16人。年齢は同順に、23.1±5.0、24.4±5.0歳、BMIは27.5±8.4、26.0±6.7であり、週に平均6.33日ゲームを行い、1回のプレー時間は4.82時間だった。

10日にわたり評価した摂取エネルギー量は1,852±698kcal/日、タンパク質79.9±32.9g/日、脂質76.2±30.8g/日、炭水化物210.8±91.1g/日で、水分摂取量は2,042±907mL/日だった。微量栄養素については、多くのアスリートが、マグネシウム、亜鉛、葉酸、オメガ6/オメガ3脂肪酸、ビタミンD、コリンについて、米国農務省・保健福祉省の「米国人の食事摂取基準」の推奨を満たしておらず、コレステロール、ナトリウム、飽和脂肪酸は推奨値を超えて摂取していた。

また、食品群としてみると、野菜、果物、全粒穀物、乳製品の摂取量が、推奨を満たしていなかった。

栄養素摂取量が視覚認知機能と有意に相関

微量栄養素と視覚認知機能(NTxスコア)との関連を検討すると、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム、亜鉛、セレン、チアミン、ナイアシン、ビタミンB6、B12、葉酸、コレステロール、多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、オメガ6/3脂肪酸、コリンなどと、有意な正の相関関係が認められた。食品群との関連をみた場合、総野菜摂取量とNTxスコアとの間に有意な正の相関が認められた(r=0.272、p=0.003)。

また、たんぱく質摂取量を、「米国人の食事摂取基準」の推奨に基づき0.8g/kgで二分すると、NTxスコアは推奨を満たす群で有意に高かった(p=0.018)。ビタミンD、リボフラビン、カルシウム、リン、ビタミンB6、B12、セレン、亜鉛、ナイアシン、マグネシウムについても同様に、推奨に基づき二分して比較すると、リボフラビン、リン、ビタミンB12、セレンについては推奨を満たす群のほうが有意にNTxスコアが優れていた。ただし、前述のようにこれらの微量栄養素の摂取推奨量を満たしているアスリートはわずかだった。

睡眠はパフォーマンスの維持に関連

睡眠関連の評価指標とNTxスコアとの関連では、NTxを連続して行った場合に最後のセッションで、スタンフォード眠気尺度と負の相関がみられ(r=-0.230、p=0.015)、眠気が強いほどパフォーマンスが低下しやすいことが示された。ウェアラブルデバイスから把握された睡眠時間は、パフォーマンスとの関連が非有意だった。

また、身体活動量は、パフォーマンスとの有意な関連が認められなかった。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition, lifestyle, and cognitive performance in esport athletes」。〔Front Nutr. 2023 May 18;10:1120303〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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