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レクリエーションレベルであっても、女性ランナーの2割に摂食障害のリスクがある

女性ランナーでは、競技会で成績を争うハイレベルではなく、レクリエーションレベルであっても摂食障害のリスクのある人が少なくないという実態が示された。スウェーデンの研究者らの報告。

レクリエーションレベルであっても、女性ランナーには摂食障害リスクがある

レクリエーションアスリートでの摂食障害のリスクの知見は不足している

摂食障害(eating disorder;ED)は死亡リスクもある精神疾患の一つ。スポーツアスリートはEDリスクが高いことが知られている。EDは、適切でない食事・運動行動に始まり、エネルギー可用性の低下(low energy availability;LEA)を経て進行すると考えられ、LEAではEDの有無にかかわらず、月経障害や消化器症状、骨代謝異常、筋力・持久力の低下、スポーツ中の怪我のリスクの上昇などが生じる。そのため、EDやLEAのリスクのある対象を早期に見いだし治療へと導くことが重視される。

これまでに、競技会参加レベルのアスリートでは、女性、審美系または持久系スポーツのアスリートでEDやLEAのリスクが高いことが明らかにされている。それに対して、本論文の著者らは、レクリエーションレベルのアスリートのEDやLEAのリスクは十分調査されていないとして、本研究を行った。

女性レクリエーションランナーの約2割がEDまたはLEA

研究参加者は、Facebook上の37のグループを通じて募集された、企業などが主催するランニングセッションによく参加している18~39歳の女性ランナー。

摂食障害(ED)のリスクは摂食障害診断質問票(eating disorder examination questionnaire;EDE-Q)で評価し、四つのサブスコア(それぞれ0~6点のリッカートスケール)の平均が2.3以上の場合をEDと判定した。エネルギー可用性の低下(LEA)は25項目からなる女性の低エネルギー可用性アンケート(low energy availability in females questionnaire;LEAF-Q)で評価し、合計スコアが8点以上の場合にLEAと判定した。

これらはオンラインアンケートとして実施され、89人が終了、うち4人は年齢範囲を逸脱していたため、解析対象は85人となった。

解析対象者の主な特徴は、年齢32.4±4.3歳、BMI中央値22.0(四分位範囲20.7~23.07)で、BMIカテゴリーは低体重が2%、過体重が13%、肥満が1%であり、その他は普通体重。過去の体重変動は中央値11.0(同7.5~15.5)kgだった。

週あたりのトレーニング時間は5時間(範囲1~18)で、全体の94%がレクリエーションレベルを表すtier1で占めていた。

18%にEDの症状あり

EDE-Qの回答から、15人(18%)にEDの症状が認められた。

EDの症状の有無で二分して比較すると、年齢に有意差があり、EDを有する群のほうが若年だった(30.1±4.5 vs 32.9±4.1、p=0.023)。BMIや過去の体重変動は、両群間に有意差はなかった。EDE-Qのスコアと他の評価指標との相関を検討すると、体重変動の大きさと有意な正相関が観察された(r=0.22、p=0.045)。

19%にLEAの症状あり

LEAF-Qの回答から、16人(19%)にLEAの症状が認められ、そのうち2人(13%)はEDの症状も有していた。ED症状の有無で二分した場合、LEAF-Qで評価した変数に有意差はみられなかった。

一方、LEA症状の有無で二分して比較した場合、症状のある群ではトレーニング時間が有意に長かった(7.0 vs 4.5時間/週、p<0.001)。その他の指標は有意差がなかった。LEAF-Qのスコアと他の評価指標との相関を検討すると、週あたりのトレーニング時間と正相関し(r=0.33、p=0.002)、年齢とは負の相関が観察された(r=-0.37、p<0.001)。

EDに該当しない場合でもLEA関連症状に注意が必要

本研究で示された、女性レクリエーションランナーのED該当者率が18%という数値について著者らは、女性の持久力アスリートで報告された18~21%と同等であると述べている。また、一般人口において臨床面談を用いてEDリスクを評価した報告では9%というデータがあり、エリートレベルの女性持久系アスリートでは24~25%というデータがあるという。

一方、本研究では、EDに該当する人の中でLEAに該当するのは13%のみであり、EDE-QとLEAF-Qとの間に有意に関連が認められなかった。この点について著者は、「EDに関連する幅広い症状を裏付けるものであり、LEAでは個人の身体的または精神的健康を損なう行動を含む、さまざまな形で症状が現れる可能性があることを強調するものだ」との考察を加えている。さらに、「この結果は、レクリエーション目的の女性ランナーでは、EDの症状がなくてもLEAを否定できないことを示すものでもある」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Symptoms of eating disorders and low energy availability in recreational active female runners」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2023 Jul 19;9(3):e001623〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group Ltd & British Association of Sport and Exercise Medicine)

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