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アジア人を含む人種別にウォーキング・ランニングの消費エネルギー量を予測する計算式の開発

ウォーキングやランニングによる消費エネルギーを人種別に検討し、予測式を開発した研究論文が昨年報告されている。著者らは、疾患コントロールなどのための運動処方といった公衆衛生戦略に役立てられるとしている。

アジア人を含む人種別にウォーキング・ランニングの消費エネルギー量を予測する計算式の開発

体重、性別と人種で運動中の消費エネルギー量を予測する

ウォーキングやランニングは体重管理のための最も一般的な方法であり、糖尿病や心血管疾患、一部の癌のリスクを抑制することのエビデンスがある。また糖尿病などの代謝性疾患では、疾患コントロールのために医師が運動処方を行っており、その際には消費エネルギー量を勘案して処方することも多い。

ウォーキングやランニングによる消費エネルギー量に関するこれまでの研究から、多くの規定因子が明らかになっている。体重はその大きな因子であり、体重が重いほど移動距離あたりの消費エネルギー量は多くなる。ウォーキングとランニングでは、移動距離が等しい場合、同一対象ではランニングのほうが消費エネルギー量が大きいものの、さまざまな体重の人が含まれている対象での研究では同等となるという複数の報告がある。性別に関しては、女性のほうが一般に体脂肪量が多いため、エネルギーコストは男性より高くなることが多いとされる。

これらのほかに、人種によっても消費エネルギー量が異なることが報告されている。ただ、それらの研究の多くは安静時消費エネルギー量の差を検討したものだ。そこで今回紹介する論文の著者らは、体重、性別、人種から、ウォーキングまたはランニングという運動により、1マイル(1,609.344m)移動した場合の消費エネルギー量の予測式の開発を試みた。

白人、黒人、アジア人に分けて消費エネルギー量を測定

この研究のために、224人が参加した。人種は白人が71人、黒人が68人、アジア人が85人であり、それぞれを無作為に2群に分類。136人(白人41人、黒人42人、アジア人53人)を予測式開発のためのサンプルとし、他の88人(白人30人、黒人26人、アジア人32人)は、開発した予測式の精度検証のための集団とした。

参加者は、ウォーキングを行う標準体重群(体脂肪率が男性は22%以下、女性は35%以下)、ウォーキングを行う過体重群(体脂肪率が前記のカットオフ値を超過)、およびランニング群の3群に分類された。ランニング群は大半が普通体重だった。研究参加の適格条件として、ふだん1回30分、週3回以上のウォーキングまたはランニングを行っており、トレッドミル上で10分間連続のウォーキングまたはランニング可能であることとされていた。また除外基準は、体重が136kgを超過、血圧が140/90mmHgを超過、および妊娠中。

消費エネルギー量は、まず、屋内で70フィート(約21m)を6回走行し、各個人の最も好ましい走行速度を決定。続いて、トレッドミル上をその好ましい速度で5分間走行してもらい、間接熱量測定法によって最後の2分間のデータから消費エネルギー量を算出した。これらの計測の少なくとも2時間前から、参加者は食事摂取を禁止され、またすべての計測は午前9~11時の間に行った。

開発された予測式で体重・人種・性別の運動時消費エネルギーを算出可能

1マイルを走行する際の体重1kgあたりの消費エネルギー量は以下のとおりだった。

人種別の検討

白人は、普通体重ウォーキング群が1.3kcal、過体重ウォーキング群が1.4kcal、ランニング群が1.5kcalで、ランニング群は他のウォーキング群の2群より有意に高く、ウォーキング群の2群間でも過体重群のほうが有意に高かった。

黒人は同順に、1.4kcal、1.4kcal、1.45kcalで、有意差がなかった。アジア人は1.5kcal、1.4kcal、1.7kcalで、ランニング群は他のウォーキング群の2群より有意に高く、ウォーキング群の2群間には有意差がなかった。
性別の検討
性別にみた場合、白人男性は体重1kgあたり1.38kcal、女性は1.42kcal。黒人は1.50kcal、1.42kcal。アジア人は1.50kcal、1.57kcal。すべての人種で有意差がなかった。

予測式の開発と精度検証

以上のデータをもとに研究者らは、1マイルをウォーキングまたはランニングする際の消費エネルギー量を算出する、以下の予測式を開発した。

1マイル走行時の消費エネルギー量=
0.978 × 体重 − 4.571 × 性別(男性は1、女性は2) +​
3.524 × 人種(白人は1、黒人は2、アジア人は3) + 32.447(標準誤差は12.5)

開発されたこの予測式を用いて、事前に設定されていた88人の精度検証群での1マイル走行時の消費エネルギー量を計算したところ、103.6kcalと算出された。それに対して実際に計測された消費エネルギー量は、106.9kcalであり、両者の値に有意差が存在していた。ただし、両者の差は3.3kcalであり、予測式の標準誤差である12.5kcalの範囲内にとどまっていた。また、人種別に検討しても、いずれも同様の傾向が観察された。

サンプル数を増やした検証と、他の運動での検討が求められる

著者らによると、運動時の消費エネルギー量を人種ごとに予測可能とした計算式は、これが初だという。そして検証結果に基づき、「開発された予測式は、体重管理などの公衆衛生戦略上のツールとして活用できる」と結論づけている。

ただし、サンプル数が十分とはいえないことや、ウォーキングとランニング以外に公衆衛生対策として推奨されることの多い運動、例えば水泳などの消費エネルギー量が不明であることなどを限界点として、今後の研究の必要性を指摘している。

文献情報

原題のタイトルは、「Comparison and predicted equation of energy expenditure during walking or running among Caucasians, African Americans and Asians」。〔Sports Med Health Sci. 2021 Jul 6;3(3):171-176〕
原文はこちら(Elsevier)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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