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東京五輪を目指す中国の女性審美系アスリートを対象にした低エネルギー可用性リスク調査

審美的なスポーツは、十分に発達した身体能力(パワー、スピード、持久力、柔軟性)および技術的なスキルと芸術性を必要とするスポーツとして定義される。そして、その採点には審査員の主観的な要素が含まれる。そのため審美系スポーツのパフォーマーは通常、低脂肪量・低体重であり、身体の外見に留意し、エネルギー摂取量を制限したり、過度の運動トレーニングを通じてエネルギー消費量を増やして、その目的を達成しようとする。それによって、利用可能なエネルギー量が減少し疾患好発状態となる「低エネルギー可用性(low energy availability;LEA)」のリスクが高まることが知られている。

東京五輪を目指す中国の女性審美系アスリートに低エネルギー可用性のリスク

中国初の女性審美系スポーツアスリートのLEA調査

中国のエリートアスリートも、これまでにトランポリン、ダイビング、新体操などの審美的スポーツで、オリンピックや世界選手権においてメダルを獲得してきている。しかしアスリートの低エネルギー可用性に関するデータは少ない。本研究は、中国の審美系女性アスリートの低エネルギー可用性のリスクを調査した初めての報告。

調査対象のうちエリート群の一部は、東京オリンピックを目指すアスリート

調査対象はエリートアスリート群とレクリエーションアスリート群の2群に分けられ、各群の詳細は以下のとおり。

エリートアスリート群:トランポリン、新体操、エアロビクスという3種目のアスリート52名。年齢20±3歳、BMI18.6±1.9。全員が過去12カ月以内に国内または国際大会への出場経験があり、うち14名は現在も中国代表メンバーとして東京オリンピックに向けて準備を進めている。

レクリエーションアスリート群:新体操、エアロビクス、ダンススポーツ、チアリーディング、ダンスという5種目のアスリート114名。年齢20±2歳、BMI19.3±1.7。全員が北京体育大学に所属し、競技団体からエリートとしては認定されていないが、週に3回以上のトレーニングを継続している。

アンケートや体組成・骨密度・血液検査などを横断的に検討

調査項目は、女性の低エネルギー可用性アンケート(low energy availability in females questionnaire;LEAF-Q)、摂食障害評価のための質問票(Eating Disorder Inventory-3 Referral Form;EDI-3 RF)、体組成・骨密度、採血検査。

このうち低エネルギー可用性アンケートは25項目の質問からなり、合計スコアが8点以上の場合、低エネルギー可用性であるか女性アスリートの3主徴(低エネルギー可用性に加え無月経と骨粗鬆症)の高リスク状態と判定した。

結果はエリートアスリート群でより高リスク

エリートアスリート群の29名(55.8%)、レクリエーションアスリート群の40名(35.1%)が、低エネルギー可用性のハイリスク状態と判定された。2群を比較すると前者で有意にハイリスク者が多かった(p=0.012)。また、月経異常の有病率は、同順に67.3%、43.9%であり、やはりエリート群が有意に高かった(p=0.005)。

摂食障害のハイリスク者は群間差はなかったが(p=0.351)、頻度は51.9%、59.6%と、両群ともに高かった。

東京オリンピックに出場準備中の14名での解析

エリートアスリート群のうち14名は前述のように現在、東京オリンピックへの出場を目指して準備中の選手。この14名の中で低エネルギー可用性ハイリスク者が8名(57%)存在した。

東京オリンピックへの出場予定選手の中で、低エネルギー可能性ハイリスク者はそうでないアスリートに比べ、LEAF-Qのスコアが高く(10.3±1.8 vs 4.2±2.1%,p<0.001)、無月経の有病率が高く(原発性無月経:87.5 vs 33.3%,p=0.036.続発性無月経:50.0 vs 0.00%,p=0.040)、エストラジオール値が低かった(55.49±8.66 vs 67.20±7.34,p=0.021)。

また、ハイリスク者の骨密度は、全身(1.06±0.04 vs 1.14±0.09g/cm2,p=0.028)および腕(0.64±0.04 vs 0.69±0.05g/cm2,p=0.038)や脚(1.13±0.05 vs 1.24±0.08g/cm2,p=0.007)において有意に低かった。

パフォーマンスと健康維持向上のための栄養戦略が重要

本研究について著者らは、エリートアスリート対象の研究であるためサンプル数が限られている点をリミテーションとして挙げている。そのうえで、「中国の女性アスリートでは、エリートアスリートがレクリエーションアスリートよりも低エネルギー可用性のリスクが高いことを我々のデータは示している。さらに、月経異常、原発性無月経の頻度も高い。また低エネルギー可用性は、エストラジオールレベルの低下と骨密度低下に関連していることがわかった。これらのデータは、エリート群とレクリエーション群の双方においてパフォーマンスと健康をともに向上することが可能な栄養戦略に関する教育の必要性を示唆している」とまとめている。

そして結論としては、「低エネルギー可用性のリスクを認識し、スクリーニングと予防戦略を進めることが、審美系スポーツに関与する中国人アスリートの健康を保護するという目標達成のために重要」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The risk of low energy availability in Chinese elite and recreational female aesthetic sports athletes」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2020 Mar 4;17(1):13〕

原文はこちら(Springer Nature)

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