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東京大学が世界で初めて開発した、時間栄養学の簡易評価ツール「CNBQ」の妥当性を検証

時間栄養に関する幅広い行動を簡易的に評価することを目的とする「Chrono-Nutrition Behavior Questionnaire;CNBQ」の妥当性が報告された。東京大学の研究グループの研究によるもので、著者らはCNBQを、食行動や睡眠行動を十分な妥当性をもって測定できる、世界初の簡易ツール」だとしている。「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に論文が掲載されるとともに、大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

東京大学が世界で初めて開発した、時間栄養学の簡易評価ツール「CNBQ」の妥当性を検証

研究の概要:時間栄養学研究の基盤となる評価ツールの開発と妥当性検証

東京大学の研究グループは、時間栄養に関する幅広い行動を簡易的に評価することを目的とした「Chrono-Nutrition Behavior Questionnaire;CNBQ」が、11日間にわたって収集された食事日記との比較において、十分な妥当性を有することを明らかにした。

CNBQは、時間栄養に着目した研究で必要とされる、さまざまな食行動や睡眠行動を十分な妥当性をもって測定できる、世界初の簡易ツール。今後、時間栄養に関する大規模な観察研究や介入試験で広く活用され、食に関する政策立案に不可欠である、信頼できる科学的根拠の構築に大きく寄与することが期待される。

研究の背景:時間栄養学研究に必要な評価ツールがこれまではなかった

近年、時間生物学と栄養学をつなぎ合わせた新しい学術分野として「時間栄養学(chrononutrition)」が注目を集めている。時間栄養学の研究を行うためには、時間栄養に関するさまざまな行動(例えば、最初の食事や最後の食事の開始時刻や摂食頻度、起床時刻や就寝時刻など)を測定する必要がある。ところが、このような行動を包括的に測定可能な簡易ツールは存在しなかった。そこで本研究では、時間栄養に関する幅広い行動を簡易的に評価することを目的としたCNBQを開発し、11日間にわたって収集された食事日記を基準法として、CNBQの妥当性を検証した。

研究の内容

本研究は、2023年2~4月に全国26都道府県で実施された「食の5Wスタディ」のデータを基にしている。研究参加者は、20~69歳の日本人男女1,050人で、まず、CNBQに回答してもらった。

CNBQは、最近1カ月の生活について、「仕事や学校のある日」と「仕事や学校のない日」に分けたうえで、以下の時刻を尋ねる。(1)就寝時刻、(2)起床時刻、(3)朝食の開始時刻、(4)午前の間食の開始時刻、(5)昼食の開始時刻、(6)午後の間食の開始時刻、(7)夕食の開始時刻、(8)夜間の間食の開始時刻。

その後、11日間にわたって各食事の開始時刻や起床・就寝時刻を、食事日記に記録してもらった。CNBQと食事日記のそれぞれから、睡眠中央時刻、睡眠時間の長さ、摂食中央時刻、摂食時間の長さ(図1)、摂食頻度といった、時間栄養に関するさまざまな項目を算出した。

図1 睡眠中央時刻、睡眠時間の長さ、摂食中央時刻、摂食時間の長さ

睡眠中央時刻、睡眠時間の長さ、摂食中央時刻、摂食時間の長さ

(9)睡眠中央時刻は、(1)就寝時刻と(2)起床時刻の中央値。(10)睡眠時間の長さは、(1)就寝時刻から(2)起床時刻までの時間の長さ。(13)摂食中央時刻は、(11)最初の食事の開始時刻と(12)最後の食事の開始時刻の中央値。(14)摂食時間の長さは、(11)最初の食事の開始時刻から(12)最後の食事の開始時刻までの時間の長さ。
(出典:東京大学)

その結果、表1に示すように、どの項目においても、CNBQから得られた平均値は、食事日記から得られた平均値とかなり類似していた。さらに、CNBQから得られた値と食事日記から得られた値の間のスピアマンの相関係数を計算したところ(表1)、多くの項目において十分に高い相関(0.5以上)が観察された。

表1 食事日記との比較によるCNBQの妥当性(「仕事がある日」の結果)
食事日記との比較によるCNBQの妥当性(「仕事がある日」の結果)
(出典:東京大学)

以上より、CNBQは時間栄養に関するさまざまな項目において、十分に妥当な推定能力を有することが明らかになった。ここに示されているのは「仕事がある日」の結果だが、「仕事がない日」の結果もおおむね類似していた。

今後の展望:食に関する政策立案のためのエビデンス構築に寄与

CNBQは、時間栄養に着目した研究で必要とされる、さまざまな食行動や睡眠行動を十分な妥当性をもって測定できる、世界初の簡易ツール。CNBQは自由に使用できるように、日本語版も英語版もともに、もと論文のオンライン補足情報として公開されている(CNBQ(論文のオンライン補足情報))。

著者らは、「CNBQは時間栄養に関する大規模な観察研究や介入試験で広く活用され、食に関する政策立案に不可欠である信頼できる科学的根拠の構築に大きく寄与することが期待される」としている。

プレスリリース

時間栄養学のための簡易評価ツール(Chrono-Nutrition Behavior Questionnaire; CNBQ)―11 日間食事日記との比較による妥当性研究―(東京大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Relative validity of the Chrono-Nutrition Behavior Questionnaire (CNBQ)against 11-day event-based ecological momentary assessment diaries of eating」。〔Int J Behav Nutr Phys Act. 2025 Apr 25;22(1):46〕
原文はこちら(Springer Nature)

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