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幼児期の「屋外で過ごす時間」や「スポーツクラブなどへの参加」が3年後の運動能力に関連

3~8歳の子どもが屋外で過ごす時間、および、スポーツクラブなどの組織化されたスポーツ活動に参加しているか否かが、6~11歳に成長した時点の運動能力の予測因子であるとする研究結果が報告された。また、これらの関連性はそれぞれ独立したものであって、屋外で過ごす時間が長く、かつ、組織化されたスポーツ活動に参加していることによる、成長後の運動能力に対する相互作用は観察されないという。

幼児期の「屋外で過ごす時間」や「スポーツクラブなどへの参加」が3年後の運動能力に関連

子どもの外遊びやスポーツへの参加による運動能力への影響を縦断的に解析

運動能力の発達は小児期を通じて比較的安定しており、幼少期に何らかの理由で運動能力の発達が阻害された場合、後年まで影響が持続することが多いとする報告がある。子どもの運動能力の発達を促す因子として、いわゆる「外遊び」と言われる屋外での一般的な(組織化されていない)身体活動と、指導を受けながら体力や技量向上を目指す、組織化されたスポーツへの参加という、二つの因子が考えられる。

ただ、それらが成長後の運動能力にどの程度、影響を及ぼすのかという点や、両者が相乗的に運動能力をより高めるのかという点を、縦断的に検討した研究は少ない。今回取り上げる論文は、フィンランドで行われた子どもの運動能力に関する縦断研究のデータを解析した結果であり、屋外で過ごす時間と組織化されたスポーツへの参加の有無と運動能力を調査し、その3年後に再度運動能力を評価して関連を検討している。

屋外で過ごす時間の分布と、組織化されたスポーツの参加状況

この研究は2015~16年に、フィンランド国内の人口の分布を考慮して選ばれた24地域から、3~8歳の子どもとその保護者を募集。その3年後の子どもが6~11歳になった時点で追跡調査を行った。両方の調査に参加した627人(女児51.0%)を解析対象とした。

ベースライン(3~8歳時点)における年齢は5.5±1.1歳で、平日1日に屋外で過ごす時間は、全くない2.9%、30分未満22.8%、30~60分58.1%、60分以上16.3%、休日1日に屋外で過ごす時間は、全くない0%、30分未満1.0%、30~60分10.4%、1~2時間48.8%、2時間以上39.9%。性別で比較すると、平日の屋外で過ごす時間については、男児が女児よりも有意に長く(p=0.004)、休日については群間差が非有意だった(p=0.064)。

組織化されたスポーツの参加は、非参加が43.9%、参加が56.3%で、後者は単一スポーツが38.1%、複数のスポーツが18.0%だった。性別で比較すると、非有意ながら男児の参加率のほうが高い傾向にあった(p=0.057)。

追跡調査時点の年齢は、8.7±1.1歳だった。

複数の組織化されたスポーツに参加していることは、性別を問わず運動能力向上に関連

運動能力の評価には、粗大運動発達テスト3版(Test of Gross Motor Development-3rd edition;TGMD-3)、および、身体協調性を把握するKTKテストを用いた。

ベースライン時点での屋外で過ごす時間、および組織化されたスポーツの参加と、3年後のTGMD-3およびKTKテストの結果との関連性は、線形回帰モデルで検討された。なお、運動能力に対する社会経済的地位の影響も想定されたため、共変量として検討した結果、有意な影響は観察されなかったことから、最終的な解析モデルでは除外された。

解析は、TGMD-3とKTKテストに基づき、横跳び(jumping sideways;JS)、移動スキル(locomotor skills;LMS)、ボール等のコントロールスキル(object control skills;OCS)、基本的動作スキル(fundamental movement skills;FMS)という4項目について行われた。

横跳び(JS)

男児は、複数の組織化されたスポーツ活動を行っていた場合に、3年後の横跳び(JS)の成績が有意に良好だった(スポーツ活動非参加に対してp=0.005)。単一の組織化されたスポーツ活動を行っていたことは、3年後のJSの成績に有意な関連がなかった。また、屋外で過ごす時間の長さは、平日・休日問わず、3年後のJSの成績に有意な関連がなかった。

女児は、平日に屋外で過ごす時間が長いことが、3年後のJSの成績が良好という有意な関連が認められた(30分未満に対して30~60分はp=0.009、60分以上はp=0.024)。休日に屋外で過ごす時間の長さは、3年後のJSの成績と有意な関連がなかった。また、組織化されたスポーツ活動を行っていた場合に、3年後のJSの成績が良好という有意な関連が認められた(単一のスポーツでp=0.025、複数のスポーツでp=0.013)。

移動スキル(LMS)

男児・女児ともに、複数の組織化されたスポーツ活動を行っていた場合に、3年後の移動スキル(LMS)が有意に良好だった(男児はp=0.001、女児はp=0.020)。単一の組織化されたスポーツ活動を行っていたことは、3年後のLMSに有意な関連がなかった。また、屋外で過ごす時間の長さは、平日・休日問わず、男児・女児ともに3年後のLMSに有意な関連がなかった。

ボール等のコントロールスキル(OCS)

女児は平日に屋外で過ごす時間が30~60分の場合に、3年後のボール等のコントロールスキル(OCS)が良好という有意な関連が認められた(p=0.006)。平日に60分以上屋外で過ごすことや、休日に屋外で過ごす時間の長さは、3年後のOCSと有意な関連がなかった。また、組織化されたスポーツ活動を行っていた場合に、3年後のOCSが良好という有意な関連が認められた(単一のスポーツ、複数のスポーツともにp=0.026)。

男児はすべての関連が非有意だった。

基本的動作スキル(FMS)

男児・女児ともに、複数の組織化されたスポーツ活動を行っていた場合に、3年後の基本的動作スキル(FMS)が有意に良好だった(男児はp=0.002、女児はp=0.005)。単一の組織化されたスポーツ活動を行っていたことは、3年後のFMSに有意な関連がなかった。このほかに、女児が平日に30~60分屋外で過ごしていた場合に、3年後のFMSが良好だった(p=0.003)。

運動能力の発達にはスポーツへの参加と屋外活動が、重要かつ独立した役割を果たす

全体的な傾向として、組織化されたスポーツへの参加は、とくに複数のスポーツに参加している場合に、性別を問わず、3年後の運動能力がより高いことと有意な関連が認められた。その一方で、屋外で過ごす時間の長さは女児でのみ、有意な関連が認められた。この点について著者らは、男児は総じて屋外で過ごす時間が長いのに比べて、女児は屋外で過ごす子どもとそうでない子どもの差が大きいことが、このような差が生まれる原因ではないかと考察している。

なお、屋外で過ごす時間が長いことと、組織化されたスポーツに参加していることの、運動能力発達に対する相乗効果は観察されなかった。著者らは、「我々の研究結果は、子どもの運動能力の発達を促すうえで、組織的なスポーツへの参加と屋外での活動が、重要かつ独立した役割を果たすことを示している」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Children’s outdoor time and multisport participation predict motor competence three years later」。〔J Sports Sci. 2025 Mar;43(5):431-439〕
原文はこちら(Informa UK)

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