視覚障害パラ柔道選手の減量に伴う脱水状態は、計量後に体重が戻っても続く
視覚障害のあるエリート柔道パラアスリートの試合前の減量に伴う脱水リスクの実態が報告された。公式計量から試合までの間に体重は有意に増加しているものの、尿比重は依然として減量前より有意に高い状態で試合に臨んでいるという。トルコからの報告。

視覚障害のあるパラ選手の水分補給
柔道選手を含む格闘技アスリートの多くが、有利な条件で戦うために試合前に急速な減量を行い、公式計量後の短時間で急速な増量を図っている。急速な減量は、食事制限やトレーニング量の増加などで行われるが、水分制限等により脱水とすることが最も迅速に体重を減らす。しかし、脱水には健康上のリスクがあり、さらに運動パフォーマンスの低下を招き、柔道においては相手の道着をつかむ把持力が低下することが報告されている。このため、公式計量から試合開始までの短時間で、できるだけ脱水を改善することが重要とされる。
試合前の減量と回復戦略について、健常アスリートを対象とする研究から多くの知見が蓄積されてきている。しかし、パラアスリートを対象とした研究は少なく、さらに視覚障害のあるパラアスリートでの研究となるとより限られていて、とくに試合前からの経時的な変化を追った研究はほぼない。
視覚障害がある場合、脱水の指標として活用可能な尿の色を視認できないこと、水分摂取量を把握し記録するのにもハードルがあること、障害に適応した教育用資料が少なくアクセスも限られていることなどから、健常アスリートよりも脱水に対して脆弱である可能性が考えられる。
これらを背景として本論文の研究では、トルコの視覚障害のあるエリートレベルのパラ柔道選手12人を対象として、大会の1週間前から体重と尿比重を測定し、あわせてどのような脱水戦略を採用しているかを調査している。著者によると、視覚障害のある柔道選手の減量戦略と脱水リスクを経時的に調査した研究は、本研究が初めてとしている。
平均5.2%の減量をしていて、脱水傾向が回復しないまま試合に臨んでいる
研究参加者は、トルコの視覚障害パラ柔道の代表選手であり、研究期間中に競技会に参加し、試合前に急速な減量(rapid weight loss;RWL)を実施していることを適格条件として募集された12人。
試合の1週間前と、公式計量時点(試合前日の夕方)、試合当日という3時点で、体重と体組成、尿比重を測定した。体組成は生体電気インピーダンス法(TANITA BC-545)を用い、アスリートモードで測定した。尿比重の計測には中間尿を用い、1.020以上の場合を脱水傾向と判定した。
研究参加者の特徴と、行っていた減量戦略
12人の主な特徴は、性別は男性と女性が各6人、年齢は33.1±4.3歳、競技歴12.5±6.1年、BMI 26.8±3.8、体脂肪率22.7±8.11だった。
試合前の1週間で行っていた減量方法として、12人のうち11人が水分制限を実施。そのほかに、10人がサウナスーツを着用したトレーニング、9人が食事のスキップ、6人が絶食、4人が段階的食事制限を採用していた。
体重の推移:1週間前から計量までに5.2%減量し、軽量から試合までに4.8%増量
試合の1週間前の体重は75.16±15.31kgで、公式計量時点では71.27±14.52kgであり、-3.89±0.79kg(-5.2%)の減量が行われていて、2時点間に有意差が認められた(p<0.001、d=0.26)。
試合当日の体重は74.71±15.23kgであり、公式計量から+3.44±0.71kg(+4.8%)増量されていて、この2時点間にも有意差が認められた(p<0.001、d=0.23)。
尿比重の変化:全時点で脱水傾向にあり、かつ、試合当日は1週間前より有意に高値
尿比重については研究参加選手全員が、3時点すべてで脱水傾向と判定された。さらに、試合当日の尿比重は、公式計量時点に比べれば低下していたものの、ベースライン(1週間前)との比較で依然として有意に高値だった。詳細は以下のとおり。
試合の1週間前の尿比重は1.023±0.002で、公式計量時点では1.031±0.002と有意に上昇していた(p<0.001、d=5.03)。
試合当日の尿比重は1.026±0.001であり、公式計量時点から有意に低下していた(p<0.001、d=3.3)。しかし、1週間前に測定されたベースライン値と比較すると、依然として有意に高値であった(p=0.003、d=1.66)。
体重が回復していても脱水状態は回復していない
著者らは、「我々の研究は視覚障害のあるエリート・パラ柔道選手が、水分制限を主とする急激な減量を行っていることを明らかにした。こうした手法は、計量時に重度の脱水状態を引き起こす。また重要な点として、計量後に約15時間の回復時間が確保され、体重の大幅な回復が見られたにもかかわらず、すべての選手が計量前の水分状態を完全には回復できず、脱水状態で試合に臨んでいたことである」と総括している。
また、「視覚障害選手は水分状態を視覚的に自己確認することが困難であるという特有の課題を抱えていることを踏まえると、本研究の結果は、視覚に頼らず利用可能なモニタリング・プロトコルや、障害特性に配慮した教育資料を早急に開発する必要性を浮き彫りにしている。パラ柔道選手の健康を守り、競技パフォーマンスを最大化するためには、個々の選手に合わせた体重管理の介入策を導入することが不可欠である」と付言している。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Rehydration failure despite rapid weight regain in elite para judo athletes with visual impairment: a descriptive repeated-measures study」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2026 Jul 11〕
原文はこちら(Springer Nature)
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