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食べる順序と分割食の指導で妊娠糖尿病女性のケトン尿が消失 児の転帰もケトン陰性妊婦と同等

炭水化物等の摂取量が少なく尿ケトン体陽性となっている妊娠糖尿病の女性に対する、食べる順序や分割食を用いて摂取量を増やすという栄養介入の有用性が報告された。血糖管理状態に影響を及ぼすことなく尿ケトンが陰性化し、かつ良好な新生児転帰を得られたという。京都女子大学家政学部食物栄養学科の今井佐恵子氏、梶山内科クリニック(京都)の梶山静夫氏らによる後ろ向き観察研究の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載された。

食べる順序と分割食の指導で妊娠糖尿病女性のケトン尿が消失 児の転帰もケトン陰性妊婦と同等

女性の痩身傾向と晩婚化などの影響で、ケトン陽性GDM増加の懸念

妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus;GDM)は、妊娠高血圧症候群、難産、巨大児出産、新生児低血糖などのリスク因子とされ、それらのリスク抑制のため妊娠中に厳格な血糖管理が行われる。GDMの有病率には地域差があり、日本を含む東アジア地域は高く、これにはBMIが低値であっても内臓脂肪が蓄積しやすいという人種的特徴の関与を指摘する報告もある。

GDMの血糖管理上は炭水化物等の摂取量を制限することが理に適うが、それに伴って負のエネルギーバランスとなった場合、体脂肪や体蛋白質が利用されケトン体が産生される。妊婦のケトン体濃度の上昇は、胎児の心拍数の低下、児のIQや精神発達スコアの低下と関連するという報告があり、催奇形性との関連を示唆する報告もある。また、妊娠中の過度なエネルギー不足は、子孫の心血管代謝リスク上昇と関連することも知られている。

これらにより、GDMの栄養管理では、母体と胎児が必要とする炭水化物およびエネルギーを満たしたうえで、かつ血糖の上昇を抑制し得る手法が求められる。一方で日本においては晩婚化と女性の痩身化傾向が顕著であり、ケトン体が産生されやすい状態のGDMの増加が懸念される状況となっている。

尿ケトン体陽性妊婦を含む500人強のGDM妊婦に対し、妊娠中3~6回の栄養介入

今井氏らの研究は、2010~23年に京都市内の医療機関でGDMと診断され、同市内の糖尿病専門医院である梶山クリニックにて栄養療法を受けた妊婦を対象とする、後ろ向き観察研究として実施された。

患者は同院を紹介受診後、リスクに応じた2~4週ごとの受診の都度、管理栄養士による個別化された栄養指導を受けた。また、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で複数のポイントに異常値が認められた患者、肥満を伴う患者など、高リスクと判断された患者には血糖自己測定(SMBG)を導入し、食後2時間値120mg/dL未満を目指すという指導を行った。

解析対象期間中に同院を紹介受診した519人のうち、初回受診時点でインスリンが処方されていた症例、転院により追跡不能となった症例を除外し、517人を解析対象とした。この患者群が妊娠24~37週にわたり3~6回、同院を受診していた。

対象の約28%が尿ケトン体陽性

3~6回の受診時のいずれかで尿ケトン体陽性となった妊婦143人(27.7%)を「陽性群」、一貫して陰性だった374人(72.3%)を「陰性群」とした。

この2群間に、年齢、HbA1c、グリコアルブミン(GA)*、血圧などに有意差はなかった。ただし、OGTTの負荷後60分値は陽性群が有意に高かった(p=0.04)。また妊娠前のBMIに有意差はなかったが、低体重(BMI 18.5未満)の割合は陽性群に多い傾向がみられた(p=0.098)。

なお、解析対象全体の主な特徴は、年齢33歳、妊娠前BMI 20.7、空腹時血糖値90mg/dL、HbA1c5.20%、GA 13.3%などだった(いずれも中央値)。

* グリコアルブミン(glycated albumin;GA):HbA1cよりも短期間(過去約2週間)の血糖状態を反映する指標で、血糖管理の良否をHbA1cより鋭敏に把握でき、妊娠に伴う鉄欠乏の影響を受けないことから、妊娠中にはGAを測定することが推奨されている。

栄養療法の内容

栄養療法は、尿ケトン体陽性群と陰性群の双方に、同じプロトコルを用いた。エネルギー量は国内のガイドラインを準拠し、25~30kcal/kgに50~450kcalを付加した。

栄養指導では、食後血糖値の管理とともに必要なエネルギー・炭水化物が不足しないことを意図し、「食べる順番」と「分割食」に重点を置いた。前者については食事の際には最初に野菜を食べ、次に蛋白質主体の食品、最後に炭水化物主体の食品を食べるように指導。後者については、朝食と昼食の間、昼食と夕食の間に炭水化物を含む間食を摂取し、夜遅い時間帯には食事を摂らないように指導した。これらは各患者の食習慣やライフスタイル、就労状況に応じて個別化した。

このほか、食事療法の継続を容易にするために実践的な推奨として、おにぎりやサンドイッチ、大豆プロテインバーの利用、電子レンジを活用した料理などを提案。また、作り置き可能なレシピの提供も行った。

本研究は栄養療法のみに焦点を当てており、研究目的での運動指導は行わなかった。また、経口血糖降下薬は処方されておらず、介入開始後にインスリン療法を要した妊婦はいなかった。

なお、食べる順序と分割食によって血糖変動が抑制されることについては、今井氏らが健康な日本人女性対象に行った研究で、既にその可能性が示唆されている。

関連情報
健康な若年女性でも、食べる順序の配慮+1日5回の分割食で、血糖変動が平坦化する

栄養介入によって栄養状態改善、尿ケトン体陰性化。新生児転帰も良好

栄養介入後に、陽性群と陰性群のエネルギー・栄養素摂取量が同レベルに

妊娠前、GDM診断後(栄養介入前)、栄養介入後の3時点で、食事調査が実施されていた。

妊娠前のエネルギー摂取量は、尿ケトン陽性群1,275kcal(中央値〈以下同〉)、陰性群1,667kcalであり、前者が有意に低値だった(p<0.001)。炭水化物摂取量も同様に、168.0g、223.0gで、陽性群が有意に低値だった(p<0.001)。

GDM診断後には、尿ケトン陽性群と陰性群の双方で、以下のようにエネルギー摂取量と炭水化物摂取量が有意に低下していた。陽性群、陰性群の順に、エネルギー摂取量は978kcal、1,235kcal、炭水化物摂取量は122.0g、149.9g(いずれも妊娠前に比較しp<0.001)。また、このGDM診断後の時点においても、陽性群の摂取量は陰性群より有意に低値だった(エネルギー摂取量と炭水化物摂取量の双方がp<0.001)。

一方、栄養介入を実施後には、陽性群と陰性群の双方で、以下のようにエネルギー摂取量と炭水化物摂取量が有意に上昇し、とくに陽性群では妊娠前よりもエネルギー摂取量が有意に高値となっていた。エネルギー摂取量は陽性群が1,481kcal(妊娠前およびGDM診断後に比較しp<0.001)、陰性群は1,512kcal(GDM診断後に比較しp<0.001)、炭水化物摂取量は陽性群が173.0g(GDM診断後に比較しp<0.001)、陰性群は180.7g(GDM診断後に比較しp<0.001、妊娠前との比較でp<0.01)。さらに栄養介入を実施後には、陽性群と陰性群の、エネルギーおよび炭水化物の摂取量の有意差が消失していた。

ケトン体陽性妊婦の全員が34週までに陰性になり、新生児アウトカムに群間差なし

妊娠中の体重変化や血糖管理状況に群間差はなかった。具体的には、陽性群では6.8kg増、陰性群では7.3kg増(p=0.093)、栄養介入後のGAは同順に12.8%、13.2%(p=0.207)だった。

そして、介入前に143人だったケトン体陽性妊婦は、介入開始後に漸減していき、34週時点でゼロとなっていた。

さらに、帝王切開(陽性群12.6% vs 陰性群13.9%)、出生体重(3,072kg vs 3,013kg)、巨大児(2% vs 1%)、低出生体重児(8% vs 7%)、先天異常(2.1% vs 3.5%)などの新生児アウトカムは、いずれも有意差がなかった。

ケトン体陽性GDM妊婦の食事には、食べる順序と炭水化物の小分けが役立つ可能性

結果をまとめると、野菜を最初に摂るという食べる順序と、炭水化物の摂取量を分割するという栄養療法の指導によって、GDM妊婦の栄養状態が改善し、ケトン尿を呈していたGDM妊婦の尿ケトン体が陰性となった。また、妊娠中にインスリン療法を要した患者はなく、尿ケトン陽性群と陰性群の双方で新生児予後が良好だった。

著者らは本研究について、研究デザイン上、残余交絡の存在が否定できず、観察された有用性が栄養介入によるものと断定はできないことなどを挙げたうえで、「食事の順序と分割食による介入は、尿ケトン体を認めるか否かにかかわりなく、日本人GDM妊婦の良好な栄養状態および新生児転帰と関連している」と結論づけ、「今後は前向き研究を実施し、潜在的な交絡因子を調整した解析が求められる」と付け加えている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Medical Nutrition Therapy with Meal Sequence and Divided Carbohydrate Intake: Associations with Ketonuria Resolution and Neonatal Outcomes in Gestational Diabetes Mellitus」。〔Nutrients. 2026 Aug 14;18(16):2665〕
原文はこちら(MDPI)

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