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糖尿病と口腔機能の関連は、前期高齢者と後期高齢者で正反対? 東温スタディの横断解析

愛媛県東温市の地域住民を対象とした東温スタディにて6種類の生活習慣病と7項目の口腔機能指標との関連を、年齢層別に解析した結果が報告された。糖尿病については、前期高齢者の口腔機能低下と関連している一方で、後期高齢者の口腔機能に対しては保護的に働くという関連性が認められ、継続的な歯科受診がこれに関与している可能性が示唆されるという。愛媛大学医学部附属病院歯科口腔外科・矯正歯科の本釜聖子氏らの研究によるもので、「Journal of Prosthodontic Research」に論文が掲載された。

糖尿病と口腔機能の関連は、前期高齢者と後期高齢者で正反対? 東温スタディの横断解析

高齢者のフレイル予防に欠かせない適切な栄養素摂取と、それを支える口腔機能

口腔の健康と全身の健康との間に有意な関連のあることを示す多くのエビデンスが蓄積され、現在では生活習慣病の予防や治療におけるオーラルケアの重要性が強く認識されている。例えば、歯周病と血糖コントロールの関連などは広く知られている。また、高齢者では、咀嚼や嚥下などの口腔機能の低下が栄養状態悪化を介して、サルコペニアやフレイルをはじめとする全身的な健康障害のリスクを高めることや、認知機能と口腔機能が関連することも知られている。

こうした背景から、中年期から前期高齢者ではメタボリックシンドローム等の生活習慣病の予防が重要である一方、後期高齢者ではフレイルやサルコペニアの要望が重要になる。このような変化とともに、口腔機能と生活習慣病リスクとの関連も徐々に変化すると考えられる。ただしこれまでの研究では、現在歯数(残存歯数)と生活習慣病との関連などについては報告があるものの、咀嚼機能や嚥下機能、咬合力など、口腔機能の詳細な評価指標と生活習慣病リスクとの関連は明らかにされておらず、またその関連を年齢層別に検討した研究は十分ではなかった。

これらを背景として本釜氏らは、愛媛県東温市の地域住民対象疫学研究「東温スタディ」のデータを用いて、6種類の生活習慣病と7項目の口腔機能指標との関連が、中年者、前期高齢者、後期高齢者で異なるかを検討した。

口腔機能と生活習慣病の関連を年齢層別に解析

東温スタディでは、新聞広告やポスターなどを通じて30~84歳の地域住民を募集した。ただし本研究では、加齢に伴う口腔機能低下との関連を調査するという目的から、解析対象を50歳以上とした。自立歩行や意思疎通が困難な人、データ欠落者などを除外し、395人(68.8±8.9歳、男性34.9%)を最終的な解析対象とした。

口腔機能は、日本老年歯科医学会の提言に基づき、口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力(残存歯数)、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能、嚥下機能の7項目の検査を実施し、そのうち3項目以上が低下に該当する場合に「口腔機能低下症」と診断した。この診断は5年以上の経験を有する2名の歯科医師により行われた。

生活習慣病については、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、高尿酸血症、腎機能低下の6疾患を評価した。

糖尿病は前期高齢者でのみ、口腔機能低下症のオッズ上昇と関連

解析対象395人のうち、中年者(50~64歳)が126人、前期高齢者(65~74歳)が135人、後期高齢者(75~84歳)が134人であった。口腔機能は、年齢層が高くなるほど低下あるいは不良となる傾向を示した。

口腔機能低下症の有無を従属変数、6種類の生活習慣病と性別、年齢層、およびかかりつけ歯科医の有無を独立変数とするロジスティック回帰分析を実施。その結果、若年であること(後期高齢者を基準として中年者はオッズ比〈OR〉0.09〈95%CI;0.04~0.20〉、前期高齢者はOR0.32〈0.17~0.62〉)、かかりつけ歯科医を有すること(OR0.41〈0.20~0.82〉)は、口腔機能低下症のオッズ低下と有意に関連していた。性別は有意な関連がなかった(男性を基準として女性はOR0.99)。

生活習慣病の中では、口腔機能低下症と糖尿病が有意に関連していた。ただしその関連は年齢層によって異なり、前期高齢者ではOR7.75(2.00~29.97)と、口腔機能低下症のオッズの有意な上昇がみられたのに対して、対象全体での糖尿病の有無ではOR0.28(0.10~0.77)と、口腔機能低下症のオッズ低下と関連していた。

糖尿病以外の生活習慣病は有意な関連がなかった。

7項目の口腔機能指標ごとの解析結果

このほか本研究では探索的に、7項目の口腔機能指標ごとに生活習慣病との関連を解析し、その関連が年齢層で異なるかを検討している。

その結果、咬合力低下と糖尿病(交互作用p=0.011)、咀嚼機能低下と糖尿病(同p<0.001)および肥満(同p=0.032)との関連について、年齢層による有意な交互作用が観察された。いずれも前期高齢者ではそれらの生活習慣病を有する場合に口腔機能が低下し、一方で後期高齢者では生活習慣病を有する場合に口腔機能が良好という関連だった。

年齢に応じた口腔機能の評価と包括的な管理が重要

以上の結果を著者らは、「口腔機能と生活習慣病との関連は年齢層により大きく異なることが明らかになった。とくに糖尿病は、前期高齢者の口腔機能の低下と有意に関連していることが示された。しかし、咬合力(残存歯数)などの一部の指標は後期高齢者において、糖尿病群が非糖尿病群よりも良好であった」と総括している。また、以下のような考察を加えている。

かかりつけ歯科医をもつことが口腔機能低下を抑制し得る

糖尿病は口腔機能低下症と有意な関連があったのに対して、その他の生活習慣病は関連が非有意だった。これには、サンプルサイズが400弱と限られていたこと、および、これらの生活習慣病と口腔機能低下のいずれも、加齢とともに同時進行的にリスクが上昇することが関係していると考えられるという。

それに対して、かかりつけ歯科医を有することは独立した有意な保護因子として抽出された。これは、定期的な歯科受診では、むし歯や歯周病の治療だけでなく、残存歯の維持、義歯の調整、咬合状態の確認、口腔衛生管理などが行われる。また、口腔機能の低下を早期に発見し、必要に応じて口腔機能訓練などにつなげることも可能である。したがって、継続的な歯科受診が口腔機能の管理により、口腔機能低下を抑制する可能性を示すものと言える。

サルコペニア肥満に伴う咀嚼機能低下が食習慣を悪化させる可能性

前期高齢者では、糖尿病とともに肥満も口腔機能低下症に関連していた。肥満はBMIで定義されるため、筋量が低下していても体重が大きければ肥満に該当することから、この関連の一部はサルコペニア肥満の存在によって説明できる可能性がある。サルコペニアによる筋力低下は咀嚼機能にも影響し、肉や魚などのタンパク質食品、野菜などの摂取が減り、軟らかくエネルギー密度の高い食品を摂取しやすくなる。それによって、口腔機能低下とサルコペニア肥満の悪循環が形成されると考えられる。

後期高齢者で認められた糖尿病の保護的作用は、東温スタディの特徴によるものか?

糖尿病は前期高齢者では口腔機能低下症のリスクであり、後期高齢者では保護的因子の可能性が示された。これらは、本研究の解析対象が、募集に応じて研究に参加し、身体的に自立し移動できる健康意識の高い住民であったことが関係していると考えられる。すなわち、歩行困難などの理由により歯科受診の機会が失われることなく、かかりつけ歯科医を有していることが、適切な歯科治療につながり良好な口腔機能の維持に結びついていると推測される。

この背景として、東温市のある愛媛県では後期高齢者に糖尿病性腎症重症化予防プログラムが推進されていて、その一環として定期的な歯科受診が推奨されていることも関係していると考えられた。一般に定期的な歯科受診率は60歳代後半にピークとなり、より高齢になると低下するが、同県では県民の約8割がかかりつけ歯科医を有しており、東温スタディでもそれと同様に、多くの参加者がかかりつけ歯科医をもっている。

これらの考察に基づき論文の結論は、「適切な歯科的介入と継続的な口腔機能管理が、口腔機能の維持・向上に寄与する可能性が示唆された。得られた知見は、生活習慣病の予防・治療の一環として、年齢に応じた口腔機能の評価と包括的な管理を行うことの重要性を示している」と述べられている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Relationship between lifestyle diseases and oral function in older adults: The Toon Health Study」。〔J Prosthodont Res. 2026 Aug 13〕
原文はこちら(J-STAGE)

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