スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJスポーツ栄養サミット2026「REDsの基礎から、男性アスリートのREDsを深く学ぶ1日」
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

運動前のカフェインでスプリント能力が向上 効果は少なくとも3.5時間持続 筑波大学

運動前のカフェイン摂取が、自転車の繰り返しスプリントのパフォーマンスを向上させ、その効果は少なくとも3.5時間持続することが明らかになった。筑波大学などの研究グループの成果であり、論文が「Medicine & Science in Sports & Exercise」に掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。著者らは、「得られた結果は長時間にわたる競技種目や試合形式において、一度のカフェイン摂取で競技中のパフォーマンス向上が維持される可能性を示している」としている。

運動前のカフェインでスプリント能力が向上 効果は少なくとも3.5時間持続 筑波大学

研究の概要:カフェインの効果はいつまで期待できるかが明らかに

カフェインは運動パフォーマンスを向上させる代表的な成分として広く利用されている。しかし、運動前に摂取したカフェインの効果が、長時間にわたる競技中にどの程度持続するのか、またその際にどのような生理応答が生じるのかは十分に明らかになっていなかった。

本研究では、健常な若年男女12人を対象に、運動開始60分前に体重1kgあたり5.5mgのカフェインまたはプラセボを摂取し、その後3.5時間にわたって断続的に実施した繰り返しスプリント運動(短距離自転車走)のパフォーマンスと生理応答を比較した。生理応答としては、血中カフェイン濃度およびノルアドレナリン濃度、呼吸・循環応答、脳血流、主観的運動強度などを測定した。

その結果、カフェインを摂取した群では、繰り返しスプリントの平均および最大パワーが向上し、その効果は摂取後少なくとも3.5時間持続した。また、スプリント終了時の血中ノルアドレナリン濃度は高値を示し、運動のきつさや脚の筋の痛みが軽減された。さらに、脳血流の指標である中大脳動脈血流速度が低下し、呼吸および循環応答にも変化が認められた。

以上の結果は、運動前に摂取したカフェインの効果が長時間持続することを示しており、高強度運動を繰り返すチームスポーツやトーナメント形式など競技が長時間にわたる場合のカフェイン活用法の科学的根拠となると期待される。

研究の背景:カフェイン介入試験の多くは摂取60分後にテストしているが…

サッカーやラグビー、バスケットボールなどのチームスポーツでは、短時間の全力運動を繰り返し行う能力が競技成績を左右する。また、トーナメント形式の大会では、数時間にわたって複数の試合やウォーミングアップを行うことも少なくない。そのため、長時間にわたり高いパフォーマンスを維持するための栄養戦略の確立が重要な課題となっている。

カフェインは、コーヒーやお茶、エナジードリンクなどに含まれる成分であり、運動パフォーマンスを向上させることが広く知られている。実際に、多くのアスリートが競技前にカフェインを摂取している。しかし、その効果に関するこれまでの研究の多くは、カフェイン摂取から約1時間後の運動を対象としており、長時間持続するかどうかは十分にわかっていなかった。

また一方で、カフェインには心拍数や呼吸、脳への血流などに影響を及ぼすことも報告されている。そのため、長時間の運動中にカフェインの効果と生理応答がどのように変化するのかを明らかにする必要があった。

そこで本研究では、運動開始60分前に摂取したカフェインが、3.5時間にわたる間欠的運動のパフォーマンスに及ぼす影響を検討した。また、パフォーマンスの変化に関連する可能性のある交感神経活動、呼吸・循環応答、主観的運動強度※1および脳血流応答などについても併せて評価した。

※1 主観的運動強度:運動強度(疲労度)を主観的に数値で評価したもの。一般に6〜20の範囲で設定されており、数値が高いほど運動をきつく感じることを表す。

研究内容と成果:12人を対象とする二重盲検試験で、3.5時間後にも有意

本研究では、健常な若年男女12人(男性8人、女性4人、平均年齢24歳)を対象に、二重盲検ランダム化比較試験※2を実施した。参加者は、体重1kgあたり5.5mgのカフェインまたはブドウ糖(プラセボ)を摂取し、60分間の安静後に3.5時間にわたる間欠的運動※3を行った。

※2 二重盲検ランダム化比較試験:第三者が無作為に条件を割り当て、研究対象者と研究者の双方にその情報を伏せることで、先入観によるバイアスを排除し、介入効果を厳密に比較・検証する手法。
※3 間欠的運動:サッカーやラグビーなどのように、運動と休息、あるいは比較的軽い運動を繰り返しながら行う運動様式。

この運動は、中強度の自転車運動(エアロバイク)5分間に続いて6回の全力スプリント(自転車による短距離走)からなるセットを3回行うもので、各セットは摂取後1時間、2時間、3時間後に実施した。また実験中には、スプリントのパフォーマンスに加え、血中カフェイン濃度、血中ノルアドレナリン濃度、呼吸・循環応答、中大脳動脈平均血流速度(脳血流量の指標)および主観的運動強度などを測定した(図1)。

図1 本研究の実験プロトコル

本研究の実験プロトコル

運動開始60分前に体重1kgあたり5.5mgのカフェインまたはプラセボ(ブドウ糖)を摂取し、その後3.5時間にわたって間欠的運動を実施した。間欠的運動は、中強度の自転車運動と全力スプリントを組み合わせた運動を1時間ごとに計3回実施し、スプリントパフォーマンスおよび各種生理応答を評価した。
(出典:筑波大学)

その結果、カフェインを摂取した群では、繰り返しスプリント時の平均パワーおよび最大パワーが向上し、とくに最大パワーは最大3.7%増加した(図2A、B)。これらの効果は摂取後少なくとも3.5時間持続した。またこの時、血中カフェイン濃度は運動中を通じて高い値を維持し(図2C)、交感神経活動の指標である血中ノルアドレナリン濃度が高く、運動時の主観的なきつさ(図2D)や脚の筋の痛みは軽減された。

図2 本研究の主な結果

本研究の主な結果

カフェイン摂取により繰り返しスプリントのパフォーマンスが向上し、その効果は少なくとも3.5時間後まで持続した(A、B)。また、血中カフェイン濃度は運動中を通じて高い値を維持し(C)、運動時のきつさの軽減が認められた(D)。
*各時点においてカフェイン条件とプラセボ条件の間に有意差が認められた(p<0.05)。平均パワー(B)および主観的運動強度(D)において、条件の主効果が有意であった(p<0.05)。
(出典:筑波大学)

また、脳血流の指標である中大脳動脈平均血流速度や頸動脈血流量(脳へ流入する血液量の指標)が低下するとともに、呼気中の二酸化炭素濃度の低下や心拍数の上昇も認められ、カフェインが呼吸・循環応答や脳血流指標にも影響を及ぼすことがわかった(図3)。

図3 単回カフェイン摂取の主な効果

単回カフェイン摂取の主な効果

(出典:筑波大学)

以上のことから、運動前に摂取したカフェインは、少なくとも3.5時間にわたり繰り返しスプリントのパフォーマンスを向上させることが明らかとなった。

この知見は、サッカーやラグビーなどの高強度運動を繰り返すチームスポーツや、トーナメント形式の試合など、長時間にわたる競技において、事前の一度のカフェイン摂取でパフォーマンス向上効果を維持できる可能性を示唆している。

今後の展開:競技中の最適な追加摂取戦略を探る

本研究により、運動前に摂取したカフェインによるパフォーマンス向上効果が少なくとも3.5時間持続することが明らかとなり、実践的なカフェイン活用法の確立につながると期待される。著者らは、「今後、より少ない摂取量での効果や、競技中の追加摂取・分割摂取の有効性について検証を進め、競技特性や個人特性に応じたカフェイン摂取戦略の構築を目指す」としている。

プレスリリース

運動前のカフェイン摂取によるパフォーマンス向上効果は3.5時間持続する(筑波大学)

文献情報

原典論文のタイトルは、「Pre-exercise caffeine enhances repeated sprint performance and alters physiological and perceptual responses with effects lasting up to 3.5 h」。〔Med Sci Sports Exerc. 2026 Sep 1〕
原文はこちら(Wolters Kluwer)

SNDJスポーツ栄養サミット2026「REDsの基礎から、男性アスリートのREDsを深く学ぶ1日」
この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2026後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

【 スポーツ栄養Web編集部 】
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ