健康な若年女性が「1日5回の分割食」+「食べる順序に配慮」すると、血糖変動が平坦化する
血管障害のリスク因子の一つと目されている食後の急峻な血糖上昇が、1日5回の分割食とし、かつ、野菜を先に食べて炭水化物は最後に食べるという工夫によって、抑制されることを示す報告を紹介する。京都女子大学家政学部食物栄養学科の今井佐恵子氏、梶山内科クリニック(京都)の梶山静夫氏らが女子大学生を対象に行った無作為化クロスオーバー研究の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載された。

1日の栄養素摂取量を変えずに血糖変動を平坦化できるか?
糖代謝異常がある場合、食後の高血糖が血管障害、とくに動脈硬化の関連因子とされ、平均血糖値だけでなく食後の急峻な血糖上昇も可及的に制御するという治療が行われている。そのための手法として、薬物療法ではインスリン追加分泌を刺激または補填する薬剤や胃内容物の排出を遅延させる薬剤が使用され、食事療法ではグリセミックインデックス(glycemic index;GI)を下げるような食品選択・摂り方の有用性が知られている。後者のGIの低い食事については、糖尿病患者の良好な血糖管理だけでなく、糖代謝異常のない集団における2型糖尿病の発症リスクの低さと関連するとの報告もある。
これらの知見を背景として今井氏らの研究では、糖尿病でない健康な成人女性に対して、食品の摂取順序の調整と分割食によって、血糖変動にどのような変化が生じるかが検討された。著者らによると、健康な若年女性を対象とするこのような介入試験は、本研究が初めてだという。
1日5食に分割し、かつ野菜を先、炭水化物を最後に摂ることの影響を検討
研究参加者は京都女子大学の学生から募集された18人。除外基準は、糖尿病と診断された者、糖代謝に影響する薬剤を服用中、妊娠またはその可能性のある者とされていた。参加者の主な特徴は、年齢21.4±0.8歳、BMI 20.2±1.9、HbA1c5.2±0.2%、空腹時血糖値88.2±5.4mg/dL。なお、事前の統計学的検討から、この介入の効果の検討に必要なサンプルサイズは14と計算されていた。
研究デザインはクロスオーバー法で、18人全員に1日3食という通常パターンの食事と1日5食の分割食のパターンを、試行順序を無作為化して実施し、間歇スキャン式持続血糖測定(intermittently scanned continuous glucose monitoring;isCGM)により翌日早朝まで血糖変動を評価した。試験食はエネルギー摂取量、主要栄養素バランスを一定にした。また、試験期間中は試験食以外の食事、エネルギーを含む飲料およびアルコールの摂取、激しい運動を禁止した。
両条件共通の事項
エネルギー摂取量1,822kcal、炭水化物284.5g、食物繊維27.2g、タンパク質77.8g、脂質52.6g。試験食として、コンビニ惣菜を利用したほか、研究者の監督下で参加者が調理した食品を用いて標準化した。朝食は7:00、昼食は12:00、夕食は18:00とした。5食条件の間食も含め、すべての食事は15分以内に摂取することとした。
1日3食条件
- 朝食;白パン120g、イチゴジャム(無糖)、ゆで卵1個、ブロッコリー、トマト、牛乳
- 昼食;白米200g、焼き鮭、トマト、ゆでほうれん草、野菜炒め
- 夕食;白米200g、ハンバーグステーキ、ゆでほうれん草、トマト、野菜炒め、カブの葉の煮込み
なお、上記の各食事において、食品を摂取する順序は任意。
1日5食条件
- 朝食;白パン60g、イチゴジャム(無糖)、ゆで卵1個、ブロッコリー、トマト、牛乳
- 昼食;白米150g、焼き鮭、野菜炒め、トマト、ほうれん草のゆで汁
- 夕食;白米150g、ハンバーグステーキ、野菜炒め、トマト、カブの葉の煮込み
- 間食1(9:30~);白パン60g、イチゴジャム(無糖)、トマト、ブロッコリー
- 間食2(15:00~);白米100g、野菜炒め、トマト
なお、上記の各食事において、食品を摂取する順序は、野菜→タンパク質→炭水化物の順とした。
5食条件で、血糖変動の標準偏差、MAGE、食後血糖上昇曲線下面積などが有意に減少
解析の結果、平均血糖値と最低値などには有意差がなかったものの、1日5食条件では血糖変動が有意に抑制されることが明らかになった。詳細は以下のとおり(3食条件、5食条件の順)。
| 3食条件 | 5食条件 | |
|---|---|---|
| 平均血糖値 (mg/dL) | 94.5±2.52 | 93.6±2.52 |
| 標準偏差 (mg/dL) | 19.26±1.44 | 15.12±0.72 (p<0.01) |
| 最高値 (mg/dL) | 161.28±7.20 | 132.30±4.50 (p<0.001) |
| 最低値 (mg/dL) | 69.30±2.70 | 70.56±3.06 |
| MAGE*1 (mg/dL) | 62.82±5.76 | 46.08±2.34 (p<0.01) |
| LAGE*2 (mg/dL) | 91.98±7.38 | 61.74±3.24 (p<0.001) |
| 朝食後1時間の 血糖上昇曲線下面積 (mg/dL×分) | 1,296±144 | 792±108 (p<0.01) |
| 昼食後1時間の 血糖上昇曲線下面積 (mg/dL×分) | 1,944±234 | 828±126 (p<0.001) |
| 夕食後1時間の 血糖上昇曲線下面積 (mg/dL×分) | 2,538±252 | 900±126 (p<0.001) |
| 血糖値が 140mg/dLを超える 時間の割合(%) | 4.2±1.0 | 1.4±0.6 (p<0.01) |
*1 MAGE:血糖値の変動幅の平均値で、血糖変動の大きさを示す指標。mean amplitude of glycemic excursions。
*2 LAGE:血糖値の最大の変動幅。largest amplitude of glycemic excursions。
5食条件で血糖変動が抑制される理由の考察
1日5食条件で食後の血糖上昇と血糖日内変動が抑制された理由について、論文では先行研究の知見を参照し、以下のような考察が加えられている。
分割食によって炭水化物摂取に伴う糖負荷が軽減
間食も含めて1日に5回の食事機会にエネルギー量と炭水化物量を分散することにより、1回あたりの糖負荷が抑制されたと考えられる。
セカンドミール効果
少量の食事を摂取しておくことで、次の食事の後の血糖上昇が抑制される「second-meal effect」が知られている。これには、少量の食事摂取によりインスリン分泌を適度に高められること、絶食時間が短縮されることで遊離脂肪酸の上昇が抑制されインスリン感受性が維持されることなどが関与していると考えられている。
概日リズムの調整
夕食前の絶食時間が長いと夕食後の食後高血糖が顕著になりやすいことが知られているが、1日5食条件ではこれが緩和される。これには、概日リズムの調整作用が部分的に関与している可能性が考えられる。
食品の摂取順序変更の影響
本研究では、分割食の実施に加え、食品の摂取順序も変更した。野菜を最初に食べることで、食物繊維による胃内容物のゲル化が進み、胃排出遅延が生じることが報告されている。
妊娠糖尿病の血糖管理にもこの手法を用い得るかの検討が求められる
著者らは本研究ではインスリンやインクレチン分泌などを測定していないことから、分割食や摂取順序をアレンジしたことと血糖変動が抑制されたことの関連メカニズムの考察が制限されることを限界点としてあげている。また、健康な若年女性のみを対象としているため、食後血糖コントロールの必要性がより高い、妊娠糖尿病などの病態での有効性の検証が必要と指摘している。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Dietary Modification with Food Order and Divided Carbohydrate Intake Improves Glycemic Excursions in Healthy Young Women」。〔Nutrients. 2025 Oct 10;17(20):3194〕
原文はこちら(MDPI)








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