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高齢者栄養評価指標(GNRI)は、急性心筋梗塞後の予後予測の最適なツールである可能性

日本人の急性心筋梗塞(AMI)患者の全死亡や主要心血管イベント(MACE)の予測における、高齢者栄養評価指標(GNRI)の最適なカットオフ値が報告された。時間依存性ROC解析により、すべての時点のAUCが0.8を上回り、ほぼ一貫して他の評価指標よりも高い予測能を示したという。東京慈恵会医科大学付属病院循環器内科の伊東哲史氏らの研究によるもので、「Heart and Vessels」に論文が掲載された。著者らは、「GNRIはAMIの重要な予後予測因子と考えられる」と述べている。

高齢者栄養評価指標(GNRI)は、急性心筋梗塞後の予後予測の最適なツールである可能性

心筋梗塞の予後予測にもGNRIが役立つか?

高齢者栄養評価指標(Geriatric Nutritional Risk Index;GNRI)は、血清アルブミン値とBMIから計算可能で簡便な栄養リスク評価ツールであり、癌や心不全の臨床で繁用されているが、虚血性心疾患における有用性は定まっていない。その背景として、急性虚血と慢性虚血では病態が異なること、急性の虚血では時間軸の影響がより大きくなること、および、設定するエンドポイントの種類により予測能が変化することなどが考えられる。

これらを背景として伊東氏らは、急性心筋梗塞(acute myocardial infarction;AMI)患者の予後予測におけるGNRIの有用性を、時間経過を考慮可能な時間依存性ROC解析によって検討し、最適なカットオフ値の設定を試みた。

急性心筋梗塞で緊急入院し生存退院した連続360人のデータを解析

研究対象は、2012年1月~2020年2月に同大学病院へAMIのため緊急入院し生存退院した患者から、追跡不能者を除外した連続360人。主な特徴は、年齢62±13歳、男性88.9%、ST上昇型心筋梗塞74.4%で、BMIは25.1±4.2、血清アルブミンは3.8±0.5g/dLであり、既報論文に基づき算出したGNRIは97.9±8.3だった。

Am J Clin Nutr. 2005 Oct;82(4):777-83
GNRIの計算式は〔血清アルブミン値(g/dL)×14.89+BMI×41.7

エンドポイントは2項目設定し、一つは全死亡、もう一つは主要心血管イベント(major adverse cardiac event;MACE〈全死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心不全入院で構成〉)として、入院日から最長4年間追跡。3カ月、6カ月、1年、2年、3年、4年の時点でのエンドポイント発生率を評価した。

GNRIはすべての時点のAUCが0.8以上

中央値1,103日(範囲571~1,440日)の追跡で、死亡23件、非致死性心筋梗塞3件、心不全入院11件、非致死性脳卒中2件が発生していた。

時間依存性ROC解析の結果、GNRIはどの時点のエンドポイント発生に対しても、AUC0.8以上の高い予測能をもつことが明らかになった。また、AMI発生からの経過時間が長くなるほど、最適なカットオフ値が上昇していた。全死亡とMACEの比較では、全死亡を予測するGNRIのほうがやや低い傾向にあった。

全死亡、MACEに対する各時点の最適なカットオフ値とAUCは、以下のとおり。

全死亡

3カ月時点の至適カットオフ値が82.7でAUCは0.834、6カ月では同順に89.3、0.838、1年では89.3、0.861、2年では89.3、0.876、3年では89.3、0.852、4年では90.3、0.854。

MACE

3カ月時点の至適カットオフ値83.0でAUC0.841、6カ月では95.7、0.853、1年では95.7、0.863、2年では95.3、0.844、3年では95.3、0.816、4年では95.3、0.821。

他の指標との比較でも高いAUCが示される

次に、AMI患者の予後と関連のある、年齢、ヘモグロビン値、腎機能(推算糸球体濾過量〈eGFR〉)、心機能(左室駆出率〈LVEF〉)、HbA1cについて、同様の手法でAUCを算出し、GNRIと比較した。その結果、追跡期間のほぼ全体にわたって、GNRIのAUCが最も高い状態で推移することがわかった。

すべての時点でGNRIカットオフ値未満の群はイベント発生率が高い

続いて、GNRIのカットオフ値未満/以上で2群に分け、カプランマイヤー法でイベント回避率を検討。すると、全死亡、MACEともに、カットオフ値未満の群は、全時点のイベント回避率が有意に低いことが明らかになった。

GNRIは急性心筋梗塞患者の予後予測において重要な評価指標

著者らは、本研究が単一施設のデータに基づく後方視的研究であることなどを限界点として挙げたうえで、「時間依存性ROC解析により、GNRIはAMI患者の予後予測において重要であることが示された。GNRIの最適なカットオフ値と予測能は、設定したエンドポイントと追跡期間によって変化した。全体として、入院時のGNRIが低くても、短期的な心血管イベントリスクへの影響は比較的少ない。しかし、長期的な心血管イベントリスクを下げるには、高いGNRIスコアが必要とされるようだ」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Cut-off values of Geriatric Nutritional Risk Index for cardiovascular events in Japanese patients with acute myocardial infarction」。〔Heart Vessels. 2024 Sep 13. doi: 10.1007/s00380-024-02455-w〕
原文はこちら(Springer Nature)
https://link.springer.com/article/10.1007/s00380-024-02455-w

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