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カフェインの急性効果は午前中に高い? カフェイン摂取の量と時間帯について効果と有害事象を比較研究

女性アスリートを対象に、カフェインの摂取量と摂取時間帯を変えた6パターンで、急性効果と有害事象を比較検討した研究結果が報告された。パフォーマンス上の急性効果は午後よりも午前中に摂取した場合に高いこと、午後の摂取は摂取量の多寡にかかわらず有意な効果が認められないうえに、有害事象が生じやすいことなどが明らかになった。

カフェインの急性効果は午前中に高い? カフェイン摂取の量と時間帯について効果と有害事象を比較研究

カフェインの効果は朝と夕方で異なる?

カフェインはアスリート4人に3人が利用しているとの報告もあり、あらゆるスポーツで広く用いられているエルゴジェニックエイドで、数々の研究報告がある。しかし、カフェインを摂取する時間帯により効果や有害事象リスクが異なるのかという点はあまり検討されておらず、とくに女性アスリートでのデータは限られている。

これを背景として、今回紹介する論文の著者らは、同一対象に、プラセボ、低用量のカフェイン、中等度の用量のカフェインを、朝または夕方に摂取するという、合計6条件での二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を行い、効果と有害事象リスクを比較検討した。

若年女子ハンドボール選手対象の二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験

既報研究に基づき、このトピックに関する有意性の検討に必要なサンプルサイズは12人以上と計算された。44人の女性ハンドボール選手をスクリーニングし、以下の適格条件に基づき20人が適格と判断された。このうち5人が月経周期や個人的な理由により参加に至らず、研究対象者は15人となった。

適格条件は、年齢が18~19歳の範囲で、ハンドボールの経験が3年以上であり、週に3回以上トレーニングを行っていて、月経周期が安定しており、クロノタイプが偏っておらず(朝型でも夜型でもない)、カフェインを習慣的に摂取していること(1日あたり25mgを超え、0.99mg/kg/日未満の範囲内)。除外基準は、他のエルゴジェニックエイド(クレアチンや硝酸塩など)の摂取、喫煙・飲酒習慣、経口避妊薬またはインプラント、子宮内避妊器具などの使用、睡眠障害など。

研究対象者15人の年齢は18.3±0.5歳、BMI22.2±2.1であり、ハンドボールの経験は5.5±0.7年、トレーニング頻度は4.4±0.5回/週、睡眠時間は7.4±0.5時間だった。

摂取時間帯と摂取量を変えて6条件を試行

この研究では、カフェインまたはプラセボの摂取時間帯と摂取量を変えた、以下の6条件の試行が行われた。

摂取時間帯

朝に摂取する条件では8~9時、夕方に摂取する条件では18~19時として、いずれも摂取の60分後に後述のテストを行った。60分は、カフェインを経口摂取した場合に血中濃度が最大値となるとされている時間。

摂取量

プラセボ(PLA)、低用量(3mg/kg)カフェイン(CAF3)、中等量(6mg/kg)カフェイン(CAF6)の3条件とした。すべて無色、無味、無臭とし、事後調査でこれらを正確に認知できた被験者は少数であり(PLA条件は26.66%、CAF3条件は20%、CAF6条件は13.33%)、盲検化が達成されていたことが確認された。

試行条件

各条件の試行順序は無作為化し、72時間以上のウォッシュアウト期間を設けて実施された。研究に先立ち食事記録をつけてもらい、各条件のテストの前日は同じ内容の食事を摂るように指示し、また研究期間中のカフェイン摂取は禁止した。朝にテストを試行する日には、標準化された朝食、夕方にテストを試行する日は軽食(いずれも約500kcal)を、テストの120分前に提供した。環境は、室温28℃、相対湿度52%に管理した。

評価項目

評価項目は、パフォーマンスに関しては、カウンタームーブメントジャンプ(countermovement jump test;CMJ)による下肢の瞬発的筋力の評価、修正アジリティTテスト(modified agility t-test;MATT)による敏捷性の評価、反復スプリントテスト(repeated sprint ability test;RSA)、自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)などであり、これら以外に、テスト当日から翌日に発生した有害事象を質問票で把握した。

カフェインの急性効果は朝に強く、夕方は有害事象が増える

各評価項目の検討結果は以下のとおりで、全体として、朝に摂取する条件ではパフォーマンス上の有効性が認められた。

カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)

プラセボ(PLA)条件同士での比較では、朝に摂取した場合よりも夕方に摂取した場合のほうが、より高くジャンプしていた(条件間差2.6%、p<0.001)。

朝摂取のPLA条件を基準とする比較で、カフェイン摂取条件は摂取量にかかわらず、有意に高くジャンプしていた(カフェイン3mg/kg〈CAF3〉では条件間差2.5%、6mg/kg〈CAF6〉では同3.8%。いずれもp<0.001)。一方、夕方摂取のPLA条件を基準とする比較では、カフェイン摂取量にかかわらず、ジャンプの高さに有意差が認められなかった。

修正アジリティTテスト(MATT)

PLA条件同士での比較では、朝に摂取した場合よりも夕方に摂取した場合のほうが、タイムが優れていた(-6.4%、p<0.001)。

朝摂取のPLA条件を基準とする比較で、朝のCAF6条件ではMATTのパフォーマンス向上が観察された(-4.5%、p<0.001)。しかし、朝のCAF3条件ではPLA条件と有意差がなかった。一方、夕方摂取のPLA条件を基準とする比較では、カフェイン摂取量にかかわらず、タイムに有意差が認められなかった。

反復スプリントテスト(RSA)

反復スプリントテスト(RSA)については、ピーク値と平均値で解析がなされているが、いずれについても、朝に摂取した場合よりも夕方に摂取した場合にパフォーマンスが良好であり、CMJやMATTと同様に、カフェイン摂取の有効性は朝に摂取する条件でのみ有意という結果だった。

自覚的運動強度(RPE)については、試行条件間に有意差は観察されなかった。

有害事象

朝にカフェインを摂取する条件(発現頻度は0~13.33%)に比べて、夕方にカフェインを摂取した場合は、より多くの有害事象が報告された(同6.66~40%)。報告された主な有害事象は、朝に摂取する条件では、頻脈(33.33%)、消化器症状(26.66%)、頭痛(20%)などであり、夕方に摂取する条件では、不眠症(46.66%)、頭痛(40%)、消化器症状(26.66%)などだった。

著者らは、「我々の研究結果は、カフェインの有効性が摂取量と摂取する時間帯に依存することを示している。朝に摂取した場合、低用量よりも中等量のほうが、女性アスリートに対して有害事象を増やさずにパフォーマンスを向上させる。しかし、夕方に摂取した場合は摂取量にかかわらず有効性が十分でなく、中等量を摂取した場合には有害事象が増加した」と総括。また、「アスリートやコーチは、サプリメントの摂取時間帯にも留意する必要がある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Different Caffeine Dosages on Maximal Physical Performance and Potential Side Effects in Low-Consumer Female Athletes: Morning vs. Evening Administration」。〔Nutrients. 2024 Jul 11;16(14):2223〕
原文はこちら(MDPI)

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