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若年女性の痩せすぎは次世代の高齢期サルコペニアリスクにまで影響を及ぼす可能性

低出生体重児は成人後にも骨格筋量が少ないという、若年日本人女性対象の解析データが報告された。聖隷クリストファー大学の安田智洋氏の研究によるもので、「PLOS ONE」に論文が掲載された。同氏は、「若年女性の痩せ願望によって出生体重の低い児の出産が増え、その児が高齢期に入った段階におけるサルコペニアのリスクを高めてしまうのではないか」との懸念を述べている。

日本人若年女性の痩せすぎ問題の影響は、次世代の高齢期にまで及ぶ?

国内では1980年代から新生児に占める低出生体重児の割合が漸増し、近年は約10%で推移している。また、やはり1980年代から若年(20~29歳)成人女性に占める低体重の割合が漸増し、近年は約20%が該当するようになっている。これら両者の直接的な因果関係の証明は難しいが、若年女性の痩せ願望の高まりが低出生体重児の増加につながっていると考えられている。

出生時体重の低さは、成人後の種々の疾患リスクを押し上げることが知られており、可能性としては高齢期のサルコペニアリスクの増大も想定される。現在の日本人若年女性の痩せ願望に対して、本人の老後の骨粗鬆症やサルコペニアのリスクを増大させかねないとの懸念がしばしば指摘されるが、それらの女性が産む子どもたちの出生時体重が低いことを介して、次世代の人たちのサルコペニアリスク上昇という懸念も生じる。

これらの理論的な背景のもと、安田氏は日本人若年成人女性の体組成や体力、サルコペニアリスクを、出生時体重で層別化して比較するという検討を行った。

若年成人女性を出生時体重2,500g未満/以上で二分して体組成などを比較

研究参加者は18~20歳の日本人女性70人。慢性疾患や筋骨格系の疾患、運動器の手術歴のある人は除外されている。出生児体重2,500g未満の13人(18.6%)を「低出生体重(low-birth-weight;L-BW)群」、2,500g以上の57人(81.4%)を「非低出生体重(not low-birth-weight;NL-BW)群」とした。L-BW群の出生時体重は2,191±421g、NL-BW群は2,999±343gだった。

評価項目は、身長・体重や体組成、体力(膝伸展筋力、垂直跳び、立ち幅跳び、反復横跳び、長座体前屈)、サルコペニア関連指標(握力、バランス機能、歩行速度、椅子立ち上がりテスト、骨格筋指数〈skeletal muscle index;SMI〉など)とした。体組成はインピーダンス法で測定した。

低出生体重群は低身長で、除脂肪量や骨格筋量が少ない

両群を比較すると、年齢、体重、BMI、体脂肪率には有意差がなかった。一方、身長は非低出生体重(NL-BW)群の158.2±5.6cmに対して低出生体重(L-BW)群は154.0±3.2cmで、除脂肪量は同順に20.6±2.4kg、18.9±1.4kgであって、L-BW群は身長が有意に低く、除脂肪量が有意に少なかった。

脂肪量・骨格筋量を、下肢、上肢、胴部ごとに比較すると、脂肪量に関してはすべての部位で有意差がなかった。それに対して骨格筋量は、すべての部位で有意差が観察され、L-BW群で低値だった。骨格筋量の群間差を示す効果量は、下肢で最大であり(左1.44、右1.36)、次いで胴部(1.02)、上肢(左0.86、右0.9)だった。

低出生体重群は下肢パワーが弱い

体力関連指標のなかでは立ち幅跳びに有意差が認められ、NL-BW群の173±16cmに対してL-BW群は164±15cmと低値であり、効果量は0.65だった。その他の体力関連指標は有意差がなかった。

サルコペニア関連指標のなかでは骨格筋指数(SMI)に有意差が認められ、NL-BW群の6.03±0.52に対してL-BW群は5.72±0.41と低値であり、効果量は0.75だった。その他のサルコペニア関連指標は有意差がなかったが、握力については効果量が0.56と比較的大きく、L-BW群で低値だった。

なお、SMIに関してアジア人高齢者のサルコペニアの判定基準では、インピーダンス法で測定した場合に女性は5.7未満というカットオフ値が設定されている。本研究におけるL-BW群のSMI 5.7未満の割合は53.8%と過半数に及び、NL-BW群の29.8%の2倍に近かった。

妊娠可能世代の痩せ願望問題の新たな課題

安田氏は、本研究では研究登録を無作為化したにもかかわらず、理由は不明ながら低出生体重の割合が18.6%と日本の平均である9.4%の約2倍の頻度であったことなどを結果解釈上の留意点として挙げたうえで、「出生時の体重が低い女児は成人後にも身長が低く、骨格筋量が少ないことがわかった。また体力面でも、下肢のパワーが弱いという特徴がみられた。このことから、低出生体重児は高齢期にサルコペニアを発症するリスクが高いと予測され、妊娠可能世代の痩せの増加という現象が抱える、新たな課題の存在が示唆された」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of birth weight on body composition, physical fitness, and sarcopenia assessments in young Japanese women」。〔PLoS One. 2024 Sep 11;19(9):e0297720〕
原文はこちら(PLOS)

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