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若い日本人女性の「痩せ願望」はBMIが低いほど強い 主観的体重と客観的体重の乖離が明らかに

若年の日本人女性の痩せ願望の強さを示す新たなデータが報告された。女子大学生のBMIカテゴリー別に、実測体重と、本人が望む主観的な理想体重、および、BMI22に相当する客観的な理想体重との乖離を調べた結果であり、聖隷クリストファー大学看護学部の安田智洋氏による研究論文が「Scientific Reports」に掲載された。同氏の提案による、主観的理想体重と客観的理想体重の乖離を定量的に表した「痩せ願望指数」に基づく検討結果も述べられている。

若年日本人女性の痩せすぎ問題

若い日本人女性は痩せ願望が強く、実際に痩せすぎの人が多いことは広く知られており、マスコミなどでも社会的な問題としてしばしば取り上げられている。若年女性の痩せすぎは、現時点の低栄養だけでなく、高齢になってからの骨粗鬆症やサルコペニアのリスクを高めたり、妊娠時には低出生体重児出産などのリスクとなる。さらに、次世代の生活習慣病リスクを高める可能性も指摘されている。

これまでに、日本人若年女性が望ましいと感じる主観的な体重は、医学的に理想とされるBMI22に相当する体重よりも低いことが報告されている。安田氏は、この関係を本人のBMIカテゴリー別に比較検討するとともに、サルコペニアのリスクとの関連を検討した。

体重やBMIの実測値、客観的理想、主観的理想の乖離の実態

研究の対象は、18~22歳の女子大学生90人(18.5±1.0歳)。筋骨格系疾患を含む慢性疾患の既往のある女性は含まれていない。90人のうち58人は、有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)を習慣的に行っていた。BMIカテゴリー別の該当者数は、痩せ(18.5未満)が18人、普通体重(18.5~25未満)が67人、肥満(25以上)が5人だった。

BMI実測値と主観的理想BMIの乖離

BMIの全体平均は20.7±2.2であるのに対して、本人が理想と考えるBMI(主観的な理想BMI)は19.1±1.3だった。これをBMIカテゴリー別にみると、痩せ群ではBMI実測値が17.9±0.5に対して主観的理想BMIが18.1±0.6、普通体重群は同順に21.4±1.4、19.3±1.3、肥満群は26.3±0.7、20.6±1.4だった。

自分の体重カテゴリーの認識を問うと、痩せ群18人の中で、本人が「自分は痩せている」と認識しているのは4人(22.2%)に過ぎず、14人(77.8%)は普通体重と認識していた。また、普通体重群67人の過半数にあたる35人(52.2%)は、自分が肥満だと認識していた。肥満群5人は全員(100%)が肥満だと認識していた。

本人が望む体重変化と客観的理想体重との乖離

普通体重群の女性がBMI22の客観的理想体重になるためには、平均2.2kg増量する必要があると計算された。それにもかかわらず、本人の希望は平均4.5kgの減量であり、やせることを望んでいた。

痩せ群の女性が客観的理想体重になるためには、平均10.3kgの増量が必要と計算されたが、本人の希望は平均0.4kg増であり、ほぼ不変を望んでいた。

肥満群の女性が客観的理想体重になるためには、平均10.4kgの減量が必要と計算されたが、本人の希望は平均13.7kg減と、より大きな減量を望んでいた。

「痩せ願望指数」はBMIが低い群ほど高い

次に、客観的理想BMIである22と、主観的理想BMIとの差を22で除して百分率で表した値を「痩せ願望指数」と定義(例えば主観的理想BMIが20の場合〔(22-20)÷22×100=9.1〕で、痩せ願望指数は9.1%)。これをBMIカテゴリー別に算出すると、BMI実測値が低い群ほど、痩せ願望が強いことが明らかになった。

具体的には、痩せ群の痩せ願望指数は17.8%、普通体重群は12.3%、肥満群は6.5%だった。

若年女性の痩せの健康リスクに対する、さらなる啓発が必要

これらのほかに、サルコペニアのリスクとして、握力、骨格筋量指数(skeletal muscle mass index;SMI)、ふくらはぎ周囲長、歩行速度、椅子立ち上がりテストなどが評価された。そのうち、SMIとふくらはぎ周囲長については、BMI高値群ほど高値という有意差が認められた。

以上の結果を基に安田氏は、「本研究に参加した若年日本人女性の大半は、普通体重または痩せと判定され、『より痩せたい』と願っている女性が多くを占めていた。若年女性の低体重は、周産期合併症やサルコペニアのリスクであることの認識を高めるための啓発活動の推進と、学校や家庭などにおける痩せ予防対策などの環境整備も求められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Desire for thinness among young Japanese women from the perspective of objective and subjective ideal body shape」。〔Sci Rep. 2023 Aug 29;13(1):14129〕
原文はこちら(Springer Nature)

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