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「断食」に関する24用語の定義が国際的に合意 断食の意味が曖昧な研究報告などの明確化に期待

「断食」という用語の定義に関する国際的な合意についての論文が、「Cell metabolism」に掲載された。5大陸、38人のエキスパートによるデルファイ法により、食事制限、カロリー制限、治療的断食、予防的断食、断続的断食など、計24の用語が定義づけられている。

「断食」に関する24用語の定義が国際的に合意 断食の意味が曖昧な研究報告などの明確化が容易に

断食の定義が曖昧なまま、研究報告が増加している

断続的断食(intermittent fasting;IF)、時間制限食(time-restricted eating;TRE)、短期断食(short-term fasting;STF)、あるいはラマダン断食など、さまざまな種類の断食に関する科学論文が過去20年ほどの間に大幅に増加している。それらによって、ヒトのさまざまな疾患リスクに断食が好ましい影響を及ぼしたり、酵母から哺乳類までを含む多様な種で延命につながる可能性が示唆されてきている。

断食によるこれらの効果が、単にエネルギー制限によってもたらされるものではないことも明らかになってきたことを背景として、さまざまな断食の方法が提案され研究されるようになった。それにより、異なる断食のレジメンが似たような言葉で表現されるなどの混乱が生じている。

この状況を背景として、ドイツの研究者が中心となり、世界各国の断食に関する専門家、計45人に対して、断食関連の用語の定義に関する合意を呼びかけ、38人が参加に同意し、デルファイ法(意見を集約するためにステートメントの候補を作成したうえで、合意と再検討を繰り返す手法)のプロセスを経て、提案された24の用語のすべての定義づけが合意に達した。

このプロセスへの参加を求められた研究者は、少なくとも1件の断食に関する論文の著作と5年以上の臨床経験を持つ臨床医または科学者であり、一つの機関からは1名のみとされていた。38人の特徴は、年齢が53±12歳、男性63%で、研究領域(重複あり)は、栄養科学が60%、薬学が50%であり、その他、生物学、分子医学、分子生物学、健康科学などの専門家が含まれていた。出身大陸は欧州が53%、北米が34%で、アジア、オセアニアが各5%、アフリカが3%。アジアの研究者に日本人は含まれていない。

以下に、24種類の用語の中から、いくつかの定義を紹介する。なお、ここに示す和訳は論文中に記されている定義の一部を編集したものであるため、正確な定義は原典論文を参照のこと。

食事制限(dietary restriction;DR)

カロリー摂取量または特定の主要栄養素の継続的あるいは断続的な制限、および一定の時間枠内での食物または食物と水分の摂取の抑制。つまり、DRにはあらゆる種類のカロリー制限、短期・長期・周期的または断続的な断食、タンパク質、炭水化物、脂質などの特定の主要栄養素の制限が含まれる。

カロリー制限(caloric restriction;CR)

栄養失調を来さずに、体重維持に必要な総カロリー量よりも低いエネルギー摂取量とすることを意味する。

飢餓(starvation)

エネルギーと栄養の供給が長期間不十分な状態が続き、体内の蓄えが枯渇したときに起こる異化プロセス。

断食(fasting)

疾患の予防・治療、宗教・文化、その他の理由により、一部またはすべての食品、あるいは食品と飲料を自発的に断つこと。

水のみの断食(water-only fasting)

一定期間、水のみを摂取する断食。

完全断食(total fastまたはcomplete fast)

一定期間カロリーを摂取しない断食。水のみの断食とほぼ同じだが、お茶やその他のカロリーのない飲み物の摂取が含まれる。

ドライファスティング(dry fasting)

一定期間、水を含むすべての食べ物と飲み物を自発的に断つこと。

修正断食(modified fasting)

エネルギー必要量の25%までに制限する日を含む断食。

液体のみの断食(fluid-only fasting)

一定期間、飲み物のみを摂取する断食。水と無糖飲料は自由に摂取できる。また、野菜スープ、野菜ジュース、フルーツジュースは、500kcal/日まで摂取できる。

短期断食(short-term fasting;STF)

2~3日間の断食。

長期断食(prolonged fastingまたはlong-term fasting)

4日間以上連続する断食。

周期的断食(periodic fasting)

毎日、毎週、または数カ月ごとなど、一定の間隔で繰り返される断食。断続的断食もこれに含まれる。

断続的エネルギー制限(intermittent energy restriction;IER)

カロリー制限期間と自由摂食期間が交互に繰り返されるもの。断続的断食や時間制限食もこれに含まれる。

断続的断食(intermittent fasting;IF)

1回あたり最大48時間の断食を繰り返すこと。1週間に1日の断食、1週間に2日の別々または連続した断食、隔日断食、時間制限食などもこれに含まれる。

時間制限食(time-restricted eating;TRE)

1日のうちの特定の時間に食物摂取と高カロリー飲料の摂取を制限し、その時間を少なくとも14時間確保すること。食事時間中のエネルギー摂取は制限されない。

隔日断食(alternate-day fasting)

自由に食べる日と水のみの断食日を交互に行うこと。

隔日修正断食(alternate-day modified fasting)

自由に食べる日と修正断食の日を交互に行うこと。

論文では上記のほかに、特別な断食療法、予防的断食、断食模倣食、宗教的断食などの定義づけが述べられている。

今後の出版物では、この研究で公開された定義を採用することを推奨し、また、今後数年間で断食の用語がさらに開発、改訂、および改良されることが予想されるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「International consensus on fasting terminology」。〔Cell Metab. 2024 Aug 6;36(8):1779-1794.e4〕
原文はこちら(Elsevier)

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