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コラーゲンペプチド摂取と運動介入を並行して行うと、腱や除脂肪量などに有意な変化 メタ解析

コラーゲンペプチドの摂取をトレーニングと並行して行うと、アキレス腱や膝蓋腱の断面積や除脂肪体重、筋力などに有意な影響が現れることが、システマティックレビューとメタ解析の結果として報告された。著者らは、スポーツに伴う腱損傷に対して予防的に働くのではないかと述べている。

コラーゲンペプチド摂取と運動介入を並行して行うと、腱や除脂肪量などに有意な変化 メタ解析

コラーゲンペプチド(CP)のエビデンス確立に向けた研究

近年、コラーゲンペプチド(collagen peptide;CP)の市場が世界的に拡大しており、2020年の市場規模は約6億ドルに達したという。この事実から、CPの摂取が有益なものであるのかを科学的に検証する作業が早急に求められ、とくにスポーツ栄養やリハビリテーションの領域でのエビデンスの確立が必要とされる。

CPは必須アミノ酸(essential amino acid;EAA)の含有量が少ないという点で、質の低いタンパク質に分類されることもあるが、それにもかかわらず除脂肪体重への有意な影響などが、個別の研究から示されてきている。しかし本論文の著者によると、CP摂取の有用性に関するシステマティックレビューは過去に1報のみであり、1日15gのCP摂取が体組成の改善や組織のコラーゲン合成を促進すると結論づけているものの、メタ解析は行われていないとのことだ。

その報告以降もCP関連の研究データが蓄積されてきていることから、本論文の著者らは改めてシステマティックレビューを実施するとともに、メタ解析を試みた。

PERSiSTに準拠しシステマティックレビューとメタ解析を施行

この研究は、医療研究におけるシステマティックレビューとメタアナリシスのための優先報告項目である「PRISMA」を基に、スポーツ科学、スポーツ医学、リハビリテーション領域に則して策定されたガイドライン「Prisma in Exercise, Rehabilitation, Sport Medicine and Sports Science;PERSiST」に準拠し実施された。

文献検索は、PubMed、Scopus、CINAHL、SPORTDiscusを利用して2023年12月に施行。包括基準は、BMIが18.5~31の範囲で足首または関節痛の既往のない健康な成人(17歳以上)を対象に3週間以上、トレーニングを伴うコラーゲンペプチド(CP)またはプラセボによる介入を行った無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)であり、英語またはドイツ語で執筆されている論文。除外基準は、クレアチンやカフェインを併用した研究、および動物実験や基礎研究の報告。また、特定された論文の参考文献やGoogle Scholarを用いたハンドサーチも行った。灰色文献(学術ジャーナルではないメディアの情報)は、積極的な検索は行わなかったが、検索でヒットした場合には、包括基準と除外基準に基づき採否を判断した。

文献データベースの検索で1,227報がヒットし重複削除後の1,097報を2人の研究者が独立してスクリーニングを行い、25報を全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は3人目の研究者の判断により解決した。

最終的に19件の研究報告を解析対象として抽出した。ハンドサーチでヒットした文献は含まれなかった。

抽出された研究報告の特徴

19件の研究の参加者数は合計768人(男性613人、女性155人)で、年齢は17~65歳だが1件の研究は65歳以上の高齢者のみを対象としていた。2件の研究は高度にトレーニングされているアスリートを対象とし、他の研究は研究参加時点ではトレーニングを行っていない、または週3回程度の運動を実践している者を対象としていた。

コラーゲンペプチド(CP)またはプラセボは、週3回摂取とした1研究を除きすべて連日摂取され、用量は3~30gの範囲で、多くは(12研究)は15gであり、1日1回での摂取が最多だった。3件の研究では、コラーゲン合成を高める可能性があるとされるビタミンC(用量は50、80、500mg)も同時摂取されていた。介入期間は、回復に対する影響を検討した研究では3週間以上であり、その他の大半の研究は12~15週間だった。プラセボはマルトデキストリン、フルクトース、コーンスターチ、シリカなどが利用され、10件では等エネルギー量、9件はエネルギー量が不一致のプラセボだった。

研究の質については、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)スコアが6~8の「良好」を下回ることはなく、全体としてバイアスリスクは低いと考えられた。

除脂肪量やアキレス腱、膝蓋腱の断面積などへの有意な影響を確認

それではメタ解析の結果をみていこう。

除脂肪量への影響

除脂肪量への影響は8件、418人の研究が解析対象となった。このうち4件はコラーゲンペプチド(CP)の有意な影響を報告し、他の4件は非有意という結果だった。メタ解析の結果は標準化平均差(SMD)0.48(95%信頼区間0.22~0.74)であり、CP摂取によって除脂肪量が有意に増加することが示された。

腱の断面積への影響

アキレス腱または膝蓋腱の断面積への影響は5件(うち1件は2種類の評価基準で検討)、114人の研究が解析対象となった。このうち4件はCPの有意な影響を報告し、他の1件は非有意という結果だった。メタ解析の結果はSMD0.67(0.16~1.19)であり、CP摂取によって腱の断面積が有意に増加することが示された。

一方、腱の剛性などが評価されていた研究は、有意な結論を報告したものはなく、メタ解析の結果も非有意だった。

腱への負担が大きいスポーツでは長期摂取のメリットがある可能性

論文では上記のほかに、筋力や筋損傷後の回復への影響についても解析結果が述べられている。それらの検討のうえで、「腱に大きな負担をかけることが知られているスポーツ(パワーリフティングや、サッカーやテニスなどの制御不能な動きを伴うチームスポーツなど)を行う人は、数カ月にわたるコラーゲンペプチドの使用から、最大のメリットを得られる可能性がある」と結論づけている。また本研究の要点を以下の3点にまとめている。

  • コラーゲンペプチドをレジスタンストレーニングまたは混合トレーニングと併せて長期的に摂取すると、除脂肪体重、最大筋力、腱の形態、筋力回復の促進を目指す活動的な個人やアスリートにとってメリットがあると考えられる。
  • コラーゲンペプチドを介して腱の断面積を増やすことは、スポーツ関連の腱損傷に対して予防的に作用する可能性がある。
  • 現時点のデータに基づくと、望ましい適応を得るには、少なくとも8週間にわたって1日15gのコラーゲンペプチドを摂取する必要があるようだが、この点についてはさらに研究が必要。

文献情報

原題のタイトルは、「Impact of Collagen Peptide Supplementation in Combination with Long-Term Physical Training on Strength, Musculotendinous Remodeling, Functional Recovery, and Body Composition in Healthy Adults: A Systematic Review with Meta-analysis」。〔Sports Med. 2024 Jul 26〕
原文はこちら(Springer Nature)

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