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野球少年の「浮き趾(ゆび)」有症率は生活スタイルと有意に関連 和式が低リスクの可能性

近年、子どもたちの間で増加が報告されている、起立時に足趾が床から浮いてしまう「浮き趾(ゆび)」に、生活スタイルが関連していることを示すデータが報告された。和式の生活スタイルの子どもよりも洋式スタイルの子どものほうが、浮き趾の有症率が有意に高いという。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の永元英明氏らが野球少年を対象に行った横断調査の結果であり、「Journal of Foot and Ankle Research」に論文が掲載された。

野球少年の「浮き趾」有症率は生活スタイルと有意に関連 和式が低リスクの可能性

浮き趾の増加の理由は?

起立している時、一般的には足趾(足の指)はすべて床に接するもので、その一部が床から浮き上がっている状態は「浮き趾」と呼ばれる。浮き趾では、つま先のグリップ力や重心移動能力の低下、支持基底面の縮小による不安定性、歩幅や歩行速度の低下、膝や腰への機械的ストレスが増大するなどの報告がみられる。また、野球選手の投球障害との関連も指摘されている。さらに、国内の子どもたちの間で浮き趾が増加しているとする報告もある。

浮き趾の関連因子として、遺伝的素因や局所炎症、神経筋疾患や代謝性疾患、体格、靴、運動量、足趾の使用頻度などが想定されており、ライフスタイルとの関連も研究されている。しかし、浮き趾の有症率も含めて、いまだ十分なデータが把握されていない。

この状況を背景として永元氏らは、国内の野球少年の浮き趾の有症率、および生活スタイルとの関連の有無を検討した。

約140人の野球少年の生活スタイルと浮き趾の関連を調査

調査対象は138人の野球少年。下肢の怪我、神経筋疾患、代謝性疾患の既往がある子ども、および解析に必要なデータが欠落している子どもは除外されている。年齢は10~12歳で平均11.2±0.7歳、身長149.1±7.9cm、体重41.8±8.3kg。

素足で固い床に直立して前方を見つめてもらった状態で、すべての足趾が床に設置していない場合を浮き趾と判定した。生活スタイルは、全体的に和式か様式か、寝具は布団かベッドか、トイレは和式か洋式か、という3項目に対する質問により評価した。そのほかに、シーズン前に実施されていた定期健診の結果のうち、足関節背屈可動域(膝屈曲位と膝伸展位)のデータとの関連も検討した。

浮き趾は様式の生活スタイルの子どもに多く、足関節背屈可動域とも一部関連

浮き趾の有症率は、投球側で33%、非投球側では36%だった。生活スタイルについては、73%が様式と回答。寝具は57%がベッドであり、トイレは3人を除く大半(98%)が洋式だった。

浮き趾のある子どもとない子どもを比較すると、身長と体重は有意差がみられなかった。一方、生活スタイルについては、洋式の環境で暮らしている子どものほうが、有症率が高いことが明らかになった。

具体的には、投球側の浮き趾の有症率は、生活スタイルが和式と回答した子どもは19%であるのに対して、洋式と回答した子どもは39%だった(p=0.04)。非投球側では同順に、19%、43%だった(p=0.01)。

寝具との関連に関しては、投球側、非投球側ともに、布団とベッドで浮き趾有症率に有意差は観察されなかった。トイレについては前述のように、大半が洋式であったため、統計解析が不能だった。

生活スタイルが洋式で、かつベッドで就寝している子どもは足関節背屈可動域が狭い

次に、足関節背屈可動域との関連を検討。膝伸展位で測定した足関節背屈可動域については、生活スタイルおよび寝具やトイレのタイプとの関連が、すべて有意な関連は認められなかった。

膝屈曲位で評価した足関節背屈可動域についても、生活スタイル、寝具・トイレのタイプとの関連を個別に検討した場合は、有意な関連が認められなかった。ところが、生活スタイルと寝具の組み合わせで評価すると、洋式スタイルの生活で、かつベッドで寝ている子どもは、そうでない子どもよりも可動域が小さいという有意差が認められた(投球側37.2±5.7° vs 39.0±6.6°、非投球側36.8±5.8° vs 38.6±6.1°)。

子どもの浮き趾の増加は、足関節背屈可動域が狭まるような生活スタイルが関与?

論文の考察に述べられているところによると、これまでの研究で、深くしゃがむ(かかとを床から挙げずにしゃがむ)ことのできる子どもはベッドではなく、布団で寝ている子どもに多く、そのような生活スタイルでは足関節背屈可動域が大きくなる可能性が示唆されているという。また、布団で寝て畳の上で生活している人は、そうでない人よりも頻繁に深くしゃがむ動作をしていることも報告されているとのことだ。今回の研究結果も、それら既報研究のデータを裏付けるものであり、深くしゃがむことのできない子どもは膝屈曲位での足関節背屈可動域が狭く、それが浮き趾のリスクを高めている可能性が示唆された。

以上より論文の結論は、「生活スタイルが洋式の子どもは和式の子どもに比べて、両足の浮き趾の有症率が有意に高い。また、洋式スタイルかつベッドで寝る習慣の子どもは膝屈曲位での両側の足関節背屈可動域が有意に小さい。子どもの浮き趾の増加には生活スタイルが関連している可能性があり、このような視点での今後のさらなる研究が必要とされる」と総括されている。

なお、研究の限界点として、調査対象が野球を行っている男児のみであり、浮き趾の有症率がより高いとされる女児が含まれていないことなどを挙げ、結果の一般化が制限されるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Are floating toes associated with lifestyle in children? A cross-sectional study」。〔J Foot Ankle Res. 2023 Dec 13;16(1):90〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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