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世界トップレベルの7人制女子ラグビー選手の摂取エネルギー量は50%も不足している

国際大会に出場している7人制女子ラグビー選手のエネルギー出納を調査した研究結果が報告された。50%ものエネルギー不足が生じていて、とくに炭水化物が不足している可能性があるという。英国からの報告。

世界トップレベルの7人制女子ラグビー選手の摂取エネルギー量は50%も不足している

トレーニングキャンプ中と試合準備期、各5日間連続評価

7人制ラグビーは、15人制ラグビーとほぼ同じルールのもと、7分ハーフの2回で勝敗が決まる。試合時間が短時間であるために、競技会では2~3日の間に6試合ほど行われることが多い。

プレーヤーが15人制よりも少ないために得点が入りやすいという特徴があり、それは試合中の選手の走行距離にも関係してくる。選手は一般に試合中に113~120m/分程度のスピードで走行し、総走行距離の30%程度は5m/秒以上の速度でカバーされる。つまり、試合時間から受ける印象よりも、消費エネルギー量は高いと言える。

ただし、7人制ラグビーの選手の消費エネルギー量と摂取エネルギー量のバランスはこりまでのところあまり調査されておらず、ことに女子選手でのデータはほとんどみられない。これを背景として今回紹介する論文の著者らは、英国において国際大会レベルで活躍する女子7人制ラグビー選手を対象に、トレーニングキャンプ中とシーズン前の準備期間中の各5日間連続で、エネルギー出納バランスを評価した。

加速度計と食事記録に基づきエネルギー出納を把握

研究対象は、単一チームに所属し国際大会での豊富な経験のある12人の女子選手。トレーニングキャンプ中(TRAIN)の調査に参加したのは11人(25±4歳、170±6cm、71±7kg)、試合準備期間中(COMP)の調査に参加したのは8人(25±3歳、172±7cm、72±6kg)であり、5人の選手はTRAINとCOMP、双方の調査に参加した。

消費エネルギー量は三軸加速度計により評価した。この点について著者らは、精密な測定には直接熱力測定法や二重標識水法が優れているものの、アスリートを対象にそれらによって5日間連続で計測することは現実的でないと述べている。

摂取エネルギー量については、食事記録を基に推計した。

トレーニングキャンプ中のエネルギー出納は-47%

トレーニングキャンプ中(TRAIN)の消費エネルギー量は3,489±382kcal/日であるのに対して、摂取エネルギー量は1,840±215kcal/日であり、-47%のエネルギー不足が観察された。また、体重はTRAIN前が71.2kg、TRAIN後が70.4kgであり、0.8±0.7kgの差で有意に減少していた。

栄養素別では炭水化物が大幅に少ない

栄養素別にみると、炭水化物の摂取量は2.3±0.3g/kgであり、スポーツ栄養の推奨に対して-62%と大幅に少なかった。タンパク質については1.7±0.4g/kgであり、スポーツ栄養の推奨範囲の下限値を+42%上回っていた。脂質に関してはエネルギー比35±5%で、推奨範囲の上限値に対して+0%であり等しかった。

微量栄養素については、カルシウム、ヨウ素、ビタミンA、Eは推奨値よりも高く、一方でカリウムと鉄は推奨値よりも低かった(カリウムは2,980±463mgで推奨に対して-16%、鉄は11.3±2.3mgで-27%)。

試合準備期間中のエネルギー出納は-50%

試合準備期間中(COMP)の消費エネルギー量は3,705±382kcal/日であるのに対して、摂取エネルギー量は1,840±239kcal/日であり、-50%のエネルギー不足が観察された。また、体重はCOMP前が72.6kg、COMP後が71.6kgであり、1.0±0.7kgの差で有意に減少していた。

栄養素別では炭水化物が大幅に少なく、脂質が過剰

栄養素別にみると、炭水化物の摂取量は2.4±0.5g/kgであり、スポーツ栄養の推奨に対して-60%と大幅に少なかった。タンパク質については1.5±0.1g/kgであり、スポーツ栄養の推奨範囲の下限値を+25%上回っていた。脂質に関してはエネルギー比39±5%で、推奨範囲の上限値に対して+25%オーバーしていた。

微量栄養素については、セレン、ビタミンA、C、Eは推奨値よりも高く、一方で鉄は推奨値よりも低かった(12.4±3.2mgで-18%)。

解釈の留意点はあるが、エネルギー出納が大きくマイナスと考えられる

これらの結果について著者は、以下のような留意点を述べている。

まず、コンタクトスポーツによる消費エネルギー量を加速度センサーで計測した場合に、過少評価される傾向が既報研究で指摘されており、本研究でもその可能性が否定できないという。その一方で、摂取エネルギー量についても食事記録に基づく評価は過少評価されやすいことが知られているとして、本研究の結果は両者がともに過少であることもあるとのことだ。また、単一チームのプレーヤーのみを研究対象としていることも限界点として挙げている。

論文の結論は、「それらの限界点の存在を認識したうえで、国際大会レベルで活躍している女子7人制ラグビー選手のエネルギー出納が、トレーニング期と準備期ともにマイナスであることが示された。とくに炭水化物摂取量が少なかった」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Estimated Energy Expenditures and Energy Intakes of International Female Rugby Sevens Players in Five Days of a Training Camp and Competition Preparation」。〔Nutrients. 2023 Jul 19;15(14):3192〕
原文はこちら(MDPI)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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