ハンデ20以下のゴルファー対象研究で、パフォーマンスや体幹筋力を向上するサプリメントを探る
ハンデ20以下のゴルフプレーヤーを対象に行われた研究で、動物性タンパク質と植物性タンパク質の混合サプリメントを8週間摂取すると、ゴルフパフォーマンスや筋力などが有意に向上するという結果が報告された。韓国で実施された無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験の報告。
動物性/植物性タンパク質の混合サプリはゴルフパフォーマンスを高めるか?
タンパク質の摂取が筋量や筋力の向上につながることはよく知られており、また一般的にこの作用は、必須アミノ酸の豊富な動物性タンパク質のほうが植物性タンパク質よりも優れていると考えられている。ただし、動物性タンパク質の積極的な摂取は環境負荷の懸念があり、また牛乳由来のために乳糖が含まれている動物性タンパク質サプリメント(ホエイプロテインやカゼインプロテインなど)は、乳糖不耐症症状を引き起こすことがある。一方、植物性タンパク質はこれらの懸念が低く、大豆や一部のナッツ類は必須アミノ酸量も多い。
いくつかの研究で、動物性タンパク質と植物性タンパク質の混合サプリメントのスポーツパフォーマンス上の有用性が既に報告されている。ただし、ゴルフでの検討はなされていない。以上を背景として、今回紹介する論文の著者らは、ゴルフパフォーマンスを左右するスイング速度や筋力、平衡機能などに混合サプリが及ぼす影響を、無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験で検討した。
ハンデ20以下のゴルファー60人を2群に分けて8週間介入
事前の統計学的検討により、このトピックの有意性の検証に必要なサンプルサイズは60人と計算され、66人の健康な成人がスクリーニング対象とされた。全員がゴルフのハンディキャップ20以下だった。
除外基準として、BMI18.5未満または30超、腎機能低下、肝機能低下、管理不良の高血圧・高血糖・甲状腺機能異常、大量飲酒、最近の身体・精神疾患の既往歴、妊娠・授乳中または妊娠の計画あり、過去1カ月以内のサプリメント(分岐鎖アミノ酸〈BCAA〉、クレアチン、プロテイン)摂取、介入成分に対するアレルギーなどが設定されていた。これらに該当しない26~64歳のカジュアルゴルファー60人(男性45%)が研究に参加した。
無作為に2群に分け、1群は動物性タンパク質と植物性タンパク質の混合サプリメント(mixed protein)を支給する介入群(M群)、他の1群はプラセボを支給する対照群(C群)とした。混合サプリメントは動物性タンパク質であるカゼインカルシウム(11.112g)とホエイプロテイン(5.748g)に加えて、植物性タンパク質のエンドウ豆プロテイン(5.718g)、およびデキストリン(5.142g)が含まれていた。プラセボはデキストリン(27.72g)のみだった。
介入期間は8週間で、被験者は毎日昼食後に約200mLの純水にサプリメントを混ぜて摂取するよう指示された。盲検化のためサプリメントの外観と風味を統一した。試験期間中、被験者には通常の食事とライフスタイルを維持するよう求め、また3日間(平日2日、休日1日)の食事記録をとってもらった。
介入前後に後述の指標の変化および群間差を検討した。これらの指標の測定の48時間前からは激しい運動を禁止し、24時間前からはアルコールとカフェインの摂取を禁止した。
評価項目
主な評価項目は以下のとおり。
ゴルフスイングのパフォーマンス
ゴルフシミュレーターを用いて、ドライバーと7番アイアンのスイングを5回連続で施行。飛距離、ヘッドスピード、ボールスピードを測定し、良好な3回の記録の平均値を解析に用いた。
パフォーマンスを支えるパラメータ
等速性膝関節筋力、等速性体幹筋力、および握力を測定した。また、2分間で施行可能な腕立て伏せの回数を測定した。その際、速度は毎分40回、最大80回に設定した。女性の場合は膝が床に触れることが許可された。
このほかに、円盤の中央で20秒間、立位のまま静止するテストで、平衡機能を評価した。このテストは、1(perfect)から5(poor)の範囲で評価された。
介入期間中に、混合サプリ群(M群)の3人が脱落し、解析は57人で行われた。ベースラインにおいて、両群間に年齢は有意差がなく(M群48.44±9.18歳、C群50.40±10.18歳)、また、性別の分布、身長、体重、BMI、体脂肪率、血圧、安静時心拍数にも有意差がなかった。また、介入条件のコンプライアンス、食事摂取量、身体活動量も有意差がなかった。
介入前後の変化をみると、ゴルフスイングのパフォーマンスおよびパフォーマンスを支えるパラメータについて、以下の群間差が観察された。
ゴルフスイングのパフォーマンスへの影響
ゴルフスイングのパフォーマンスについて、ベースラインの値を調整後、多くの指標で介入前後の変化幅に有意差が認められ、いずれもM群のほうが優れていた(ドライバー飛距離p=0.004、同ボールスピードp<0.001、7番アイアン飛距離p=0.035、同ヘッドスピードp=0.018、同ボールスピードp=0.026)。唯一、ドライバーのヘッドスピードの変化幅のみ、群間差が非有意だった(p=0.113)。
パフォーマンスを支えるパラメータへの影響
パフォーマンスを支えるパラメータについて、ベースラインの値を調整後、多くの指標で介入前後の変化幅に有意差が認められ、いずれもM群のほうが優れていた(等速度性膝伸展筋力p<0.001、等速度性体幹屈曲筋力p<0.001、等速度性体幹伸展筋力p=0.016、握力p=0.001、腕立て伏せp<0.001、平衡機能p=0.005)。唯一、等速性膝屈曲筋力の変化幅のみ、群間差が非有意だった(p=0.111)。
体組成や血液検査値は有意差なし
一方、BMIや体組成(体脂肪率、骨格筋量)、および、安全性の指標として評価した血液検査値(乳酸、クレアチニン、LDH、CK、BUN、AST、ALT、GGTなど)の変化幅については、群間に有意差が認められなかった。
以上に基づき論文の結論は、「動物性タンパク質と植物性タンパク質の両方を含む混合タンパク質サプリの摂取は、筋肉量の増加にはつながらなかったものの、ゴルフのパフォーマンスと筋肉機能に好ましい影響を及ぼした。混合タンパク質は、ゴルファーにとって骨格筋の健康とゴルフのパフォーマンスを向上させる安全で効果的なアプローチとなる可能性がある」とまとめられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effect of mixed protein supplementation on golf performance and muscle function: a randomized, double-blind, placebo-controlled study」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2024 Dec;21(1):2393368.〕
原文はこちら(Informa UK)