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お茶に多く含まれるL-テアニンが睡眠の質を改善し、日中のパフォーマンス低下を軽減する可能性

茶に多く含まれている非タンパク質性アミノ酸であるL-テアニンが睡眠に及ぼす影響を、システマティックレビューとメタ解析で検討した結果が報告された。入眠潜時、睡眠の質、日中の機能低下に対する有意な好ましい影響が確認されたという。ただし、他の成分と併用した研究が多く、“純粋な”L-テアニンに関する研究が不足していることを著者らは指摘している。

お茶に含まれるL-テアニンが睡眠の質を改善し、日中のパフォーマンス低下を軽減する可能性

薬物によらない睡眠改善

睡眠は世界的に主要な公衆衛生上のトピックであり、世界人口のおよそ3割が睡眠関連の健康課題を抱えているとされている。臨床においては即効性を期待できる薬物療法が頻用されるが、副作用の点で長期使用は制限されるため、食品中の生理活性化合物への関心が高まっている。

水溶性の非タンパク質性アミノ酸のL-テアニンは、茶に含まれるアミノ酸の約50%を占め、乾燥重量の約1~2%を占めるとされる。摂取後約40分以内に血流に吸収され、血液脳関門を通過してドーパミン、セロトニン、グルタミン酸、グルタミン、γ-アミノ酪酸(GABA)などの神経伝達物質のレベルに影響を及ぼす。ヒトにおいて、血圧や心拍数の低下、コルチゾールの低下、脳のアルファ波の増強(リラックス感の増加)、ストレスの軽減などが報告されている。

L-テアニンの睡眠の質に及ぼす影響は、複数の無作為化比較試験で示されてきている。ただし、摂取方法、摂取量などが異なり、総合的な評価がなされていない。これまでに、L-テアニンが心理的ストレスパラメータに及ぼす影響を調査したシステマティックレビューは1件発表されているが、睡眠への影響については総括的な検討がまだ行われていない。

これを背景に本論文の著者らは、L-テアニンの睡眠に対する影響に関する、システマティックレビューとメタ解析を実施した。

文献検索につい

ステマティックレビューとメタ解析のための優先レポート項目(PRISMA)のガイドラインに則して、五つ(APA PsycINFO、CINAHL、Medline、Scopus、Web of Science)と一つのレジストリ(Cochrane Central Register of Controlled Trials)の文献データベースを用いて、それぞれの開始から2024年9月までに収載された報告を対象とする検索が行われた。検索キーワードを「テアニン」、「緑茶」、「茶」、「睡眠」などとし、包括条件は、L-テアニンのみ、または他の成分と併用し、比較対照群を置いて睡眠への影響を定量的に検討した無作為化比較試験(RCT)であり、L-テアニンの用量が記され、査読付きジャーナルに英語で報告され全文を入手可能な論文とし、対象者の年齢や性別、健康状態は問わなかった。

一次検索で2,763報がヒットし、重複削除後の1,738報を2名の研究者が独立して、タイトルと要約に基づくスクリーニングを実施し53報に絞り込み、全文精査を行った。採否の意見の不一致は3人目の研究者が解決し、17件の研究報告を抽出。それらの報告に記されている参考文献のハンドサーチにより2報を追加し、最終的に19件の研究報告を適格と判断した。

抽出された文献の特徴

抽出された19件のうち10件はクロスオーバー試験、9件は並行群間比較試験であり、対象者数は3~113人で合計897人、平均年齢は10~53.6歳であって、8件はL-テアニンのみ、11件は他の成分も含む条件設定で実施されていた。睡眠への影響の評価指標として、多くの研究でピッツバーグ睡眠品質指数(Pittsburgh sleep quality index;PSQI)が用いられていた。

L-テアニンの用量は50~1,000mgの範囲であり、介入期間は一晩のみから8週間であって、摂取タイミングは夕方のみ、1日2回、4回などさまざまだった。15件で睡眠への影響が主要評価項目として評価されており、他の4件は副次評価項目として設定されていて、それらの研究における主要評価項目はうつや不安、ストレス、認知機能などとされていた。14件の研究では有害事象がモニタリングされていた。

これら19件のうち1件はデータ不十分のため、メタ解析は18件の研究報告を対象に行われた。

日中の機能障害の抑制などの有意な影響を確認

入眠潜時への影響

10件の研究で主観的な入眠潜時(就床から睡眠に入るまでの時間)への影響が検討されていた。いずれも単独では有意な影響がみられなかったが、メタ解析の結果、L-テアニンによる入眠潜時の短縮が示された(標準化平均差〈standardized mean difference;SMD〉=0.15〈95%CI;0.01~0.29〉)。研究間の異質性は認めなかった(I2=0%)。

7件の研究では、客観的な手法で入眠潜時への影響が検討されていた。有意な影響を報告した研究が1件あったがメタ解析の結果は非有意であり、また研究間の異質性が高かった(SMD=0.13〈-7.96~8.22〉、I2=73%)。

睡眠効率への影響

7件の研究で主観的な睡眠効率(就床時間に占める睡眠時間の割合)への影響が検討されていた。いずれも単独では有意な影響がみられず、メタ解析の結果も非有意だった(SMD=-0.09〈-0.29~0.10〉)。研究間の異質性は認めなかった(I2=0%)。

7件の研究では、客観的な手法で睡眠効率への影響が検討されていた。有意な影響を報告した研究はなく、メタ解析の結果も非有意だった(SMD=0.18〈-0.04~0.40〉、I2=15%)。

睡眠障害の程度

8件の研究で主観的な睡眠障害のスコアへ影響が検討されており、2件はL-テアニンによる有意な改善効果を報告していたが、メタ解析の結果は非有意であり、また研究間の異質性が高かった(SMD=0.31〈-0.06~0.68〉、I2=72%)。

8件の研究では、客観的な手法で睡眠障害への影響が検討されており、有意な影響を報告した研究はなく、メタ解析の結果も非有意だった(SMD=2.54〈-1.11~6.19〉、I2=3%)。

睡眠時間への影響

7件の研究で主観的な睡眠時間への影響が検討されており、いずれも単独では有意な影響がみられず、メタ解析の結果も非有意だった(SMD=0.02〈-0.14~0.18〉)。研究間の異質性は認めなかった(I2=0%)。

7件の研究では、客観的な手法で睡眠時間への影響が検討されており、有意な影響を報告した研究はなく、メタ解析の結果も非有意だった(SMD=5.91〈-8.08~19.91〉)。研究間の異質性は認めなかった(I2=0%)。

日中の機能障害の程度

9件の研究で日中の機能障害のスコアへの影響が検討されており、4件はL-テアニンによる有意な改善効果を報告しており、メタ解析の結果も有意であって、研究間の異質性も認められなかった(SMD=0.33〈0.16~0.49〉、I2=0%)。

総合的な睡眠の質への影響

12件の研究で総合的な睡眠の質への影響が検討されており、2件はL-テアニンによる有意な改善効果を報告しており、メタ解析の結果も有意であったが、研究間の異質性が高かった(SMD=0.44〈0.04~0.84〉、I2=83%)。

有用性が示されたが、L-テアニン単独での効果の検証が必要

このほか、有害事象については頭痛や消化器症状などが報告されていたが、いずれも医師の診察を受けることなく軽快していた。

論文の結論は、「得られた結果は、L-テアニンが入眠潜時、日中の機能障害、睡眠の質の改善に役立つ可能性を示唆している」とまとめられている。ただし、他の成分との組み合わせで影響を評価した研究が11件と多く存在していたことから、「“純粋(pure)な”L-テアニンの効果を検証するための研究が不足している」との付記もなされている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effects of L-theanine consumption on sleep outcomes: A systematic review and meta-analysis」。〔Sleep Med Rev. 2025 Feb 25:81:102076〕
原文はこちら(Elsevier)

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