サッカークラブ所属の小中学生・男子の変容ステージが、「5種類そろう食事」の摂取状況と有意に関連
スポーツを行っている小学校高学年~中学生男子の食事摂取状況を、行動変容ステージとの関連で検討した結果が報告された。前熟考期に比較して実行期や維持期では、「食事バランスガイド」の推奨に即した食事スタイルであることなどが示されている。筑波大学体育系運動栄養学の麻見直美氏らの研究によるもので、「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」に論文が掲載された。
スポーツに参加する子どもの行動変容ステージにあわせた栄養指導は有効?
小児期に形成された食習慣は成人後にも継続されやすいことが知られており、アスリートにとっても、人生の早期から理想的な食事スタイルに近づけておく必要があると考えられる。理想的な食事スタイルの目安として国内では、農林水産省と厚生労働省による「食事バランスガイド」が基準とされ、アスリートを目指す子どもたちにもこれに準拠した食事が推奨される。ただし、これまでのところ、スポーツを行っている子どもたちの「食事バランスガイドで示されている『5種類そろう食事』の摂取状況」は十分調査されていない。
一方、成人を対象とする栄養教育の際には、行動変容ステージモデルに基づく教育の実効性が高いことが報告されている。以上を背景として麻見氏らは、スポーツを行っている子どもたちの「5種類そろう食事」の摂取状況を、行動変容ステージとの関連という視点で検討した。
国際大会経験者も含む小学校高学年~中学生を対象に検討
この研究の対象は、東京、千葉、神奈川のサッカークラブ3団体に所属する小学5~6年生が105人と中学生290人で、全員男子。全体の平均年齢は13.0±1.4歳で、小学生は11.1±0.7歳、中学生は13.7±0.9歳。三つのクラブのうち東京にあるクラブは全国大会出場経験があり、プロ選手も輩出しているクラブである。
食事摂取状況の評価方法とその結果
この研究のため、「5種類そろう食事」の摂取状況を把握可能な食事摂取調査票を作成し、1週間にわたり、朝食、夕食、補食それぞれで摂取した料理グループを記録してもらった(登校期間中に行ったため給食のある昼食は除外)。
食事摂取調査票では、「食事バランスガイド」に即して、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物という5種類(区分)を食べたかを質問。それら5種類がすべて摂取された食事を「5種類そろう食事」として算出した。また、食事タイミングごとに各料理グループの期間中の合計摂取回数を算出した。
その結果、1週間あたりの5種類そろう食事の回数は、朝食については中央値1.0(四分位範囲0.0~3.0)であり、夕食も同様に1.0(0.0~3.0)だった。また、主菜、および副菜は夕食に多く摂取され、牛乳・乳製品は朝食に多く摂取されていた。主食および果物の摂取回数は朝食と夕食で有意差がなかった。
朝食、夕食、補食を通して「5種類がそろう食事」の摂取回数の中央値に基づき、中央値未満を「低頻度群」(163人)、中央値以上を「高頻度群」(232人)と二分して、後述の行動変容ステージなどとの関連を検討した。
行動変容ステージの評価について
栄養素摂取にとって最も重要と位置づけられている朝食に焦点を当てて、以下の手法により行動変容ステージを判定した。現時点で朝食に5種類そろう食事をしておらず、今後もそうしようと考えていない場合を「前熟考期」、将来的には5種類そろう朝食にしたいと考えていて、それが2カ月以上先になると回答した場合を「熟考期」、2カ月以内と回答した場合を「準備期」、朝食に5種類そろう食事を既に摂っており、その期間が2カ月未満の場合を「実行期」、2カ月以上の場合を「維持期」とした。
その結果、前熟考期が7.1%、熟考期は8.4%、準備期は36.2%、実行期は6.8%、維持期は41.5%を占めていた。
行動変容ステージとバランスの良い食事の頻度が有意に関連
前述の朝食、夕食、補食を通して「5種類そろう食事」の頻度で分類した2群を比較すると、バランスの良い食事の高頻度群には中学生の割合が高くて(低頻度群は66.3%、高頻度群は78.4%.p=0.007)、全国大会出場経験のあるクラブの子どもの割合が高く(同順に29.4%、57.3%.p<0.001)、群間に有意差が認められた。
また、高頻度群には、行動変容ステージの後期にあたる子どもが多いという有意差が観察された(p<0.001)。例えば、前熟考期の割合は低頻度群では10.4%であるのに対して高頻度群では4.7%であり、一方、維持期の割合は同順に25.8%、52.6%だった。
行動変容ステージを考慮した栄養指導の提案
次に、朝食、夕食、補食を通して「5種類そろう食事」が高頻度群であることを従属変数とし、独立変数として、小学生か中学生か、全国大会出場経験のあるクラブか否か、および行動変容ステージという3因子を設定して多変量解析を施行。その結果、行動変容ステージが実行期以上であることが、バランスの良い食事が高頻度であることと独立した関連のあることが明らかになった。具体的には、前熟考期を基準として、実行期は調整オッズ比(AOR)が5.11(95%CI;1.50~17.36)、維持期はAOR3.84(1.58~9.33)だった。
著者らは、本研究の対象に女子が含まれていないこと、詳細な栄養素等評価を行っていないことなどを限界点として挙げたうえで、「スポーツクラブに所属している小学5-6年生と中学生において、食事バランスガイドに示された5種類の料理グループを組み合わせて摂取する食事摂取状況が、行動変容ステージと関連していることが明らかになった」と結論付けている。
なお、行動変容ステージの前実行期にあたる子どもは総じて、食事での牛乳・乳製品、果物の摂取量が少ない傾向があったことから、それらの食品を補食として摂取し、朝食と夕食の不足を補うことで5種類そろう食事をとれるような栄養教育計画が効果的かもしれないと付け加えている。
文献情報
原題のタイトルは、「Association between Dietary Consumption of Meals Combining the Five Food Groups and Stage of Change in the Fifth and Sixth Elementary and Junior High School-Aged Children in Sports Clubs: A Cross-Sectional Research at Soccer Clubs」。〔J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2023;69(4):243-250〕
原文はこちら(J-STAGE)