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フェンシング選手の94%がカフェインを摂取し、31%が副作用を経験 英国のトップ選手136人を調査

フェンシング選手のカフェイン摂取状況に関する調査結果が昨年、英国から報告された。大半の選手がカフェインを摂取しており、副作用を経験したことのある選手が少なくないこと、カフェイン摂取に関する教育を受けたことのある選手は4人に1人であることなどが明らかになった。

フェンサーの94%がカフェインを摂取し、31%が副作用を経験 英国のエリートレベルでの調査

フェンシングはカフェインの有効性が高そうなのに、摂取状況が調査されていない

フェンシングは、数分の競技の間、対戦相手のピストの動きを予測し、一瞬のうちにチャンスを判断して、相手の反撃を回避しながら攻撃を繰り出すための高い集中力と認知機能、身体機能が要求される。このような競技パフォーマンスを高める戦略の一つとして、カフェインなどのエルゴジェニックエイドの活用が考慮される。

カフェインには身体的な刺激作用とメンタルへの影響が存在し、合法的な向精神薬としても位置づけられている。スポーツにおいては2004年に世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)が禁止リストから削除して以来、多くのアスリートがカフェインを利用している。ただしメリットはデメリットと表裏一体であり、頻脈や不整脈、メンタルヘルスへのマイナスの影響なども存在する。

これまでに、アスリートのカフェインの利用状況の調査は度々実施されているが、それらは陸上競技、自転車競技、トライアスロンなどの持久系競技の選手での調査が多く、フェンサー(フェンシング選手)を対象とした調査は少ない。そこで本論文の著者らは、Web調査により英国のフェンサーのカフェイン摂取状況の実態、摂取する理由、カフェイン摂取に関する情報の入手元などについて横断的に検討した。

エリートレベル選手136人を対象に調査

2020年11~12月に、ソーシャルメディアへの投稿などを通じてアンケートへの回答を呼びかけ、136人から有効な回答を得た。適格条件は、現在フェンシングを行っている16歳以上のアスリートであること。16歳未満や引退後、およびアンケートの回答が不十分なものは除外された。アンケートは7種類のトピックスについて27問の質問で構成されていた。

なお、英国で競技団体に加盟しているフェンシング選手は約6,000人とのこと。今回のアンケートで得られた有効回答数はその2.2%にすぎないが、国際大会レベルに参加しているフェンサーに対する割合は、52.2%に達するという。

回答者の主な特徴は、性別は男性が58.8%、年齢カテゴリーはU17が13.2%、U20が24.3%、U23が16.2%、シニアが26.5%、ベテラン(40歳以上)が19.9%であり、種目はエペ53.7%、フルーレ26.5%、サーブル19.9%。競技レベルは国際大会レベルの70.6%と、国内大会レベルの16.2%で大半を占めていた。

トレーニング・競技の双方で摂取する選手と、競技でのみ摂取する選手がほぼ同数

調査対象の94.1%が、トレーニングや競技以外の場面で習慣的にカフェインを摂取していた。その摂取理由を複数回答可で選択してもらうと、味を楽しむことが93.8%、学習や仕事のためが46.9%、社会的側面によるものが25.4%、認知機能の向上が14.6%だった。

トレーニングや競技以外での摂取量は平均183.4mg±137.5mg/日であり、性別、種目、競技レベルでの比較では有意差がなかった。それに対して年齢層では有意差があり、ベテランに比べてU17、U20、U23は有意に摂取量が少なかった。カフェインの摂取源としては、日常においてはチョコレート、コーヒーが多く、一方で特定の目的がある場合にはエナジードリンク・バーからの摂取が多かった。

トレーニングや競技での摂取量は平均140mg

一方、トレーニングや競技前・最中の摂取量は平均140.8mg±104.6mgであり、性別では男性のほうが多かった。

30.1%の選手はトレーニングや競技の60分前にカフェインを摂取しており、その場合の摂取目的は84.9%がパフォーマンス向上を意図したものだった。パフォーマンス向上以外には、疲労の軽減、注意力の向上などが挙げられた。

また、50.7%の選手は、トレーニングでは摂取せず、競技の前・最中にのみカフェインを摂取すると回答。45.2%はトレーニングと競技の双方で摂取すると回答し、残り4.1%はトレーニングでのみ摂取すると回答した。

93.5%が有効であると感じている一方、35.3%が副作用を経験

カフェインのパフォーマンス上のメリットについては、93.5%と大半の選手が、トレーニングや競技において有益であると回答。その理由として、集中力や活力の上昇、疲労感の軽減などが挙げられていた。

一方、35.3%の選手は、カフェインの副作用を経験したことがあると回答した。その31%は震えであり、17%が頭痛、15%は消化器症状だった。

カフェインに関する教育を受けたことがあるのは25.7%

また、カフェインに関する教育を受けたことがあるのは25.7%と、4人に1人程度であることも明らかになった。この割合は、性別、種目、競技レベルによる有意差はないものの、年齢については高齢群ほど教育を受けたとの回答の割合が高く、有意差が認められた。

カフェイン摂取に関する教育を受けたことがある35人のうち、49%はコーチから教育を受け、34%は栄養士から、20%は教材による独学、11%はアスリート仲間からアドバイスを得ていた。

著者らは、「フェンシング選手の多くがパフォーマンス向上のためにカフェインを摂取しているが、幅広くアドバイスや情報提供していくため、教育プログラムを拡充する必要がある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Caffeine consumption within British fencing athletes」。〔Front Nutr. 2022 Nov 11;9:999847〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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