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ベジタリアン・ビーガンの長距離ランナーのBMIとパフォーマンスを解析してわかったこと

レクリエーションスポーツとして長距離レースに参加している市民ランナーに占める、ベジタリアンやビーガンの割合や、BMIやレースパフォーマンスとの関連を性別に検討した結果が報告された。男性、女性ともにベジタリアンやビーガンのランナーはBMIが低いカテゴリーに分布していて、またレースタイムが長いという。

ベジタリアン・ビーガンの長距離ランナーのBMIとパフォーマンスを解析してわかったこと

市民長距離ランナーの記録は低下傾向

マラソンやハーフマラソン、ウルトラマラソンなどの長距離走への人気は経時的に高まっていて、過去10年間で世界の長距離イベント参加者数は57%増加したという。エリートレベルでは長距離レースの記録は更新され続けていて、ケニアのエリウド・キプチョゲが公式記録で2時間1分台、非公式では2時間を切る記録を出している。これにはスポーツ科学の進化に加え、シューズの改良も一部寄与していると考えられる。

シューズの改良は市民ランナーの成績にも寄与しているはずだが、市民ランナーの記録は1986年以降、全体的に低下していることが報告されている。その理由として、マラソン人口が増加し、タイム向上を狙うランナーよりも健康のために行っているランナーの割合が増えたことが指摘されている。新型コロナ感染症パンデミック以降は、精神的健康のために長距離走を始める市民も増加しており、この傾向に拍車がかかっているとする報告もある。

健康づくりという点では、マラソンなどの運動に加えて、食生活への配慮が欠かせない。体に良い食生活として、植物性食品ベースの食習慣が一般的には推奨されることが多い。ベジタリアンおよびビーガンは、植物性食品ベースの食習慣の極みとも言える。最近の研究では、マラソンランナーの約1割はベジタリアンおよびビーガンだとする報告もある。

一方、長距離を走り抜くにはエネルギーの貯蓄が必要であり、ベジタリアンやビーガンの食生活が長距離レースに適しているか否かという視点での検討が必要となる。本論文の著者らは、このような視点に基づき、「栄養とランニングハイマイレージ(Nutrition and Running High Mileage;NURMI)研究」という研究を行ってきており、本論文はそのステップ1の結果を分析したもの。

男性・女性ともに、食事スタイルとベストタイムとの間に有意な関連

オンラインアンケートに回答した3,835人から、回答に不備のあるもの、BMIが30以上の人などを除外し、2,864人を解析対象とした。自己申告に基づき、雑食(非菜食主義)1,272人(44.4%)、ベジタリアン598人(20.9%)、ビーガン994人(34.7%)の3群に分類された。

対象全体の平均年齢は37歳(範囲18~74歳)、女性57%。なお、大半は本研究の実施拠点である欧州からの回答だった。

3群の性別・BMIなどの比較

食習慣の3群で比較すると、平均年齢はビーガンが34歳、ベジタリアンが35歳、雑食が40歳、女性の割合は同順に65%、64%、47%であり、前二者に比べて雑食群は高齢で男性の割合が高かった。

参加しているレースの距離は、全体では21km未満が22%、ハーフマラソンが36%、マラソンまたはウルトラマラソンが42%であり、ビーガンはより短距離のレースに参加している割合が高く、雑食群はより長距離のレースに参加している割合が高かった。ベジタリアンは両者の中間に位置していた。

BMIカテゴリーの分布は、標準範囲内が83%、低体重5%、過体重12%であり、ビーガンは低体重の割合が高く(7%)、雑食群は過体重の割合が高かった(16%)。ベジタリアンは両者の中間に位置していた。

性別・食事スタイル別にみたベストタイムの平均

男性、女性ごとに食事スタイル別に平均ベストタイムを比較すると、雑食群が最も速い傾向がみられた。詳細は以下のとおり。

男性:マラソン、ハーフマラソンともに雑食群は有意に速い

マラソン

男子マラソンでは、ビーガン群213.6分、ベジタリアン群212.9分、雑食群210.5分であり、雑食群の平均タイムとビーガン群の平均タイムとの間に有意差がみられた。雑食群とベジタリアン群、ベジタリアン群とビーガン群の差は非有意だった。

ハーフマラソン

男子ハーフマラソンでは、ビーガン群100.3分、ベジタリアン群100.7分、雑食群98.7分であり、雑食群の平均タイムとビーガン群およびベジタリアン群の平均タイムとの間に有意差がみられた。ベジタリアン群とビーガン群の差は非有意だった。

女性:ハーフマラソンでは雑食群が有意に速い

マラソン

女子マラソンでは、ビーガン群251.36分、ベジタリアン群249.3分、雑食群248.8分であり、各群間に有意差はみられなかった。

ハーフマラソン

女子マラソンでは、ビーガン群122分、ベジタリアン群119.7分、雑食群118.3分であり、雑食群の平均タイムとビーガン群の平均タイムとの間に有意差がみられた。雑食群とベジタリアン群、ベジタリアン群とビーガン群の差は非有意だった。

論文の結論には、「男性と女性の双方で、食事スタイルと長距離ランニングのベストタイムのパフォーマンスとの間に、いくつかの潜在的な関連性が見いだされた。これは、ランニングのパフォーマンスに影響を及ぼし得る因子としての食事スタイルの重要性を示唆している。本調査の結果は、トレーナーやコーチ、栄養の専門家が、ビーガンやベジタリアンの長距離ランナーに対してトレーニングや栄養戦略をアドバイスする際に、重要な情報となり得るのではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence of Female and Male Vegan and Non-Vegan Endurance Runners and the Potential Associations of Diet Type and BMI with Performance—Results from the NURMI Study (Step 1)」。〔Nutrients. 2022 Sep 15;14(18):3803〕
原文はこちら(MDPI)

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