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長距離ランナーでありベジタリアン・ビーガンでもある人の食生活を調査 NURMI研究

ベジタリアン、またはビーガンの長距離ランナーの食事スタイルを、非ベジタリアン(一般的な雑食者)と比較した研究結果が報告された。ビーガンのランナーはベジタリアンや雑食のランナーよりも、動物性食品の摂取を厳格に避けるだけでなく、植物性食品についても、精製された穀物の摂取が少ないといった違いがみられたという。

長距離ランナーでありベジタリアン・ビーガンでもある人のふだんの食生活を調査 NURMI研究

ベジタリアン、ビーガンの長距離ランナーはどのような食事をしているのか?

マラソンなどの長距離走の人気の世界的な高まりとともに、ベジタリアンやビーガンのランナーも増加している。ランナーの約1割がベジタリアンまたはビーガンであるとするデータも報告されている。また、より走行距離の長いレースに参加しているランナーほど、その割合が高い傾向もみられるという。さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、新たにベジタリアン食やビーガン食を始める人が増えたことも報告されている。

スポーツ栄養の実践において、アスリートに必要とされるエネルギーや栄養素をできるだけ正確に見積ることが求められるが、ベジタリアンやビーガンの長距離レースに参加しているランナーがふだん、どのような食事をしているのかという実態は、あまり研究されていない。今回紹介する論文は、長距離ランナーの食習慣の違いと社会人口学的特徴との潜在的な関連などを把握するために実施された。研究の前段階で、「ベジタリアンまたはビーガンの長距離ランナーは、雑食の長距離ランナーよりも、健康的な食生活を送っている」との仮説が立てられていた。

なお、本研究は、「栄養とランニングハイマイレージ(Nutrition and Running High Mileage;NURMI)研究」のステップ2の一部として実施された。NURMI研究は、持久力と食事の関連についてさまざまなエビデンスを収集する目的の研究であり、主にドイツ、オーストリア、スイスの研究者が中心になり行われている。

関連情報:NURMI研究関連の記事
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317人の長距離ランナーがオンラインで回答

NURMI研究のステップ2では、長距離ランナーを対象に英語とドイツ語によるオンラインアンケートが実施された。適格条件として、18歳以上、過去2年以内に少なくともハーフマラソン以上の競技会に参加している、過去6カ月以上にわたり一定の食事スタイルを遵守している――などが設定されていた。

回答者の自己申告により、非ベジタリアン(一般的雑食者)、ベジタリアン(肉や魚を食べない菜食主義者)、ビーガン(卵や乳製品なども含む動物性食品を食べない完全菜食主義者)の3群に分類。

オンラインアンケートに317人が回答した。このうち46人は前記の適格基準を満たさないために除外され、そのほかに、BMIが30を超過していた1人を除外。また、パフォーマンスの維持のために推奨されている「炭水化物が摂取エネルギー比50%以上」を満たしていない25人と、「水分を一切飲まない」など一般的でない記述のあった34人を除外した。

さらに、自己申告でベジタリアンと回答していた20人を、後述の食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)の分析に基づき雑食者に変更、同様にビーガンと回答していた2人をベジタリアンに変更、ベジタリアンと回答していた2人を雑食者に変更した。他の187人(89%)は、自分の食習慣を正しく認識していた。

上記の操作により、最終的に211人が解析対象として残った。食事スタイルの内訳は、雑食群95人、ベジタリアン群40人、ビーガン群76人。

成人ドイツ人向けの食物摂取頻度調査(FFQ)を利用

食事摂取状況の把握には、「成人ドイツ人の健康インタビュー調査」で用いられている食物摂取頻度調査票(FFQ)を援用した。このFFQは、53の食品群について過去4週間の定期的な食事摂取量を「まったく食べない」から「1日5 回」までの11の選択肢から1つ選び、その量とともに回答するというもの。

アンケートではこのほか、社会人口学的情報、現在の食事スタイルを遵守する目的などの質問をした。

健康と幸せのために、長距離ランニングと菜食を遵守?

解析対象211人の年齢は中央値38歳(四分位範囲18)、BMIは21.7(同3.4)であり、ドイツ、オーストリア、スイスからの回答が96%を占めていた。走行距離は10kmが35%、ハーフマラソンが39%、マラソンとウルトラマラソンが26%。ウルトラマラソン群のレース距離は50~160kmの範囲だった。

現在の食事スタイルを遵守する理由

まず、3群の年齢と性別を比較すると、雑食群は他の2群より高齢で(中央値が雑食群43歳、ベジタリアン群38歳、ビーガン群36歳)、男性の割合が多かった(同順に、51%、14%、25%)。

現在の食事スタイルを遵守する理由は、3群ともに「健康と幸福」が最多で全体の85%が挙げていた。食事スタイル別に2位以下をみると、雑食群では「スポーツパフォーマンス」が57%、「味覚と楽しみ」が43%だった。一方、ベジタリアン群は「動物倫理」の75%、「生物学的側面」の71%が2位と3位であり、ビーガン群も同様であって同順に90%、82%だった。

ビーガン群は精製穀物の摂取量もベジタリアン群より少ない

ビーガン群は、雑食群だけでなくベジタリアン群に比べても、「豆と種子」、「果物と野菜」、「代替乳製品」の摂取量が多く、「精製穀物」と「油脂」の摂取量が少ないという有意差が認められた。ベジタリアン群は雑食群よりも「乳製品」と「卵」の摂取量が少なかった。雑食群はビーガン群、ベジタリアン群と比較して、「アルコール」の摂取量が多く、「代替肉」の摂取量が少なかった。

他方、スポーツ栄養に関する知識が食習慣に影響を及ぼす可能性があるために検討された、教育歴との関連の解析結果からは、有意な差異は認められなかった。また、年齢も「果物と野菜」と「代替肉」を除いて有意な関連がみられなかった。

ただし、著者らは、これらの結果の解釈に際して、年齢や男女比が各群で異なることを念頭におく必要があると述べている。また、本研究のその他の限界点として、対象者の大半がレクリエーションレベルでありエリートレベルのランナーが少なかったことも挙げている。

持久系競技での菜食主義の遵守というスポーツ栄養の新しい展開

論文の結論には、「健康志向の強い長距離ランナーにおいては、植物性食品ベースの食事を遵守することが、その志向をより強く特徴づけているようだ。長距離ランニングを行う人の間で植物製食品ベースの食事の人気が高まっていることを考慮すると、本研究の結果は、スポーツ栄養士、コーチがより正確な食事の推奨を提供するのに役立つのではないか。長距離ランニングに取り組むことと食事スタイルとの相互関係のより深い理解のために、さらなる研究が必要とされる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Intake of Vegan and Non-Vegan Endurance Runners—Results from the NURMI Study (Step 2)」。〔Nutrients. 2022 Jul 30;14(15):3151〕
原文はこちら(MDPI)

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