ハーフ・フル・ウルトラマラソン、走行距離別のサプリメント摂取状況調査からわかった事実
長距離アスリートのサプリメント摂取状況を、性別や競技歴、そして参加しているレース走行距離別に比較検討した調査結果が、国際スポーツ栄養学会の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に掲載された。摂取しているサプリメントのタイプについても分析が加えられている。レースの距離によって、アスリートのサプリメント摂取率やその種類に異なる傾向はあるのだろうか?
10km、ハーフ、マラソン/ウルトラマラソンの3群で比較
アスリートのサプリメント摂取状況についてはこれまでも多くの報告があり、陸上長距離アスリートは短距離アスリートよりも摂取率が高いことが示されている。ただ、参加レースの距離別のサプリメント摂取状況は明らかでない。この研究では、長距離アスリートのサプリメント摂取状況の実態を、参加レース距離、年齢、性、競技歴などにより異なるかという視点で調査したもので、「栄養とランニングハイマイレージ(Nutrition and Running High Mileage;NURMI)研究」として実施された。
なお、NURMI研究は欧州で行われているランニングに関する最大規模の研究で、ドイツ、オーストリア、スイスの研究者が参画し、持久力と食事の関連について広範なエビデンスを収集する目的で実施されている。全体がステップ1~3で構成されていて、本論文の研究はステップ2の一部。
研究参加者は、前記3カ国の研究者のソーシャルメディア等を通じて募集された。適格条件は、18歳以上、NURMIアンケートステップ2の回答を終了していること、少なくともハーフマラソン以上の長距離レースに過去2年以内に参加していることなど。この条件を満たした95名のほか、10kmレースに参加経験を有するランナーを比較対照群として設定した。
BMIが30以上の者、および炭水化物の摂取エネルギー比が50%未満の者は、データの解析結果に影響を及ぼす可能性があるため、検討から除外された。最終的な解析対象は、ハーフマラソン(HM)群が44名、マラソンおよびウルトラマラソン(M/UM)群が51名、比較対照の10kmマラソン群が24名。ウルトラマラソン参加者の走行距離は、最短が50km、最長が160kmだった。
解析対象者は、年齢が中央値43(四分位範囲15.5)歳、BMIが同22.4(3.47)であり、競技歴、居住国、教育歴、婚姻状況なども含め有意差はなかったが、性別には偏りがあり、女性の割合が10km群は67%、HM群は45%、M/UM群は33%だった。
自己申告による主要栄養素摂取量は、摂取エネルギー比で58.8%が炭水化物、24.0%がタンパク質、17.2%が脂質だった。
定期的なサプリメント摂取率は50%ちょうど
定期的にサプリメントを摂取していると回答したのは59名で、ちょうど50.0%だった。サプリメントのタイプ別にみると、炭水化物/タンパク質サプリメントの摂取率が19%、ミネラルは34%、ビタミン43%、その他のサプリメントが6%。
ビタミンサプリメントの中では、マルチビタミン(31%)とビタミンB12(28%)の摂取率が高く、ミネラルサプリメントの中ではマグネシウム(19%)が最もよく利用されていた。
参加競技の走行距離別での検討
レース距離とサプリメントのタイプ別にみると、炭水化物/タンパク質サプリメントの摂取率は、10km群の17%やM/UM群の16%に比較して、HM群は22%だった。ミネラルサプリメントは、10km群33%、HM群31%、M/UM群34%とほぼ同等であり、ビタミンサプリメントは10km群55%、HM群42%、M/UM群36%の順に摂取率が高かった。
摂取頻度の検討
サプリメントの摂取頻度については、59%が毎日の食事で定期的に摂取していると回答。そのほかは、週に5~6回が8%、週に3~4回が10%、週に1~2回が17%、週に1回未満が5%だった。
食事スタイル別の検討
ふだんの食事スタイルとの関連では、雑食者では61%が毎日サプリメントを摂取していると回答した。その割合は、菜食主義者では36%、ビーガンでは62%だった。
サプリメント摂取率と独立し関連する因子
サプリメント摂取率と独立して関連する因子をロジスティック回帰分析で検討した結果、年齢、性別、ランニング歴、レース参加経験、および参加しているレースの走行距離のいずれも、有意な因子として特定されなかった。
レース走行距離などの因子を考慮したサプリメント摂取に向けて、介入の余地
以上より論文では結論を以下のようにまとめている。
長距離ランナーの50%が定期的にサプリメントを摂取しており、ビタミンサプリメントの摂取率は43%であり、ミネラルサプリメント(34%)や炭水化物/タンパク質サプリメント(19%)に比較し高かった。摂取されているサプリメントの種類は、レース距離(10km~ウルトラマラソンまで)、年齢、性別、ランニング経験、またはレース経験とは関連がなかった。
レース距離が異なるのにもかかわらず、摂取されているサプリメントの傾向に違いがないという事実から、アスリートはトレーニングやレース距離を考慮せずに、サプリメントを食事の一部と見なして摂取していると考えられる。したがって、スポーツ栄養士の指導介入によって、最適化される余地がある。
文献情報
原題のタイトルは、「Supplement intake in half-marathon, (ultra-)marathon and 10-km runners – results from the NURMI study (Step 2)」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2021 Sep 27;18(1):64〕
原文はこちら(Springer Nature)