中学生は自分の体型をどう評価しているのか? 女子の自己評価は低く、約3割が減量を経験
日本の中学生が自分自身の体型をどのように評価しているかという実態や、理想とする体型と自己評価の乖離に関連する因子が明らかになった。乖離の大きい生徒は大半が女子であり、また、摂取エネルギー量を制限することや、倦怠感や抑うつ症状との有意な関連も示された。秋田大学大学院医学系研究科社会環境医学系の野村恭子氏らの研究によるもので、「Frontiers in Psychology」に論文が掲載された。
中学生の体型に対する誤った自己認識に関連する因子を探る研究
標準的な体型であるのに本人は太っていると認識しているなど、他者からの評価と自分自身のイメージのずれは、健康な人でも多少はみられる。しかし、摂食障害患者ではそのずれが大きく、自己評価が低いことが知られている。また、誤った自己認識が精神疾患のリスクを高める可能性があることから、人生の早い段階で自己認識を修正する介入が必要と考えられる。
しかし現状では、思春期の若年日本人での体型に対する誤った認識に関連する因子は明確ではなく、ハイリスク者の特定が困難。野村氏らはこの点を明らかにするため、以下の検討を行った。
埼玉県の中学生304名で調査
研究の対象は、埼玉県内のある中学校に通う13~15歳の生徒のうち、体型イメージと食事行動などに関するアンケートに回答した535名から、肥満者(理想体重を20%超上回る生徒)と回答に不備があるものを除外した304名。
体型イメージの調査方法
やせから肥満体型を表現した8種類の線画(1番が最もやせ、8番が最も肥満)の中から、自分の体型が該当すると思うものと、自分が理想だと思うもの、計2種類を選んでもらい、両者の差が1を上回る場合を「体型に対する認識の不一致」と定義した。なお、この手法は既報研究により、評価の信頼性と妥当性が検証済み。
食事行動の調査方法
食事行動については、1週間あたりの朝食欠食頻度と、過去1カ月での摂取エネルギー制限を調査した。後者については、体重を減らす目的で摂取量を減らしていると回答し、かつ、夕食(3食の中で最もエネルギー量が高いことが多いため)の摂取量も制限している場合を「摂取エネルギー制限あり」と判定した。
身体症状、メンタルヘルス状態、自尊心の調査方法
身体症状として頭痛、腹痛、眠気を、メンタルヘルス状態として倦怠感と疲労感を、それぞれ過去1カ月での頻度について1~4点のリッカートスコア(ごくまれは1点、まれは2点、時々は3点、頻繁には4点)。また、自尊心に関しては5項目の質問に1~4点のリッカートスコアで回答してもらい、計20点満点で評価した。
自分が理想とする体型ではないと回答した生徒の92%は女子
解析対象304名は、年齢が13.9±0.8歳、女子が59.5%を占め、理想体重に対し実測体重が-5.9±10.2%だった。
女子生徒の4人に1人は、理想の体型と違うと考えている
体型の自己認識は4±1.0点であるのに対し、自分が理想だと思う体型は3.7±0.8だった。生徒全体の16%が、体型の自己認識と理想との差が1を上回る「認識の不一致」に該当した。
この結果を性別にみると、男子は体型の自己認識が3.7±0.9であるのに対して理想とする体型は4.1±0.7であり、自己認識よりもがっしりした体格を理想とする傾向があった。一方で女子は、自己認識が4.3±1.1であるのに対して理想とする体型は3.4±0.7であり、自己認識よりも細めの体型を理想とする傾向があった。体型の自己認識および理想とする体型に、性別間の有意差が存在した(いずれもp<0.01)。
「認識の不一致」に該当する割合は、男子が3%であるのに対して女子は25%に上り(p<0.01)、認識の不一致の該当者の大半(92%)は女子だった。
女子生徒の3人に1人は、減量目的での摂取制限の経験あり
摂取エネルギー制限の経験があると回答したのは、女子では3人に1人以上の38%に上り、男子の6%を大きく上回った(p<0.001)。「摂取エネルギー制限あり」の該当者は、全体で11%、性別では女子が17%、男子は1%だった(p<0.01)。
性別の解析からはこのほかに、男子は女子よりもスポーツ関連の課外活動に参加している割合が高く(73 vs 53%)、女子は非身体的な課外活動に参加している割合が高い(31 vs 7%)という差がみられた(p<0.01)。また、統計的有意差はないが、眠気と抑うつのスコアは男子よりも女子の方がやや高く(p=0.07)、自尊心のスコアは女子より男子のほうが高い傾向があった(p=0.08)。
体型に対する認識の不一致の有無で、スポーツ参加率、朝食欠食率などが異なる
次に、体型に対する認識の不一致の有無で比較すると、前述のように性別による有意差(男子より女子に認識の不一致が多い)のほかに、スポーツ活動の参加率、朝食欠食率、摂取エネルギー制限など、多くの因子に有意差が認められた。具体的には以下のとおり。
まず、スポーツ活動への参加率は、体型に対する認識の不一致のない群では64%であるのに対して、認識の不一致のある群では46%と少なかった(p=0.03)。朝食を週に1回以上欠食する割合は同順に11%、22%で後者に多かった(p=0.02)。
また、摂取エネルギー制限ありの該当者は、体型に対する認識の不一致のない群では6%であるに対して、認識の不一致のある群では35%を占めた(p<0.01)。このほかに、体型に対する認識の不一致のある群は自尊心のスコアが低く、身体症状とメンタルヘルス状態のスコアが高い(不調)であり、それぞれ群間差が有意だった。
女子、摂取エネルギー制限、メンタルヘルス状態が、独立して関連
続いて、体型に対する認識の不一致と有意な関連がある因子を検討。その結果、女子(OR9.84〈95%CI;3.44~28.17〉)、摂取エネルギー制限(OR8.67〈3.94~19.07〉)、非身体的な課外活動への参加(OR2.52〈1.23~5.19〉)、朝食欠食(OR2.43〈1.12~5.31〉)、メンタルヘルス不調(OR1.47〈1.18~1.83〉)、身体症状(OR1.26〈1.08~1.48〉)と正の関連が認められた。反対に自尊心の高さは、負の関連因子だった(OR0.86〈0.78~0.96〉)。
多変量解析にて、体型に対する認識の不一致に独立して関連する因子を検討すると、女子(OR6.92〈2.33~20.51〉)、摂取エネルギー制限(OR5.18〈2.22~12.05〉)、メンタルヘルス不調(OR1.47〈1.15~1.87〉)という3つの因子が抽出された。
摂食障害への進展抑止のため、体型に対する認識の不一致への早期介入を
著者らは本研究には、サンプル数が少ないこと、身体症状やメンタルヘルス状態、自尊心の評価に簡便さを優先したため、評価精度が十分高いとは言えないことなどの限界点があるとしたうえで、「体型に対する認識の不一致のリスクは、女性、摂取エネルギー制限、メンタルヘルス不調と関連していることが明らかになった」と結論をまとめている。
また、「日本でも近年、摂食障害患者数が急増していることから、体型に対する認識の不一致の抑制を目的とする、思春期の若年者に対する早期介入の必要性が想定される。今後の研究では、体型に対する認識の不一致と摂食障害の連続性の検証が求められる」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「The Association of Body Image Self-Discrepancy With Female Gender, Calorie-Restricted Diet, and Psychological Symptoms Among Healthy Junior High School Students in Japan」。〔Front Psychol. 2021 Oct 5;12:576089〕
原文はこちら(Frontiers Media)