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菜食と雑食、マラソンで速いのはどっち? 市民ランナーのベストタイムを食事スタイルで比較

マラソン、ハーフマラソン、ウルトラマラソンに参加している長距離ランナーの食生活を、ベジタリアン、ビーガン、および一般的雑食者で分け、成績やトレーニングスタイルなどに差があるのかを検討した研究結果が報告された。ベジタリアンやビーガンのランナーは、ランニングスピードが速いのだろうか、遅いのだろうか?

菜食と雑食、マラソンで速いのはどっち? 市民ランナーのベストタイムを食事スタイルで比較

NURMI研究ステップ1として実施

国際陸上競技連盟によると、長距離走の人気は過去10年間で60%増加しており、現在、世界中で毎年7万を超えるランニングイベントが開催されているという。典型的な長距離ランナーは、トレーニングを年間約1,000時間行い、マラソンランナーの場合、平均的に11km/時のスピードで50km/週を走行しているとされる。

このようなトレーニングの適応とレースパフォーマンスの重要な調整因子として、栄養が挙げられる。一方、過去数十年の間に、レクリエーションレベルでは、ベジタリアンやビーガンの長距離ランナーが増加してきている。ベジタリアンやビーガンでは、栄養素のバイオアベイラビリティー(生物学的利用能)が低いことが報告されているが、反面、炭水化物と酸化防止活性が高い食事スタイルと考えられ、持久力にはプラスに働く可能性もある。ただし、これまでのところ、ビーガン、ベジタリアン、一般的雑食者で、トレーニングプロファイルやレース成績を比較した研究はない。

このような背景のもと、「栄養とランニングハイマイレージ(Nutrition and Running High Mileage;NURMI)研究」のステップ1として本研究が実施された。なお、NURMI研究は欧州で行われているランニングに関する最大規模の研究で、ドイツ、オーストリア、スイスの研究者が参画し、持久力と食事の関連について広範なエビデンスを収集する目的で実施されており、全体がステップ1~3で構成されている。

2,864人のレクリエーションランナーを対象として解析

NURMI研究の参加者は、前記3カ国の研究者のソーシャルメディア等を通じて募集されたレクリエーションランナー(市民ランナー)。適格条件は、18歳以上、NURMIアンケートステップ1の回答を終了していること、過去2年以内に長距離レースに参加していることなど。7,422人が調査に参加し、アンケートの回答を終了したのは3,835人。そこから回答内容に不備のあるものや、BMI30以上などを除外し、2,864人が抽出された。

参加者の性別・年齢・BMI

この2,864人のうち57%が女性、43%が男性、年齢は18~74歳で中央値は37(四分位範囲17)歳だった。BMIは11.4~29.9で中央値22.0(同3.3)、84%はBMIが基準範囲内にあり、5%はBMI18.5未満、11%はBMI25以上だった。大半(97%)は欧州からの回答であり、米国が2%で、アジアからは4人が回答していた。

参加しているレース

参加しているレースの走行距離は、21km未満が622人、ハーフマラソンが1,032人、マラソン/ウルトラマラソンが1,210人。ウルトラマラソン参加者の走行距離は、最短が50km、最長が160kmだった。

食事スタイル

食事スタイルは、44%(1,272人)が一般雑食(非菜食)、21%(598人)がベジタリアン、35%(994人)がビーガンだった。

食事スタイルとレース走行距離、トレーニング法などの関連

本研究では、上記の諸因子の相互の関係を検討している。

参加しているレースの種別と食事スタイルとの関連

男性ではマラソン/ウルトラマラソンランナーは食事スタイルが雑食であることとの関連が強かった(ピアソン残差が11)。女性では、10kmランナーがビーガンであることの関連が強く(同7.7)、一方でマラソン/ウルトラマラソンの女性ランナーは食事スタイルが雑食であることと負の関連が認められた(同-5.2)。

トレーニングの方法と食事スタイルとの関連

食事スタイルが雑食のアスリートは13%が指導者の下でトレーニングを行っていた。この割合は、ベジタリアンの9%やビーガンの8%に比較し、有意に高かった(p<0.001)。逆に言えば、ベジタリアンやビーガンのアスリートは、専門家の指導を受けずにトレーニングをしている割合が高かった。

雑食のアスリートは他の2群に比較し、トレーニング歴が有意に長かった。トレーニング量に関しては、食事スタイルによる有意な群間差はみられなかった。

ハーフマラソン/マラソンのベストタイムは雑食アスリートのほうが良好

本研究では続いて、長距離パフォーマンスと食事スタイルとの関連を検討している。

種目ごとのベストタイムの比較(単位:分)
雑食ベジタリアンビーガン有意差
ハーフマラソン107.4±20.6112.2±20.5113.6±22.1p<0.001
フルマラソン224.1±38.7232.1±39.2231.4±41.8p<0.001
ウルトラマラソン735.1±195.1769.4±192.5759.8±212.9なし

まず、ハーフマラソンでは、雑食アスリートのベストタイムが107.4±20.6分、ベジタリアンが112.2±20.5分、ビーガンが113.6±22.1分であり、雑食のアスリートは他の2群に比較し有意に良好だった(p<0.001)。次にマラソンについてみると、結果は同様であり、雑食アスリートのベストタイムが224.1±38.7分、ベジタリアンが232.1±39.2分、ビーガンが231.4±41.8分であり、雑食のアスリートは他の2群に比較し有意に良好だった(p<0.001)。

ウルトラマラソンについては同順に、735.1±195.1分、769.4±192.5分、759.8±212.9分であり、食事スタイルによる群間差は有意でなかった。

著者らは、「本研究の結果は、長距離ランナーのトレーニングとレースのパターン、食事スタイルとの重要な関連を示している。これらの知見は、ベジタリアンやビーガンアスリートの行動の理解を深めるうえで有用な情報となり得る」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Training and Racing Behaviors of Omnivorous, Vegetarian, and Vegan Endurance Runners—Results from the NURMI Study (Step 1)」。〔Nutrients. 2021 Oct 7;13(10):3521〕
原文はこちら(MDPI)

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