米国食品医薬品局(FDA)がナトリウム量削減のための加工食品業界向けガイダンスを公表
米国食品医薬品局(FDA)はこのほど、加工食品、包装済み食品、調理済み食品のナトリウム含有量の削減を目的として、食品業界向けに努力目標を掲げたガイダンスを発表した。現在の米国人のナトリウム摂取量は平均約3,400mg/日(食塩換算で約8.6g/日)だが、これを2年半で3,000mg/日(同7.6g/日)と、約12%削減することを目指している。
摂取されるナトリウムの70%は食品の製造・加工工程で添加されている
ナトリウムは米国人の食事に広く含まれている。これは、一般に「塩分」と呼ばれる塩化ナトリウムが添加された食品の摂取量が多いためであり、ナトリウムの総摂取量の70%以上は食品の製造や商業用食品の加工中に添加されたナトリウム。
米国人の平均ナトリウム摂取量は約3,400mg/日だが、「米国人のための食事ガイドライン2020-2025」では、14歳以上の摂取量を2,300mg/日(食塩換算で約5.8g/日)に抑えることを推奨している。この推奨は全米科学アカデミー(National Academy of Sciences;NAS)が14歳以上の慢性疾患リスク低減のために推奨している摂取量と一致している。
ナトリウムと食塩の違い
ナトリウムと食塩の違い(日本高血圧学会)長期目標は、なお策定作業中
このほどFDAから発表された、「今後2年半以内に3,000mg/日」にするとの目標値は、前記のガイドラインの推奨値よりもなお高い。しかしFDAは、このようなわずかなナトリウムの摂取量抑制であっても、食習慣に伴う疾患のリスクを大幅に減らすことがわかっているとしている。
FDAによると、この削減目標が達成された場合、心疾患や脳卒中の症例が数万件減少し、医療費が数十億ドル節約されると予想されるという。そのうえでFDAは、この目標は2年半で達成可能であるとし、製造食品とレストランなどの商業施設で調理された食品の双方を対象とするガイダンスの公表に至った。
FDAは米国民のナトリウム摂取量削減に向けて、加工食品、包装済み食品、調理済み食品のナトリウム含有量に関する目標を、短期的および長期的な視点で検討している。短期的には2年以内、長期的には10年以内に実現する目標の策定を目指していた。今回の発表はそのうち短期的目標にあたるもの。最終ガイダンスの策定に際して、実現を目指す期間が当初の2年以内から2年半に延長された。
なお、長期的目標についてFDAは、まだ具体的な削減目標を最終決定しておらず現在、関連業界との検討を重ねている。また、短期目標については今後、達成状況等をモニタリングしつつ、新たな目標設定を繰り返し設定していく予定。このような反復的なアプローチは、他国で成果を上げた実績があるとのことだ。
ナトリウム過剰摂取はCOVID-19の予後にも関連
今回のガイダンス発表に関連してFDA長官代理であるJanet Woodcock氏と、食品安全応用栄養センターのセンター長であるSusan Mayne氏は、以下のステートメントを発表している(要約抜粋)。
FDAの公衆衛生上の使命は、栄養の改善を通じて慢性疾患の負担を軽減することである。我々の食事に含まれるナトリウムなどの特定の栄養素を制限することは、高血圧や心血管疾患などを予防する上で重要な役割を果たす。これらの疾患により数十万人の命か奪われ、現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響も、栄養改善の必要性を後押しするものと言える。心血管疾患やその他の基礎疾患を持つ人は、COVID-19による深刻な予後に至るリスクが高いからだ。
FDAは、「自主的なナトリウム削減目標:商業的に加工、包装、および調理された食品中のナトリウムの目標平均および上限濃度」を発行し、食品メーカー、チェーンレストランに自主的なナトリウム削減に向けた短期的目標を提供する。このガイダンスは、FDAが栄養と健康に対する政府全体のアプローチを推進し、将来の健康状態を改善するために実行する一つのステップだ。
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