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オリンピアンは長寿?筋肉量や筋力は一般高齢者より優れている? 東京大学の研究

2021年04月06日

東京オリンピック・パラリンピック開催が眼前に迫ってきた。前回の日本開催夏季オリンピックである1964年の東京大会から、ほぼ半世紀が経過している。この間に、前回大会に参加したオリンピアンの多くが、サルコペニアを好発する後期高齢者となった。しかし、オリンピックに参加した元選手であれば、筋肉量や筋力は高齢者一般より優れていて、サルコペニアになりにくいと考えられるが、実際にはどうなのだろうか?

前回の東京五輪参加選手はサルコペニアが少ないが、身体機能低下や筋骨格痛が多い

その答えが、東京大学高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センターの飯島勝矢氏らの研究グループによる研究で明らかになった。「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載された論文の要旨を紹介する。

元選手101人と同年齢の一般住民を比較

エリートアスリートの経歴を持つ人は一般住民に比較し、長寿であることが報告されている。例えば、日本のオリンピアンは標準化死亡比が有意に低いことや、米国オリンピアンは一般人より約5年長生きといったデータがある。しかし、オリンピアンが長寿である理由は依然不明。飯島氏らは、オリンピアンが選手生活を送っていた若年期の筋肉量と運動能力の高さが、高齢期以降のサルコペニアの有病率が低いことと関連している可能性を想定し、以下の検討を行った。

元選手には現在も健康調査が続けられている

東京五輪に参加した元選手に対しては、現在も健康状態を継続的に把握する調査が続けられている。飯島氏らは、その第13回調査(2016年実施)の参加者380人のうち、サルコペニアの判定に必要なデータが記録されている101人(平均年齢75.0±4.4歳、女性が26%)のデータを解析に利用した。比較対照群は、千葉県柏市で一般住民対象に行われている前向きコホート研究「柏研究」の参加者1,526人(74.1±5.5歳、女性が49%)とした。

サルコペニアの判定は、2019年のアジアワーキンググループの基準(骨格筋量が生体インピーダンス法で男性7.0kg/m2未満、女性5.7kg/m2未満、握力が男性28kg未満、女性18kg未満、歩行速度1.0m/秒未満)に準拠した。

また、サルコペニアのほかに、歩行速度や開眼片足立ち時間、および筋骨格痛(GLFS-25で評価)などを検討した。

元選手はサルコペニアが有意に少ないが、身体機能は低い

元選手は骨格筋量指数(SMI)や握力が高い

元選手と一般住民とで、年齢やBMIに有意差はなかった。しかし、骨格筋量指数(Skeletal Muscle Mass Index;SMI)や握力は、以下のように、元選手のほうが高かった。

評価項目男性女性
元選手一般住民p値元選手一般住民p値
SMI(kg/m27.35±1.27.29±0.73p<0.0017.39±1.95.87±0.64p<0.001
握力(kg)36.1±1233.9±5.9p<0.00125.8±8.522.0±4.0p<0.001

身体活動習慣や食習慣、疾患の有病率の群間差

日常の身体活動習慣は、両群に有意差がなかった。

食習慣に関しては、元選手のほうが、魚、卵、野菜、果物の摂取頻度が有意に高く、さらに女性では肉の摂取頻度も元選手のほうが有意に高かった。男性の肉の摂取頻度も元選手のほうが高かったが、群間差は有意でなかった。

高血圧、糖尿病、心疾患、脳卒中、癌の有病率や、介護を要する割合に有意差はなかった。ただし、女性のうつ症状の有病率に関しては、元選手のほうが有意に高かった。

元選手はサルコペニア有病率が低い

一般住民のサルコペニア有病率は、男性が8.9%、女性が7.8%だった。これに対して、元五輪選手は男性4.1%、女性4.0%であり、男性・女性ともに有意差が認められた。サルコペニア発症に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、疾患既往歴、飲酒・喫煙。運動習慣など)で調整後、元五輪選手がサルコペニアである確率は、一般住民の半分以下だった(調整オッズ比0.49、95%CI;0.20~0.94)。ただし性別の解析では、女性は非有意だった。

元五輪選手で認められたサルコペニア有病率の低さは、運動強度の高い競技種目に参加していた元選手や、競技生活引退後も運動を続けていた元選手で、より顕著に認められた。

身体機能は元選手のほうが低下していて、筋骨格痛も多い

一方で、歩行速度や開眼片足立ちで評価した身体機能は、以下に示すように、元五輪選手よりも一般住民の方が有意に優れていた。また筋骨格痛(肩や腕、腰などの痛み)は元五輪選手の方が強く自覚していた。身体機能の低下と筋骨格痛は、コンタクトスポーツに参加していた元選手で、より多く認められた。

評価項目男性女性
元選手一般住民p値元選手一般住民p値
歩行速度(m/秒)1.23±0.201.51±0.26p<0.0011.29±0.211.52±0.24p<0.001
開眼片足立ち(秒)2760p<0.0012060p<0.001
筋骨格痛(最高値16点)3.02.0p=0.0024.02.0p=0.006

若年期に筋肉量を増やすことは大切だが、運動機能の低下に配慮を

これら一連の結果を基に著者らは、「前回の東京五輪に参加した元選手は、筋肉量が多く筋力が強くてサルコペニアが少ない。若年期にスポーツに参加し、筋肉量と筋力を増大させることが重要と考えられる」と結論をまとめている。一方で、元選手のほうが身体機能が低下していて、筋骨格痛を自覚している人が多かったことから、留意すべきこととして、「けがなどにより運動機能を低下させないことも、高齢期の健康にとって大切なポイントだ」と考察を述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「A comparison of sarcopenia prevalence between former Tokyo 1964 Olympic athletes and general community‐dwelling older adults」。〔J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2021 Jan 18〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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